2016年12月 ニュース/総合

次期米大統領に決まったドナルド・トランプ氏(Photo: AFP)
次期米大統領に決まったドナルド・トランプ氏(Photo: AFP)

トランプ・ラリー、豪州にも波及

米大統領選挙後に株価は急反発

ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利は、オーストラリアの金融市場にも衝撃を与えた。代表的な株価指数は11月9日に大きく下落した。だが、翌10日に急反発した後、一貫して9日の株価を大きく上回る水準で推移している(数字は22日時点)。

取引時間中にトランプ氏勝利が伝わった9日の「S & P/ ASX200」の終値は5,156.56と前日比で3.03%、同じく「オール・オーディナリーズ」も5,238.33と3.04%それぞれ大幅に下落した。

ところが、翌10日のS & P/ASX200は前日比3.2%、オール・オーディナリーズも3.2%それぞれ大幅に反発し、1日で米大統領選前の水準を回復した。その後も上昇基調は続いていて、22日はS&P/ASX200、オール・オーディナリーズ共に9日の直近の底値から5%近く高い水準で取引を終了した。

一方、外国為替市場では、トランプ政権の経済政策への期待感から進行している世界的な米ドル高の流れを受け、豪ドルは対円で上昇、対米ドルで下落基調にある。22日時点で1豪ドル=82円台前半、1豪ドル74米セント台前半の水準で推移している。

危機モードから一転好況に

トランプ氏の大統領選勝利が想定外なら、その後の株式市場の好況も予想を大きく裏切るものだった。オーストラリアでも海外と同様に、大半のエコノミストが「トランプ・ショック」(トランプ氏が勝利した場合の市場の混乱)を「テール・リスク」(可能性は低いものの、発生すれば影響が大きいリスク)と捉えていた。ところが、市場はショックをわずか1日で吸収し、「トランプ・ラリー」(トランプ相場)に転じている。

背景にあるのは、世界的なリスク・オン(リスクを取る動き)の流れ。トランプ氏が主張している大胆な減税策やインフラ投資で米国経済の成長が加速し、いずれは世界経済にプラスになるとの読みがある。

ただ、自由貿易の恩恵を受けてきたとされるオーストラリア経済にとっては、中長期的にはトランプ氏が主張してきた保護主義的スタンスはリスク要因となる可能性がある。トランプ氏は既にオーストラリアが米国と共に交渉を主導してきた環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を明言した。新しい政権の通商・外交政策の詳細は公表していないが、オーストラリアでもしばらくトランプ氏の一挙手一投足が注目を集めることになる。

商品価格回復にも期待

トランプ・ラリーの影に潜む別のプラス要因としては、ここ数年低迷していた国際商品市況がここに来て急回復していることも挙げられる。

オーストラリア準備銀行(RBA)が11月3日に発表した金融政策決定に関する四半期報告書によると、オーストラリアの主要輸出商品である鉄鉱石、製鉄用の原料炭、燃料用の一般炭の国際価格はいずれも2015年12月から16年の年初頃に底を打ち、今年に入って大幅に上昇している。

特に原料炭価格の上げ幅は急で、16年12月四半期の契約価格は1トン当たり200米ドルと前の9月四半期の同92.5米ドルと比較して116%も上昇した。低迷していた石油価格が上昇していることも、オーストラリア産液化天然ガス(LNG)の価格引き上げ圧力になっているという。

RBAのフィリップ・ロウ総裁は15日、メルボルンで行った講演で「2016年初頭以来の商品価格の上昇の結果、オーストラリアの交易条件(輸出物価指数と輸入物価指数の比=貿易による実質所得の上昇を示す指標)はここ数年間で初めて上昇した。このことは、所得と政府歳入の大幅な伸びを下支えするだろう」と述べた。

RBAはこらまでに公定金利を史上最低水準の1.5%まで引き下げ、なんとか景気のテコ入れを図ってきた。国内総生産(GDP)成長率は16年6月四半期に前年同期比で3.3%増まで回復した。ただ、同四半期の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同期比1.25%とRBAがターゲットとする2〜3%を下回っており、企業の景況感も必ずしも上向きとは言えない。しかし、今後も商品価格の回復基調が安定して持続すれば、新年の景気回復の道筋はより確実になる可能性がある。


移住省を名乗る詐欺、300人から15万ドル騙し取る

連邦移住・国境警備省を名乗る詐欺グループが、一時滞在ビザ保持者から金銭を騙し取る事例が相次いでいる。監督官庁であるオーストラリア競争消費者委員会(ACCC)は現在、被害に遭わないよう注意を喚起している。

ACCCによると、詐欺グループは関係機関であるかのように巧みに振る舞い、ソーシャル・メディアなどから個人情報を入手して被害者に接近。「書類に不備がある。問題を解決するために手数料が発生する」などと連絡し、逮捕をほのめかすなどして、電子送金やアイチューンズ(iTunes)などのギフトカードを通して送金するよう促すという。今年3月からこれまでに約300件の被害届が報告され、被害総額は15万ドルにのぼるとされる。

移住省がアイチューンズなどを使った電子送金を要請することはありえない。ACCCは、こうした怪しい電話があった場合は、すぐに電話を切り、下記の連絡先へ通報するよう呼びかけている。

■移民詐欺の通報先
ACCC Tel: 1300-795-995
Web: www.scamwatch.gov.au/report-a-scam


マルコム・ターンブル首相
マルコム・ターンブル首相

ターンブル首相、「強い米国」強調

トランプ氏と電話会談

マルコム・ターンブル首相は11月9日午後、ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利宣言を行ったことを受けて声明を発表した。首相は「戦場であろうと商業であろうと、我が国と米国との関係は2国間関係の中で最も強力だ」と述べ、安全保障と通商の両面で豪米関係は最も重要との認識を示した。

その上で、首相は「周辺地域での法の支配の基盤には、強い米国がある」と指摘した。トランプ氏が同盟国の負担拡大を求める発言を繰り返していたことを念頭に、地域の安保体制に占める米国の重要性を改めて強調する狙いがあるものと見られる。

公共放送ABCは10日、ターンブル首相がトランプ氏と電話会談を行ったと報じた。これによると、トランプ氏は豪米同盟がきわめて重要であるとの認識を示した。また、ターンブル首相は環太平洋連携協定(TPP)について「地域での米国の戦略的な国益に合致している」として、これに反対してきたトランプ氏に承認を呼びかけた。

トランプ次期米大統領の下で米国が保護主義的な通商政策に傾けば、貿易自由化の恩恵を受けてきたオーストラリアとしては痛手。安保面でも、米軍のアジアでの存在感が縮小することになれば地域情勢が不安定し、オーストラリアの国防政策も影響を受けかねないとの見方が出ている。


ロバート・サイドラーさんに旭日中綬章

日豪経済関係の強化に寄与−秋の外国人叙勲

日本政府は11月3日、平成28年秋の外国人叙勲受章者を発表した。オーストラリアからは、日豪経済関係の強化に寄与したとして、豪日経済委員会副会長のロバート・サイドラーさん(68=シドニー郊外ウィロビー市在住)が旭日中綬章を受勲した。

在シドニー日本国総領事館の発表によると、サイドラーさんは40年以上にわたり日豪両国で実業家、法律家として活動。在豪の日系企業や日本での業務拡大を図る豪州企業を対象に、法律やビジネスに関する助言を行ってきた。

1980年代には、邦銀のオーストラリアでの銀行免許取得を支援した。1990年に日本でオーストラリア人として初の外国人弁護士として登録。通産省(現在の経産省)の輸入関連の審議会では、オーストラリアとニュージーランドを代表する委員にも任命された。

2007年に豪日経済委員会インフラ小委員会委員長に就任。オーストラリアのインフラ関連の合弁事業を日系企業に紹介したり、両国間のインフラ・ミッションなどの事業に携わった。2011年から同会副会長を務めている。

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