2018年6月 ニュース/総合

3度目の連邦予算案を発表したスコット・モリソン連邦財務相
3度目の連邦予算案を発表したスコット・モリソン連邦財務相

【連邦予算案】

所得減税、狙いは浮動票

黒字化1年前倒し、財政規律もアピール

次期連邦選挙(今年8月~来年5月)を控え、保守連合政権は減税策と財政規律の両立をアピールする。連邦政府は5月8日に発表した2018/19会計年度(18年7月1日~19年6月30日)の国家予算案で、財政黒字化の目標年度を1年前倒しし、19/20年度の黒字転換を目指すことを表明した。

予算案の規模は、歳出が前年度比5.4%増の4,846億ドル、歳入が同6.4%増の4,737万ドル。歳入から歳出を引いた財政収支は、基礎的現金収支ベースで145億ドルの赤字(政府系年金基金「フューチャー・ファンド」の運用益36億ドルを考慮)となる見通しだ。

赤字幅は前年度の推計182億ドルから削減し、2年後の19/20年度には小幅ながら22億ドルの黒字を見込む。黒字化の目標年度は、昨年の予算案発表時に想定していた20/21年度から1年前倒しする。黒字幅は20/21年度に110億ドル、21/22年度に166億ドルと更に拡大する。

予算案の最大の目玉は、選挙で浮動票を握る低・中所得者層を狙った所得減税だ。低・所得者への所得税還付制度を設けると共に、低い税率が適用される敷居額(年収の上限)を引き上げることで、幅広い層の納税額を軽減する。減税策の要点は次の通り。

①18/19年度から、約1,000万人の低・中所得者を対象に、課税所得に応じて最大530ドルを還付する。一時的な措置ではなく、同年度以降、毎年実施する。

今年7月1日から、所得税率32.5%の敷居額を9万ドル(現行8万7,000ドル)に引き上げる。22/23年度からは、19%の敷居額を4万1,000ドル(現行3万7,000ドル)に引き上げる。

24年7月1日から、税率37%が適用される範囲(現行8万7,001ドル~18万ドル)を廃止し、32.5%の適用範囲を4万1,001ドル~20万ドルとする。税率は、19%(4万1,000ドル以下)、32.5%(4万1,001ドル~20万ドル)、45%(20万ドル以上)の3段階に簡素化する。

スコット・モリソン連邦財務相による予算案発表は、ターンブル政権発足以来3度目。同財務相は8日夜、キャンベラの連邦議会で予算案演説を行い、力強い経済成長と雇用拡大、財政健全化を実現したとして政権の経済財政政策の成果を強調した。

その上でモリソン財務相は、経済を更に強化するための重点ポイントとして、①勤労者の努力を報いる減税、②投資と雇用拡大を図るための主に中小企業向け支援策、③メディケア(健康保険制度)、医療、教育、高齢者ケアなど基本的な福祉サービスの確保、④国境警備への歳出拡大を含む安全保障、⑤財政規律、の5点を挙げた。


【連邦予算案】

鉄道・道路などインフラに245億ドル――主な歳出策

保守連合政権は経済成長を支える観点から、インフラ投資を引き続き積極的に推進する。新年度予算案では、大都市圏の鉄道や道路の建設を中心に245億ドルを計上した。ただ、今後4年間に投じる予算はこのうち45億ドルにとどまる。

都市部の渋滞を緩和するための基金に10億ドル、道路改修の基金に35億ドルをそれぞれ出資する。鉄道では、メルボルン空港鉄道の新設(50億ドル)やパースの鉄道延伸(11億ドル)、西シドニー空港鉄道新線の調査費(5,000万ドル)など鉄道建設に79億ドルを計上した。

道路関連では、NSW州北部コフス・ハーバーのバイパス建設(9億7,100万ドル)やQLD州の幹線道路ブルース・ハイウェイの改良(33億ドル)、ゴールドコーストとブリスベン間の高速道路の改良(10億ドル)などを盛り込んだ。

一方、福祉関連では、今後4年間で1万4,000カ所の在宅ケア拠点を整備するなど高齢者ケアの拡充に16億ドルを投じる。医療関連では、処方薬補助制度(PBS)の新薬の予算として14億ドル、メンタル・ヘルス関連予算として1,250億ドルを盛り込んだ。


【連邦予算案】

18/19年度の実質成長率は3%、予算案経済見通し

豪州の景気は今後も引き続き堅調に回復へ――。連邦政府が8日発表した2018/19年度予算案の経済見通しで観測を明らかにした。

18/19年度の実質国内総生産(GDP)成長率は3%と前年度の2.75%からややスピードを速める。失業率は5.25%と0.25ポイント低下する。消費者物価指数(CPI)は2.25%と0.25ポイント上昇する。いずれも昨年12月に発表した年央経済・財政見通し(MYEFO)から変更はなかった。

予算書は、豪州経済の中期的な見通しについて「(豪州経済が)資源投資ブームからより幅広い分野に成長の軸足を移す動きは、予算案の予測期間(19/20年度まで)に完了するだろう」と指摘した上で、「経済は今後数年間、失業率を低下させるのに十分なペースで成長していく見通しだ」と予想した。

堅調な予想の要因としては、◇世界経済の堅調な伸びが予想されること、◇個人・企業共に景況感が平均を上回っていること、◇個人消費と非資源部門の投資が堅調であること、◇資源投資ブームの終了による反動減がなくなってきたこと、◇資源輸出の堅調な伸びが期待できること、などを挙げた。

主な経済指標の見通し(単位%。2016/17年度は実績)

2016/17年度 2017/18年度 2018/19年度 2019/20年度
実質GDP 2.10 2.75 3.00 3.00
雇用増加率 1.90 2.75 1.50 1.50
失業率 5.60 5.50 5.25 5.25
CPI 1.90 2.00 2.25 2.25
賃金指数 1.90 2.25 2.75 3.25
名目GDP 5.90 4.25 3.75 4.75

(出典:2018/19年度予算書)


2014年に閉鎖されたシドニー南部のカーネル精油所。現在は石油製品の輸入基地として利用されている
2014年に閉鎖されたシドニー南部のカーネル精油所。現在は石油製品の輸入基地として利用されている

連邦政府、エネルギー安保見直しへ

ガソリン備蓄は3週間足らず

ジョッシュ・フライデンバーグ連邦エネルギー相は5月7日、液体燃料のエネルギー安保政策を見直すと発表した。海外と国内で供給に支障をきたした場合の対策を含めて、燃料の供給と需要について包括的な調査を行う。年内に政策をまとめ、液体燃料の備蓄日数を国際エネルギー機関(IEA)が勧告している90日の達成を2026年までに目指す。

豪州の液体燃料の備蓄日数は、IEAの基準を大幅に下回っている。6日付の日刊紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」によると、豪州の備蓄日数は原油が22日、液化天然ガス(LNG)が59日、ガソリンが20日、航空機用燃料が19日、軽油が21日しかない。大規模な災害や戦争で供給ルートが寸断されれば、1カ月も掛からないうちに経済や国民生活はマヒする。

政府が前回、11年にエネルギー安保政策を改訂した際は、備蓄日数は90日間の基準を上回っていたが、過去10年間で液体燃料の海外依存度は飛躍的に高まった。7日付の同紙が掲載したフライデンバーグ氏の寄稿文によると、過去10年間で豪州国内では3つの精油所が廃止され、液体燃料の国内生産量は約3割減少した。国内の油田での原油生産量が減少したと共に、コスト高を背景に海外で精製される石油製品を輸入する動きが強まった。

資源国なのに日本から石油製品輸入

連邦政府がエネルギー安保政策の見直しに乗り出した背景には、豪州は世界有数の資源産出国であるにもかかわらず、ガソリンや軽油などの液体燃料の輸入依存度が急速に高まっていることがある。

豪州の石油製品の備蓄日数は、ガソリンが20日、航空機用燃料が19日、軽油が21日(シドニー・モーニング・ヘラルド紙)。数字を単純に比較することはできないが、日本の石油備蓄日数は、国家備蓄と民間備蓄の合計で219日分(18年4月=資源エネルギー庁)とIEAの基準である90日間を大幅に上回る。

豪州産原油は資源量の減少を背景に生産量が縮小に転じた。高コストを背景に国内で精油所の閉鎖が相次ぎ、海外で精製した製品を輸入する動きも強まった。大陸北西部で生産が本格化している液化天然ガス(LNG)は、ほぼ全量が海外向けだ。

国内での石油精製を縮小する一方、豪州は日本などアジアを中心に石油精製品の輸入を増やした。豪州は16/17年度、日本から25億2,100万ドル(連邦外務貿易省)の石油精製品を輸入した。日本からの輸入品目としては、1位の乗用車(74億4,700万ドル)、2位の金(25億8,700万ドル)に次いで3番目に多い。

資源に恵まれた豪州が大量の石油精製品を日本から輸入している現状は、資源に恵まれない日本からは奇妙に映る。資源輸出や経済効率を優先した結果、豪国内のエネルギー安全保障が後回しにされた形と言えそうだ。


利上げは2019年半ば――NAB予測

豪4大銀行の1つ、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)は21日、豪準備銀(RBA=中央銀行)の利上げ時期が19年半ばにずれ込むとの予測を明らかにした。軟調な賃金の伸びと高止まりしている失業率を背景に、従来今年年末としていた利上げ見通しを半年先に伸ばした。公共放送(ABC)が同日、伝えた。

NABのアラン・オスター主席エコノミストは、見直しの理由に「依然として賃金の伸びが弱く、失業率も5.5%前後で動いていない」ことを挙げた。今後は失業率の低下と賃金の伸び、物価上昇が想定されるが、「賃金の伸びが強まるタイミングについては、不確定要素が多い。利上げ時期は依然として経済指標に依存している」とした。

今年1月~3月期の賃金指数(WPI)は前期比0.5%増、前年同期比2.1%増と歴史的な低水準にある。4月の失業率は5.6%(季節調整済み)と高水準を維持した。1月~3月期の消費者物価指数(CPI)は前期比0.4%増、前年同期比1.9%増と、RBAのインフレ・ターゲットである「2~3%」に達していない。

RBAは足踏みする景気を下支えするため、16年8月に政策金利を現行制度下で最低の1.5%に引き下げた。以来、今年5月まで19回連続で据え置いている。


実現すれば国内最高層となる超高級マンション「マジック」の完成予想図(Photo: The Royal Society of Victoria)
実現すれば国内最高層となる超高級マンション「マジック」の完成予想図(Photo: The Royal Society of Victoria)

国内最高層のビル、メルボルンで計画
362メートル――ゴールドコーストのQ1抜く

オーストラリア国内で最も高いビルの建設計画が、メルボルン市内中心部で浮上している。ビクトリア王立協会は5月12日、同市内に国内で最も高い地上362メートルの60階建て超高層住宅「マジック」を建設する計画を明らかにした。

計画通り実現すれば、現時点で同市内で最も高い「ユーレカ・タワー」(297メートル)や2020年完成予定の「オーストラリア108」(319メートル)を大きく上回る。全国でもゴールドコーストの「Q1」(337メートル)を抜いてトップとなる。

建設予定地は、ラ・トローブ・ストリートとビクトリア・ストリートの交差点にある三角形の角地。標準的なテニス場の半分ほどの小さな敷地に超高級マンションを建設し、地元と海外の富裕層向けに販売する。

同王立協会は科学研究の振興を目的に1854年に設立され、159年の歴史がある。計画の原案を設計した建築家のディラン・ブラディー氏は「オーストラリアの科学の中心地であるメルボルンを象徴する建物となる」と述べた。同協会のデービッド・ザーマン会長は、高層住宅の売却益を「次の160年間に向け、協会の地元社会への貢献に役立てる」としている。

建設予定地は、世界遺産に登録されている王立展示館の敷地に隣接している。計画が実現するには、文化財や歴史的建築物の保護を担当するビクトリア州遺産管理局の他、連邦政府、メルボルン市などの認可が必要となる。同王立協会は当局や地域社会と協議の上、およそ5年後の完成を目指す。


シドニー西部の新空港建設予定地
シドニー西部の新空港建設予定地

コモンウェルス・ゲームズ誘致の機運高まるか?シドニー西部、「インフラ整備に弾み」

2026年開港予定のシドニー第2空港を核に連邦・州政府が開発を促進しているシドニー西部に、英連邦諸国のスポーツ大会「コモンウェルス・ゲームズ」の26年大会を誘致する動きが浮上している。NSW州野党労働党のルーク・フォリー党首はこのほど、大会誘致を地域のインフラ整備の起爆剤にするべきだとの考えを明らかにした。公共放送ABC(電子版)が5月20日、伝えた。

豪コモンウェルス・ゲームズ協会のクレイグ・フィリップス代表はこのほど、各州の関係者に書簡を送り、26年と30年の大会の誘致に関する要望書を提出するよう要請した。

これを受けて、フォリー党首は「26年コモンウェルス・ゲームズの開催という明確な期限を設けることによって、「シドニー・メトロ・ウェスト」(シドニー市内中心部と西郊パラマタを結ぶ鉄道の構想)や、新空港を結ぶ「ノース・サウス・レイル・ライン」(シドニー西郊を南北に縦断する鉄道の構想)の建設に弾みをつけることができる」と指摘した。

その上で同党首は「パースやアデレードに誘致を奪われてはいけない」とコメント。選手村を公共住宅に転用し、住宅インフラの整備も進めるべきだとの考えを示した。競技会場の多くは00年シドニー五輪の施設を流用できるとしている。

コモンウェルス・ゲームズの誘致をめぐっては、昨年、シドニー西部の企業や地域社会の代表が参加する団体「ウェスタン・シドニー・リーダーシップ・ダイアローグ」(WSLD)が、26年または30年の地元開催を目指すと表明した。グラディス・ベレジクリアンNSW州首相も、誘致に前向きな姿勢を示していた。


スーパー2強のウールワースとコールズ。共に6月から7月に掛けて全豪でレジ袋の無償提供を止める
スーパー2強のウールワースとコールズ。共に6月から7月に掛けて全豪でレジ袋の無償提供を止める

レジ袋、まもなくスーパーから消える

大手2社、全国の店舗で一斉に

オーストラリアのスーパー大手、ウールワースとコールズがまもなく、NSW州など全国でレジ袋を廃止する。最大手のウールワースは6月20日、2番手のコールズは7月1日にそれぞれ廃止する。スーパー業界を寡占する大手2強が、法令で禁止されていない地域でも環境への配慮から廃止に踏み切る。

SA州や首都特別地域(ACT)、北部準州(NT)、TAS州では既にレジ袋が禁止されている。東海岸を中心に店舗網を拡大している独アルディは元々レジ袋を提供していないため、オーストラリアのほとんどのスーパーからレジ袋が消えることになる。

レジ袋廃止は本当にエコ?

使い捨てのレジ袋は、資源の無駄使いやごみが環境に与える悪影響を軽減する観点から、先進国を中心に廃止の動きが強まっている。大手スーパーは、法令で禁止されていない州でも自主的に廃止することで、環境保護への取り組みをアピールする狙いがある。

ただ、レジ袋をごみ袋として再利用している家庭では、市販のビニール袋を新たに購入しなければならない。レジ袋廃止が環境負荷を低減する実際の効果については、疑問視する指摘もある。英環境保護局の報告書(2011年)は「レジ袋をごみ袋として再利用した方が、ごみ袋を製造するよりも(環境負荷軽減の)メリットは大きい」との調査結果を公表している。

また、買い物袋を忘れた場合は、有料の袋を買うことになる。ウールワースは繰り返し使えるビニール袋を1枚15セントで、布製のバッグを99セントでそれぞれ販売する。廃止に備え、かばんや車のトランクにエコ・バッグなどを入れておく癖を今から付けておく必要がありそうだ。


拳銃調達した男に懲役13年――パラマタ警察銃撃テロ

イスラム過激思想に傾倒した少年(当時15歳)が15年10月2日、シドニー西部パラマタのNSW州警察本部で警察職員のカーティス・チェンさん(当時58歳)を射殺したテロ事件で、NSW州高裁は5月18日、少年が使用した拳銃を調達したタラル・アラメディン被告(25)に懲役13年の判決を言い渡した。

地元メディアによると、判決は被告がテロ事件に使用されると知った上で拳銃を提供したと断定。同高裁のピーター・ジョンソン裁判官は「被告が拳銃の提供を拒んでいれば、あの日にテロ事件が起きることはなかった」と指摘した。

弁護側は公判で、被告は過激思想を持たず、拳銃を提供しただけだと主張していた。被告は罪を認めたため、刑期は15%短縮された。控訴しない方針で、29年8月まで服役した後に仮釈放が認められる。

主犯の少年はチェンさんを銃撃した直後、事件現場で警官に射殺された。アラメディン被告から入手した拳銃を少年に直接渡した共犯のラバン・アロウに対しては、今年3月に懲役33年の判決が出ている。


メルボルン市内を走る現役の「Wクラス」
メルボルン市内を走る現役の「Wクラス」

メルボルンの路面電車、売却へ
レトロな外観、教室やカフェに

メルボルン市民の足として親しまれてきた歴史的な路面電車が売却されることになった。公共放送ABC(電子版)が5月15日、伝えた。

売却されるのは、「Wクラス」と呼ばれるクラシックな外観の134両。引退後、メルボルン郊外の列車修理・点検施設「ニューポート・レイルウェイ・ワークショップス」で保管されている。引退したメルボルンの路面電車は、これまでも学校の教室やカフェの飲食店などとして、第2の人生を送っている例がある。

VIC州立公共交通公社「ビクトラック」は、1両当たり1,000ドル(輸送費を除く)で売却する。破格値だが、地域社会の公共施設として利用する場合、学校や地方自治体、非営利団体には輸送費込みで無料となる。

ビクトラックは7月6日まで、希望する団体や個人を公募している。応募者は車両の使用目的を明記してビクトラックに申し込み、外部の委員会が可否を判断する。

ジャシンタ・アランVIC州公共交通相は「車両が引退した後も、地域社会が使えるようにしたい。VIC州の歴史的象徴であるこれらの車両が生まれ変わり、将来の世代も楽しめるように保存される」と話している。

Wクラスは1923年~56年に752両が製造されたとされる。VIC州公共交通省によると、州政府が800万ドルの予算をかけて修復した数両が現在、メルボルン市内を走っている。


脱退者を12時間リンチ、「バイキー」が血の制裁

NSW州警察は5月2日早朝、シドニー西部で、犯罪組織「バイキー」の1つ「フィンクス」の構成員の男4人と関係者の女1人を誘拐、恐喝、暴行、性的暴行などの容疑で逮捕、起訴した。2日付の公共放送ABCが伝えた。

5人は昨年12月、フィンクスを脱退した男性をシドニー西部バインヤードのホテルに呼び出し、リンチした疑い。12時間にわたって被害者を監禁し、刃物で膝を刺すなど暴行を繰り返した。被害者の体に彫られたフィンクスのタトゥー(入れ墨)を消すため、熱湯を男性の肌にかける制裁も行ったとされる。男性は火傷を負い、頭蓋骨と頬骨を骨折し、片耳が聞こえなくなったという。

州警察のデブ・ウォラス刑事部長は、熱湯をかけて入れ墨を消す暴行について「アウトロー(無法者)のモーターサイクル・ギャングによく見られる行動だ。脱退者は組織の一員であったことを示す痕跡を除去しなければならない。それをしなければ、強制的に除去されることになる」と述べた。警察は、被害者が自分の意思で脱退したか、何らかの理由で破門されたと見て捜査している。

全豪に4,400人――銃や麻薬が資金源

先進国の中では比較的治安が良いとされる豪州だが、違法行為を資金源とする反社会的集団は他国と同じく暗躍している。「バイキー」と呼ばれる「アウトロー・モーターサイクル・ギャング」もその1つだ。

ハーレー・ダビッドソンなど主に米国製の大型2輪車に乗り、黒の革ジャンパーやタトゥーに組織の紋章を入れているのが特徴。1950~60年代に米国で発祥したが、世界各地に支部や独立組織がある。

豪犯罪情報委員会によると、豪国内には現時点で40団体、4,425人(準構成員を含む)がいる。地下に潜っているイタリア系マフィアなどと比較すると活動はオープンで、表向きはバイクの愛好団体と見せ掛け、ウェブサイトやフェイスブック・ページなどを公開しているケースも多い。

実際には、銃器や麻薬の取引などの違法行為が資金源とされ、組織間の抗争事件も度々起こしている。一般人が犠牲になったバイキーの抗争事件としては、84年の「ミルペラの虐殺」が有名だ。シドニー南西部ミルペラで対立組織同士の銃撃戦となり、流れ弾に当たった無関係の14歳の少女を含む死者7人、負傷者28人を出した。

この事件をきっかけに銃規制が強化されたが、バイキーの勢力は現在も衰えていない。各州は近年、主な団体を犯罪組織に指定したり、チームの制服を着て集団で酒場に入店することを禁じたりと法規制を強化している。しかし、バイキー側も人権侵害だと主張して反対集会を開いたり、法廷闘争を仕掛けるなど対抗している。

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