2017年10月 ニュース/総合

QLD州カーティス島にある液化天然ガス(LNG)プロジェクト「サントスGLNG」の輸出基地(Photo: Santos)
QLD州カーティス島にある液化天然ガス(LNG)プロジェクト「サントスGLNG」の輸出基地(Photo: Santos)

豪東部で深刻なガス不足の恐れ

料金押し上げ、エネルギー安定供給に不安

人口が集中している豪州東海岸で2018年、ガス不足による深刻なエネルギー危機に見舞われる恐れが出てきた。オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)が9月25日、ガス需給に関する報告書の中で明らかにした。

これによると、東部では18年、ガスの国内需要に対して供給が55ペタジュール不足する見通しだ。想定より需要が高かった場合、不足分が最大で108ペタジュールに達する可能性もあるという。連邦環境エネルギー省によると、1ペタジュールは約1万9,000世帯が1年間に消費する電力量に相当する。

ガスは家庭用の他にガス火力発電の原料としても使用されているため、既に高騰している電気料金を更に押し上げ、家計や経済活動を圧迫する。エネルギーの安定供給に支障をきたす恐れも否定できない。

ACCCによると、深刻なガス不足の影響は既に、産業向け大口顧客に提示される18年のガス卸売価格に反映されている。現状で1ギガジュール当たり3~4ドルと史上最高水準にある卸売価格は、更にその数倍に跳ね上がっているという。

ACCCのロッド・シムズ会長は声明で「聞き取り調査を行った法人のガス需要者のうち3割以上が、ガス価格の高騰によって生産を縮小するか停止すると回答した」と指摘した。これらの企業の多くは、ガス価格の上昇分を出荷価格に転嫁できないと答えている。

「資源大国でエネルギー危機」のなぜ

豪州は世界でも主要な資源・エネルギー輸出国の1つとして知られている。特に天然ガスは近年、新しい開発プロジェクトの生産が次々と立ち上がり、輸出を急速に伸ばしている。化石燃料の中では温室効果ガスの排出が少ない天然ガスは、比較的クリーンなエネルギーとして世界的に需要が拡大している。

連邦産業・イノベーション・科学省の統計(2017年6月)によると、豪州は既に中東カタールに次ぐ世界第2位の液化天然ガス(LNG)輸出国となった。LNG輸出額は18/19年度に370億ドルに達し、製鉄用の原料炭を抜いて最大のエネルギー輸出商品となる見通しだ。

豪州には「現在の生産ペースで47年分」(同省)もの豊富な天然ガス埋蔵量がある。その国内市場が、ガス不足による深刻なエネルギー危機に直面しているのはなぜか。

理由の1つは、豪州産天然ガスの主力が海外市場向けであることだ。国内の天然ガスには主に、①豪州北西部の大陸棚に点在する海底ガス田で生産されるLNGと、②QLD州の石炭層から採取される炭層ガスがある。北西部産の①は、数千キロ離れた東海岸の需要地にパイプラインで輸送するには採算が合わない。大半が液体に冷却されたLNGの状態で輸出される。主に東海岸向けに供給されるのはQLD産の②だが、輸出が優先される形で、国内向けの供給が需要に追いついていない。

ACCCのシムズ会長は「海外のLNG市場向け輸出分を国内市場に振り向ければ、予想されているガス不足は大幅に解消される」と訴えている。

また、環境保護の観点から、温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電が減少していることも、エネルギー需給のバランスに影響を与えている。コストが低い石炭火力発電はかつて8割以上を占めたが、15/16年度には63%まで低下した。よりコストの高い石炭火力以外の割合が相対的に高まり、電気・ガス料金の高騰を招いた格好だ。SA州では、供給が不安定な再生可能エネルギーの割合を大幅に増やした結果、大規模な停電も発生している。

こうした中で、「オーストラリア・ファースト」を掲げるマルコム・ターンブル首相は4月、天然ガスの輸出を制限すると発表した。石油・天然ガス大手サントスは9月、QLD州のLNGプロジェクトで海外向けに生産するガスの一部を国内に振り向けることを決めた。

だが、電気・ガス料金の相次ぐ値上げで、既に有権者の不満は膨れ上がっている。ターンブル首相の与党保守連合(自由党、国民党)への支持率は30%台後半で低迷。料金値上げや供給不安が続けば、19年の次期連邦選挙に向けて政権運営への打撃は避けられそうにない。


新しい宇宙開発機関の誘致を目指すジェイ・ウェザリルSA州首相
新しい宇宙開発機関の誘致を目指すジェイ・ウェザリルSA州首相

連邦政府、「国家宇宙庁」新設へ

宇宙サービス需要の取り込み図る

連邦政府は8月25日、宇宙開発事業を担う新しい行政機関「国家宇宙庁」(仮称)を設立すると発表した。豪州は現在、米航空宇宙局(NASA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)に相当する宇宙機関を持たない。自前の機関を設立することで、世界的に急成長している宇宙空間の利用サービスや人工衛星データの需要を取り込む。

ミカエラ・キャッシュ産業・イノベーション・科学相代理は声明で「国家宇宙庁は、宇宙開発技術の発展と利用、国内の宇宙産業の成長を支援する我々の長期的な戦略を確実にするものだ」と強調した。

連邦政府は今年7月、宇宙政策の見直しを検討すると発表した。専門家チームを組織し、宇宙関連企業や州政府と議論を重ねてきた。来年3月末までに国家宇宙庁の設立を含む宇宙政策の詳細を公表する。

SA州が誘致に意欲、野党も積極的

専門家チームが今年8月に発表した報告書によると、世界の宇宙産業の規模は3,230億米ドル(2015年)。1998年~2015年の年率平均成長率は9.52%と、世界全体の国内総生産(GDP)の3倍以上のペースで拡大している。

現状では、豪州の国内産業は他国の宇宙開発事業やデータに依存していることから、報告書は「国内宇宙産業の育成が、海外への依存を減らし、豪州の組織が宇宙でのサービスやデータ提供の世界市場に参画できる機会を生むことになる」と提言していた。

資源ブームの終えんを受け、連邦政府はイノベーション(技術革新)を国策に掲げ、産業構造の転換を促進している。その一環として、先端医療部門や情報通信技術(ICT)、国防産業などと共に、宇宙産業を強化する。

連邦政府は国家宇宙庁の拠点をどこに設置するかについて明らかにしていない。25日付の公共放送ABC(電子版)によると、SA州のジェイ・ウェザリル州首相は同州内への誘致を目指している。同州には既に60社の宇宙関連企業が立地していることから、州首相は豪州の宇宙開発の拠点に最適だとしている。最大野党の労働党も同様の機関の設立に前向きで、宇宙産業の振興政策を近く発表するという。


森本順子さんの代表作「わたしのヒロシマ」
森本順子さんの代表作「わたしのヒロシマ」

在豪絵本作家、森本順子さん死去

核兵器の悲惨さ訴え――本紙エッセイに挿し絵

被爆体験を通して核兵器の悲惨さを訴え続けたシドニー在住の絵本作家、森本順子さんが9月21日、死去した。85歳だった。葬儀は26日、シドニー北部のマッコーリー・パーク霊園で行われ、家族や知人が別れを惜しんだ。

1932年、広島市生まれ。13歳だった1945年8月6日、米軍が世界で初めて原子爆弾を広島市に投下し、爆心地から1.7キロ離れた自宅で被爆した。京都市立美術大学西洋学科を卒業後、中学校の美術講師や画家として活動した。

80年代初めにシドニーに移住した。「鶴の恩返し」や「一寸法師」など主に日本の昔話を扱った絵本を14冊出版し、オーストラリア子ども絵本協会などの賞を数多く受賞した。88年には被爆体験をつづった絵本「わたしのヒロシマ」を出版した。豪州の小中学校などで講演や特別授業を行い、平和を訴えてきた。2014年に外務大臣賞を受賞した。亡くなる直前には、核兵器禁止条約への署名を求める書簡をマルコム・ターンブル首相に送っていた。

「オーストラリアに抱かれて」、「英語トンチンカン記」(いずれもテレビ朝日出版)の著書がある在豪作家のブレア照子さんの実妹。ブレアさんが11年まで本紙に連載していたエッセイ「極楽とんぼの雑記帳」には、森本さんが挿し絵と題字を描いていた。

本紙15年8月号の特集「戦後70周年オーストラリアの地より」では、原爆投下直後の様子を描き下ろしたイラストと共に寄稿文を送り、「人間が人間を殺し合う戦争というものに正義はない」と訴えた。森本さんの寄稿文とイラスト、ブレアさんのエッセイは、下記の日豪プレス・ウェブサイトで読むことができる。

■【特別寄稿】戦後70周年オーストラリアの地より
Web: nichigopress.jp/interview/column_spe/104748/
■極楽とんぼの雑記帳
Web: nichigopress.jp/category/column/tombo/


有権者に送付された回答用紙
有権者に送付された回答用紙

同性婚郵便調査、回答用紙の送付始まる

最高裁は調査実施を容認

オーストラリア統計局(ABS)は9月12日、同性婚の是非を有権者に問う郵便調査の回答用紙の送付と回収の作業を開始した。

集計結果を11月15日にABSの公式ウェブサイトに公開する。

直近の民間世論調査では同性婚への賛成は6割以上に達しており、郵便調査の結果も賛成派が反対派を上回る公算が高い。郵便調査の結果は法的拘束力を持たないが、連邦議会は調査結果を参考に婚姻法の改正を審議する見通しだ。

同性婚に対しては、最大野党である中道左派の労働党を始め、第3勢力で左派の環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)が賛成。

加えて、与党保守連合(自由党、国民党)内も、賛成派のターンブル首相らの穏健派グループと、反対派のトニー・アボット前首相らの保守派の間で意見が真っ二つに分かれている。

郵便調査の結果を踏まえ、議会で賛成派が過半数を上回れば、同性婚を認める婚姻法改正案が早ければ年内に成立する可能性がある。

この問題をめぐっては、同性婚推進団体が中止を求めて提訴していたが、連邦最高裁判所は7日、郵便調査の実施を認める決定を下している。


高層ビルの建設が相次いでいるシドニー市内中心部
高層ビルの建設が相次いでいるシドニー市内中心部

豪経済、好調な消費を背景に再加速

6月期GDP、前年同期比1.8%増

豪州経済の成長が再び加速している。オーストラリア統計局(ABS)が9月6日に発表した統計によると、今年4~6月期の実質国内総生産(GDP=季節調整値)は前期比0.8%増、前年同期比で1.8%増となった。2016/17会計年度(16年7月~17年6月の伸び率は1.9%増だった。

1~3月期(前期比0.3%増、前年同期比1.7%増)から一段と加速した。家計最終支出が前期比で0.7%伸び、活発な個人消費が成長を押し上げた。20業種のうち17業種でプラス成長を記録した。

豪州は1991年9月期以降、104四半期連続でリセッション(景気後退=2四半期連続のマイナス成長)なしの経済成長を続けている。先進諸国の中では、80年代に北海油田の開発に沸いたオランダの最長記録を抜いたとされる。

貯蓄率は低水準、成長持続に疑問符

ABSによると、家計の貯蓄率は4.6%と3月期の5.3%から大幅に低下した。9年ぶりの低水準に落ち込んだことから、貯蓄を切り崩して消費に回しているという実態が浮かび上がった。「現在の水準の成長は持続可能ではないことを示す兆候がある」(公共放送ABC)との指摘も出ている。

ABSのブルース・ホックマン首席経済分析官は声明で「石炭と鉄鉱石の価格反落は輸出収入と実質所得に打撃を与えたが、輸出数量は引き続き伸びた」と説明した。住宅の新規着工許可件数は減少傾向に転じたものの、景気のけん引役である住宅建設需要は高い水準を維持しているという。

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