2016年4月 ニュース/コミュニティー(2)

犠牲者へ鎮魂の祈り捧ぐ

東日本大震災5周年式典・復興支援イベント、シドニーで開催

東日本大震災から5年を迎えた3月11日、シドニー近郊で犠牲者を追悼し被災地の復興を願う祈念式典が行われた。主催はJCSレインボー・プロジェクト、シドニー日本クラブ。 

■音楽や歌で被災地に希望を

同式典は、シドニー近郊マンリーのセント・マシューズ教会で開催。冒頭に高岡正人・在シドニー日本国総領事が、「日本は復興に向けて歩みを進めている。5年前に起きた悲劇を私たちは忘れてはいけない」と追悼の言葉を述べた。

その後、「音楽で被災地に希望を」との思いから、震災後に東北の被災地各地を回り、バイオリン演奏でボランティア活動を行ったプロ・バイオリニストの石川綾子氏が、「アメージング・グレイス」と同氏作曲の復興支援曲「希望」を演奏した。

渡部重信・浄土真宗本願寺派(西本願寺)開教使によって、平和を祈念する読経が捧げられた後、震災が発生した午後4時46分(日本時間午後2時46分)、参列者一同が犠牲者の冥福を祈って黙とうをした。

式典では、ジュリア・ギラード元首相によるビデオ・メッセージの映写が行われた。ギラード元首相は、地震発生からまもない11年4月、外国首脳として最初に被災地の宮城県南三陸町を訪問。メッセージの中で、オーストラリアが救援チームを被災地に派遣するなど、復旧支援を行ったことに触れ、「5年たった今、被災地では建物やインフラ設備が復旧するなど、めざましく復興が進んだ。だが、失われた命は戻ってくることなく、未だに涙をのんでいる人がいる。人びとが力を合わせ未来に向かっていければ」と話した。

また、オーストラリア災害レスキュー隊への表彰とスピーチでは、岩手県大船渡市の実家を津波で流された東北大学2年の志田彩佳さんが、「オーストラリアを含む各国の方々が被災地に駆けつけ、迅速に救助活動を行ったことで、精神的にも救われた」と感謝の言葉を伝えた。さらに国会上院議員でウラン原発問題を専門にしている、グリーン党のスコット・ラドラム氏も会場に駆けつけ、スピーチを行った。

福島大学2年の木村元哉さんは、東京電力福島第1原発事故の影響を受けた福島県の現状を説明。福島県浪江町の伝統指定工芸品「大堀相馬焼き」の再興に奮闘する、窯元4代目の松永武士氏によるスピーチも行われた。

その他、福島県から岩手県大船渡市まで300キロの道のりを歩きながらテニスを教えるボランティア活動を行ったオーストラリア人のピーター・ギブソン氏によるスピーチ、平林純子氏による日本舞踊をはじめ、書家れん氏による書道パフォーマンス、さくら合唱団によるコーラス、ユニオンの和太鼓演奏など数多くの催し物が開催。壇上に立った1人ひとりが、復興への願いを込めて、犠牲者を追悼した。

■日本から2人の特別ゲスト

翌12日、復興支援への寄付を募るさまざまなイベントが終日にわたって開催された。教会前のプロムナード「コルソ」では東北の物産品を並べた屋台などが立ち並び、物品の販売やワークショップ、そして屋外ライブなどが開催。多くの人々が足を止め、東北の現状に耳を傾けた。

人気声優・松本梨香さんが会場を興奮の渦に巻き込んだ
人気声優・松本梨香さんが会場を興奮の渦に巻き込んだ

セント・マシューズ教会でも前日に続き数多くの催しが行われたが、メインとなったのはプロ・バイオリニストの石川綾子氏のリサイタル、そして人気アニメ「ポケット・モンスター」のサトシ役で知られる人気声優・松本梨香氏によるライブおよびトークショーだ。石川氏のリサイタルは午後早い時間帯とイベント終了直前の2度、松本氏のライブ、トークショーはその間の時間帯に開催された。

松本氏は軽快なトークと共にポケット・モンスターの主題歌などを歌い上げ、集まった多くのファンとともに観客を興奮の渦に巻き込んだ。その後行われたトークショーでは自身の母を亡くした体験を語り、その際いかに周囲の人間に助けられたかを話した。「つらい時こそ人と人とのつながりを大切にしてほしい」と被災地にエールを送った。

その後、石川氏の2度目のリサイタルを経てイベントは終了の運びとなる予定だったが、石川氏の胸元のマイクが反応しなくなるなど機材トラブルに見舞われた。石川氏は予定していた曲をキャンセルし、自身作曲の復興支援曲「希望」をアカペラで演奏。「希望」は本来、3月11日に一度だけしか弾かない曲として知られている。

さらに楽譜もなく、伴奏もない状態での演奏は初めてだったというが、思いのこもった力強い音色、そして石川氏の立ち居振る舞いに会場では多くの人が涙を流した。

終了後、参加者の1人は石川氏の演奏に「困難に見舞われてもそれを乗り越える力強さを石川さんに見せていただいた思いです。本当に感動しました」と話した。

今回のイベントで集まった寄付金は総額でおよそ2万ドル。2016年8月開催の福島県の子どもたちをシドニーに招く保養プロジェクトの資金に充てられる予定だ。


復興支援イベントを終えて−石川綾子さん

──2日間ありがとうございました。

「とにかく音楽で元気を伝えたい。その一心で最後の1曲まで演奏させていただきました。遠くオーストラリアから少しでもパワーが伝わったらいいなと思います」

──トラブルもあって、最後は「希望」のアカペラとなりましたが胸が熱くなるような演奏でした。

「楽譜、伴奏、マイクもないという初めての体験ではありましたが飾りのない率直な素直な自分の中の『希望』を音色に託しました」

──イベントを終えていかがですか。

「オーストラリアにこんなにも日本を思っている人がたくさんいるんだと知り、日本とオーストラリアの絆を見たような気持ちでいます。今回、チャリティー・イベントに参加できて良かったです」

── 今後も支援活動はされていくのですか。

「被災地では皆さん忘れないでほしいと口にされます。私ができることは微力ではありますがその言葉をずっと胸にしながら、今後もずっとチャリティー・コンサートを続けていきたいと思います」

渡部重信氏により平和を祈念する読経が捧げされた
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レスキュー隊に感謝の気持ちを伝えた東北大2年の志田さん
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オーストラリア災害レスキュー隊の皆さん
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ユニオンは迫力ある和太鼓演奏で参加者を引き付けた
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さくら合唱団によるコーラスも披露された
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日本舞踊を華麗に舞った平林純子氏
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東北大学からも数多くのボランティアが参加した
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老若男女問わず多くの人が東北を支援してくれた
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書家のれん氏は和太鼓のグループ「りんどう」とコラボした
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パステル・アートなどのワークショップも
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シドニー拠点の「フルムーン・バンド」もライブを行った
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福島県浪江町の「大堀相馬焼き」窯元4代目の松永武士氏
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