2017年7月 ニュース/総合

マルコム・ターンブル首相
マルコム・ターンブル首相

ターンブル政権、支持率浮揚せず

「豪州ファースト」も不発気味

国民受けを狙った政策を相次いで打ち出しているにもかかわらず、マルコム・ターンブル首相の保守連合(自由党、国民党)への支持率が浮揚しない。6月19日付の全国紙「オーストラリアン」が掲載した調査会社ニューズポールの世論調査によると、2大政党別の支持率は、保守連合が前回5月29日掲載の調査と変わらず47%と、最大野党の労働党(同53%)を引き続き下回った。

各政党別の支持率でも、保守連合は前回と同じ36%となり、引き続き37%(1ポイント上昇)を獲得した労働党の後塵を拝した。右派のワン・ネーション党は11%(2ポイント上昇)と支持を伸ばした。左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は9%(1ポイント下落)、「その他の政党」は7%(2ポイント下落)だった。

ターンブル氏は2015年9月、急きょ開催された党首選で支持率が低迷していたトニー・アボット前首相に勝利して首相の座に就いた。前評判の高かったターンブル氏だが、指導力不足が露呈。同調査の各政党別支持率では、保守連合は昨年9月以降、40%を割り込んでいる。2大政党別支持率でも、昨年9月以来、労働党にリードを許している。

米国のトランプ政権発足など世界的な自国第一主義の流れを受け、オーストラリアでも反イスラムを掲げるワン・ネーション党が支持を広げるなど「豪州ファースト」の世論が拡大。支持率低下に悩むターンブル氏は本来のリベラル色を封印して、就業ビザや市民権の規制強化など国内優先の政策を打ち出した。5月の新年度予算案では、一般国民から「儲け過ぎ」との批判のある大手銀行への新税導入を発表。6月には、エネルギーの国内供給を優先させるため、主に海外向けに生産している液化天然ガス(LNG)の輸出制限措置も決めた。

しかし、現時点では、こうしたポピュリズムとも言える政策が支持につながっていない。19年末までに行われる見通しの次期連邦選挙(下院の全議席と上院の約半数を改選)までまだ約2年あるが、支持率低迷が長引くようだと、ターンブル氏に不満を持つ党内保守派から交代論が浮上する可能性も否定出来ない。


北朝鮮への追加制裁を発表したジュリー・ビショップ外相
北朝鮮への追加制裁を発表したジュリー・ビショップ外相

外相、北朝鮮への追加制裁発表
制裁リストに5人の個人を追加

ジュリー・ビショップ外相は6月2日、ミサイル発射実験などの挑発行為を続ける北朝鮮に対する追加制裁措置を発表した。金融取引と渡航を禁止した団体と個人の名簿に、新たに5人の北朝鮮籍の個人を追加した。国連安保理決議に違反した核開発と弾道ミサイル計画の廃棄を拒否している北朝鮮に対し、オーストラリア政府が独自の対抗措置を講じたとしている。

ビショップ外相は声明で「我々は世界の平和と安定に向けて、米国や日本、韓国、中国を含む、同盟国やパートナーと引き続き連携していく」と述べ、国際社会と協力して北朝鮮の脅威に対抗していく姿勢を示した。


景気後退なしの経済成長、25年以上に

オランダの記録に並ぶ−−3月期GDPは前期比0.3%増

オーストラリア統計局は6月7日、1月〜3月四半期の国内総生産(GDP)に関する統計を発表した。これによると、同期の実質GDPの成長率(季節調整値)は前期比0.3%増、前年同期比で1.7%増となった。2016年9月〜12月期は前期比0.3%増、前年同期比1.9%増だった。

台風に相当するサイクロン「デビー」が3月にQLD州を襲い、主力の製鉄用原料炭の出荷が落ち込んだことが引き下げ要因となったものの、20業種中17業種でプラス成長を記録した。

ABSのチーフ・エコノミストを務めるブルース・ホックマン氏は「住宅建設の投資は減少したが、歴史的には高い水準を維持している。家計の消費(個人消費)は、電気代や燃料費といった固定費においてポジティブな成長が見られた。消費の伸びが鈍化している背景には、所得の伸びが弱いことがある」と指摘した。

オーストラリア経済が最後にリセッション(景気後退=2四半期連続のマイナス成長)を記録したのは25年前の1991年4月〜6月期。それから現在に至るまで、103期連続で、25年9カ月にわたってリセッション無しの経済成長を続けている。これは、主要先進国の中では、1980年代に北海油田の開発で沸いたオランダに並ぶ記録とされる。


ANUのファーカー博士に京都賞

豪州人で初めて—気候変動の解明に貢献

日本の公益財団法人「稲盛財団」は6月16日、科学や文明の発展などに貢献した人物の功績を称える第33回京都賞の受賞者3人を発表した。同賞の基礎科学部門では、気候変動メカニズムの解明に貢献したとして、オーストラリア国立大学(ANU)の特別教授で植物生理学者のグレアム・ファーカー博士が選ばれた。

ファーカー博士は「光合成の機能モデルの開拓と地球環境変化の科学への貢献」が評価された。同財団は「過去40年近くにわたって、ファーカー博士は環境科学と気候変動科学の発展に寄与してきた。今後、気候変動の科学がますます重要度を増す中、博士の光合成の機能モデルは世界規模での更なる貢献を続けるであろう」としている。

在日オーストラリア大使館によると、オーストラリア人が同賞を受賞するのは初めて。リチャード・コート駐日オーストラリア大使は声明で「ファーカー博士はオーストラリアで最も優れた、革新的な科学者の1人であり、地球の生命体の基盤である光合成への理解に新たな形を与えてくれる」と博士の受賞を歓迎した。

ANUのブライアン・シュミット学長は「今回の受賞は、気候変動が起こる中、世界の食料供給を支える上でのファーカー博士の貴重な取り組みや、国際社会による指導力を認めるものである」と述べた。

ファーカー博士は1947年TAS州ホバート生まれ。73年ANUで生物学の博士号を取得。88年同大学教授。2003年より現職。15年にオーストラリア連邦首相科学賞受賞。光合成の窒素同化や植物の水利用、気孔生理学、植物の同位体構成、気候変動などの研究を手掛け、300以上の研究発表がある。

京都賞は「科学や文明の発展、また人類の精神的深化・高揚に著しく貢献した方々の功績を称える国際賞」で、京セラ創業者の稲盛和夫氏が理事長を務める稲盛財団が毎年、先端技術部門、基礎科学部門、思想・芸術部門の3部門で3人を選んでいる。授賞式は11月に行われる。


2015年12月の立てこもり事件で人質2人が犠牲になったシドニーのマーティン・プレース(写真は事件翌日に市民が献花した現場前)。現在、車両テロ対策としてコンクリート製バリケードの設置が進められている
2015年12月の立てこもり事件で人質2人が犠牲になったシドニーのマーティン・プレース(写真は事件翌日に市民が献花した現場前)。現在、車両テロ対策としてコンクリート製バリケードの設置が進められている

歩行者道にテロ対策のバリケード
シドニーとメルボルンで設置相次ぐ

シドニー市は6月23日、シドニー市内中心部のオフィス街マーティン・プレースにコンクリート製のバリケードを設置した。英国のロンドンやフランスのニース、ドイツのベルリンなどで自動車で通行人をなぎ倒すテロが相次いでいることから、NSW州警察の要請を受けてテロ対策として導入した。

最初に設置したのは、2014年12月にイスラム過激主義に傾倒した男が立てこもり、人質2人の犠牲者(容疑者は射殺)を出したマーティン・プレースのリンツ・カフェ前。周辺にも今後数週間掛けて設置し、車両が歩行者専用エリアに入れないようにする。

コンクリート製のバリケードは仮設。今後、自動車の侵入を防ぐ柱、植え込みなどの構造物の設置を予定している。人が多く集まる他の公共スペースへのバリケード設置も検討する。

また、メルボルンでも22日、市内8カ所にテロ対策のコンクリート製バリケード140個が設置された。メルボルン中心部の歩行者専用道路、バーク・ストリート・モールでは今年1月、男が故意に自動車で歩行者に突っ込み、邦人1人を含む6人が死亡する事件があった。

この事件の容疑者はテロと無関係とされるが、メルボルンでは5日にも自称「イスラム国」(IS)に傾倒した疑いが強い男が民家に立てこもり、男性1人が犠牲(容疑者は射殺)になる事件が起きたばかり。

豪州はイラクとシリアで対IS空爆に参加しており、他にもISの傾倒者が警官を襲うなど一匹狼型のテロが度々起きている。多数の人が集まる歩行者専用道路で車両テロが起きれば、大惨事になりかねない。治安当局は警戒を強めている。

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