2017年8月 ニュース/総合

議員を辞職したグリーンズのスコット・ラドラム氏
議員を辞職したグリーンズのスコット・ラドラム氏
議員を辞職したグリーンズのラリッサ・ウォーターズ氏
議員を辞職したグリーンズのラリッサ・ウォーターズ氏
資源相を辞任したマット・カナバン連邦上院議員
資源相を辞任したマット・カナバン連邦上院議員

二重国籍問題、政界揺さぶる

野党議員2人が辞職、閣僚も辞任

二重国籍問題が豪政界を揺るがしている。連邦上院の野党議員2人が7月、相次いで二重国籍を保持していることを表明して議員を辞職したのに続き、ターンブル政権の現職閣僚も二重国籍を認めて閣僚を辞任した。移民国家の豪州で二重国籍は合法だが、連邦議員の二重国籍は違憲。問題が他の議員にも広がれば、大きな混乱は避けられない。

地元メディアによると、左派の環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)の副代表を務めるスコット・ラドラム上院議員は14日、議員を辞職した。同氏は出身地であるニュージーランドの国籍を、現在も保持していることを認識しないまま、議員活動を続けていたことを明らかにした。同じくグリーンズ副代表のラリッサ・ウォーターズ上院議員も18日、出身地のカナダの国籍を破棄していなかったとして、議員を辞職した。

マット・カナバン資源相兼豪北部担当相(国民党、連邦上院議員)も25日、ブリスベンで会見を開き、イタリア国籍を有していることを認め、閣僚を辞任した。カナバン氏は豪州生まれでイタリアへの渡航経験も無かった。しかし、イタリア系オーストラリア人の母親が2006年にブリスベンのイタリア総領事館で、自身とカナバン氏のイタリア国籍を取得。同総領事館に問い合わせたところ、同氏がイタリア国籍を保持している事実が明らかになったという。

カナバン氏は、連邦議員の職にはとどまる意向。連邦政府は、カナバン氏がイタリア国籍取得について認識または同意していない場合、外国籍保持者が議員に立候補することを禁じた憲法44条には抵触しないとの見解を示しており、連邦最高裁の憲法判断に委ねるとしている。

海外からの移民受け入れによって成長してきた豪州では、海外生まれの人が約3割(2011年国勢調査)に達している。二重国籍自体は容認されており、二重国籍者の割合は全人口の6分の1を占めるとされる。

今回、問題が発覚した3人はいずれも故意ではなく、二重国籍であることを認識していなかったと主張している。しかし、海外生まれの議員は多く、今後も二重国籍を公表する議員が相次ぐ可能性は否定出来ない。

英国生まれのトニー・アボット前首相にも二重国籍疑惑が浮上したが、アボット氏は記録を公開して二重国籍を明確に否定している。


中国のスパイ艦、豪EEZ内で活動
豪米合同軍事演習に合わせ情報収集か

公共放送ABC(電子版)は7月22日、中国軍の艦船がこのほど、豪州の北東沖の海域で活動していたと報じた。QLD州中部ロックハンプトン沖の訓練海域で6月末から7月末に掛けて行われた豪米共同軍事演習「タスマリン・セーバー」の情報収集に当たっていたと見られる。

報道によると、活動していたのは中国人民解放軍の「ドンディアオ級情報収集艦」。豪国防軍はABCに「中国艦は豪州の領海には入らなかったが、珊瑚海の豪州の排他的経済水域(EEZ)内に居た」ことを認めた。

豪国防軍の高官はABCに対し、豪米共同軍事演習に合わせた中国艦の動きについて「非常に非友好的なシグナルであることは明らかだ」と述べた。

27日付のABC(電子版)によると、マリース・ペイン国防相は領海外での中国艦の活動について国際法上の問題は無いとの見方を示した上で「非常に注意深く観察している。我々の監視を過小評価すべきではない」と語り、海洋進出を強める中国側の動きをけん制した。


確執が再燃する兆しを見せているマルコム・ターンブル首相(左)とトニー・アボット前首相
確執が再燃する兆しを見せているマルコム・ターンブル首相(左)とトニー・アボット前首相

与党自由党内に不協和音

アボット前首相、現政権を暗に批判

ターンブル政権の支持率が低空飛行を続ける中、与党自由党内がざわつき始めた。公共放送ABCによると、トニー・アボット前首相は6月27日、メルボルンの民間シンク・タンクの集まりで「今年は豪州にとってすばらしい年ではない」と述べ、現政権の教育政策や新しい銀行税の導入策について否定的な考えを示した。

アボット氏は26日の民放ラジオでも、クリストファー・パイン国防産業相兼院内総務の同性婚推進をめぐる発言を批判。7月1日には、シドニーで開かれた自由党保守派の集会で「次期連邦選挙で勝利出来るように、我が党を取り戻そうではないか」と述べるなど、ここにきて政権批判とも取れる発言を繰り返している。

一方、マルコム・ターンブル首相は7月1日、ニューズ社系新聞に寄せた投稿で「(国民は)政局や権力争いにうんざりしている。今必要なのは、建設的な人であって、破壊者ではない」と釘を刺した。ジョシュ・フライデンバーグ連邦環境相も「アボット氏の批評で得をするのは、ビル・ショーテン野党労働党党首だ」と不快感を示した。

「ターンブル対アボット」の確執再燃か

こうした動きを受けて、地元メディアでは「自由党内の保守派と穏健派の対立が深まっている」(ABC)との見方が広がっている。アボット氏には、2015年9月に急きょ開催された党首選でターンブル氏に敗北し、首相の座から引きずり降ろされた遺恨がある。保守強硬派のアボット氏とリベラル派のターンブル氏は、政策面でも折り合わない。

豪州の政界では、退陣した首相は政界を引退するのが慣例だが、アボット氏は「バックベンチャー」(役職の無い議員)にとどまり、次期選挙での再選にも意欲を示している。現時点では、一連の発言が直ちに倒閣運動につながると見るには時期尚早だが、アボット氏がターンブル氏への「リベンジ」を懸けて再登板を狙っているとの憶測は消えない。

シドニーで7月23日に開かれたNSW州自由党大会では、連邦と州の選挙の立候補者を、党員の投票で決める党則に関する改正動議をアボット氏が提出した。動議は賛成多数で可決され、アボット氏は存在感を強めている。ABCによると、党則改正が正式に承認されれば、立候補者選びの段階で穏健派の擁立がより難しくなり、アボット氏を中心とする保守派にとって有利になると見られている。

与党支持率は浮上せず

自由党内に不協和音が出始めた背景には、ターンブル政権の支持率が一向に浮揚しないことがある。低迷が長引けば、アボット氏を支持する党内保守派を中心に「ターンブル降ろし」の火種がくすぶりそうだ。

7月24日付の全国紙「オーストラリアン」が掲載した調査会社ニューズポールの世論調査によると、2大政党別の支持率は、保守連合(自由党、国民党)が前回10日掲載の調査と変わらず47%と、最大野党の労働党(同53%)を引き続き下回った。2大政党別支持率では、保守連合は昨年9月以来約10カ月間にわたり、労働党にリードを許している。

前回の連邦選挙の結果と、現在の2大政党別支持率を基にニューズポールが行った分析によると、仮に現時点で連邦選挙が実施された場合、保守連合は労働党に政権を明け渡す可能性が高い。連邦下院で保守連合は13議席を失って63議席、労働党は13議席を追加して82議席、その他の勢力は現状維持の5議席をそれぞれ獲得する見通しだ。

各政党別の支持率では、保守連合は前回調査比で36%と1ポイント上昇したものの、37%(1ポイント上昇)を獲得した労働党を引き続き下回った。保守連合は昨年9月以降、40%を割り込んでいる。右派のワン・ネーション党は2ポイント下落して9%。二重国籍問題で連邦上院議員2人が辞職した左派の環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)は1ポイント下落の9%、「その他の政党」は9%(1ポイント上昇)だった。


当面は現在の政策金利を維持すると見られるオーストラリア準備銀行(RBA)のフィリップ・ロウ総裁
当面は現在の政策金利を維持すると見られるオーストラリア準備銀行(RBA)のフィリップ・ロウ総裁

インフレ圧力、引き続き低水準

前年同期比1.9%、中央銀行の目標下回る

オーストラリア統計局(ABS)が7月26日に発表したインフレ統計によると、今年4月から6月四半期の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前期比0.2%、前年同期比1.9%にとどまった。中央銀行のオーストラリア準備銀行(RBA)が設定しているインフレ・ターゲットの前年同期比2〜3%を下回った。1月〜3月四半期の前期比0.5%、前年同期比2.1%から鈍化した。

証券大手コムセックのチーフ・エコノミスト、クレイグ・ジェームズ氏はインフレ統計に関する速報リポートの中で、RBAのインフレ・ターゲットから大きく乖離しているわけではないとした上で、「RBAは現在の政策金利を維持する可能性が高い」と指摘した。

RBAは7月まで10回連続で政策金利を過去最低の1.5%に据え置いている。RBAのガイ・デベル副総裁は21日、講演で現在の金利水準について「恐らく予測可能な将来まで続くだろう」と語り、米国やカナダなどの利上げの動きに追従しない考えを示していた。

インフレ圧力の鈍化が確認されたことを受けて、RBAは当面、アクセルもブレーキも踏まないニュートラルな金融政策を続けそうだ。

トマトなど高騰も、旬の果物が相殺

品目別で上昇率が高かったのは、医療・病院サービス(4.1%上昇)、居住目的の新築住宅購入(0.9%上昇)、タバコ(1%上昇)など。下落率が高かったのは、国内旅行・宿泊(3.2%下落)、自動車用燃料(2.5%下落)などだった。

ABSの首席エコノミストを務めるブルース・ホックマン氏は声明で「豪州のインフレは引き続き低水準で推移している。今期の数字は、ガソリン価格の低下や、衣服・食品の小売市場での価格競争によるところが大きい」と分析した。

シドニーのスーパーや青果店ではこのところ、一部の野菜や果物が高騰している。ABSは、今年初めに豪北東部を襲ったサイクロン「デビー」による野菜と果物の価格への影響を注視しているが、トマトや豆類、キュウリ、メロン、ベリー類、バナナなどの価格が急上昇した一方で、旬のオレンジやミカン、リンゴなどの価格下落が、全体の価格上昇を相殺しているという。

26日付の公共放送ABC(電子版)によると、投資銀行JPモーガンのエコノミストであるトム・ケネディー氏は「数字は期待を下回るものだった。食品価格の影響が大きく、サプライズだった」と述べた。

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