2018年7月 ニュース/総合

マルコム・ターンブル首相
マルコム・ターンブル首相

米朝会談「注意を持って歓迎」

演習中止に理解――ターンブル首相

マルコム・ターンブル首相は6月13日、キャンベラでの記者団との質疑で、12日の米朝首脳会談について「注意を持って歓迎する」と述べた。首相は他の米大統領がなし得なかった功績だと評価。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)の検証プロセスで、オーストラリアは役立つ専門家を派遣する用意がある」と表明した。

また、トランプ大統領が会談後に米韓軍事演習の中止を表明したことについて、首相は「交渉戦術の一環だ。トランプ大統領は交渉人。生涯、取引の経験を積んできたビジネスマンであり、相手と直接会い、合意に導いてきた」と理解を示した。

ビショップ外相は会談後に演習中止の可能性を否定していたが、直後にトランプ大統領が中止を表明。直接の当事者ではないものの、米国と同盟関係にある豪州に事前連絡がなかったとの観測が浮上していた。

その上で首相は「誰も核戦争は望まない。彼(大統領)が状況を劇的に変えたことを歓迎する。だが、我々は目を見開き、注意しながら見守っていく」と強調した。

外相「平和に向けた一歩」

ジュリー・ビショップ外相は12日、米朝首脳会談の成果について、北朝鮮の完全な非核化と朝鮮半島の平和と安定に向けた一歩だと評価する声明を発表した。

オーストラリアは北朝鮮と国交を保持し、インドネシアの在ジャカルタ北朝鮮大使館を通して外交関係を維持している。この一方でオーストラリアは、朝鮮半島有事の際、同盟国である米国と共に軍事行動に参加する用意があると表明していた。

外相の声明の内容(要約)は次の通り。

◇オーストラリアは、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の指導者である金正恩との間で行われた歴史的な首脳会談の結果を歓迎する。

◇「シンガポール宣言」(米朝共同声明)は、4月27日の板門店宣言で示された北朝鮮の完全な非核化に向けた決意を正式に再確認した。米朝共同声明は、米国と北朝鮮が新たな関係を構築し、朝鮮半島の永続的で安定した平和に向けて取り組むことをうたい、(朝鮮戦争の)戦争捕虜と行方不明兵の遺骨返還についても協力することで合意した。

◇今回の首脳会談は、正しい方向に向けた一歩である。我々は、これらの目的の達成に向けて対話と外交が継続することを期待する。

◇北朝鮮は今、その決意を実行するための具体的で検証可能なステップを踏まなければならない。また、北朝鮮は引き続き、同国の核兵器と弾道ミサイル開発プログラムを禁止した国連安保理決議に拘束されている。

◇オーストラリアは、朝鮮半島の平和と安定を支えるため、パートナーと引き続き緊密に連携していく。


3月期GDP、前年同期比3.1%増
資源輸出好調も個人消費弱く――統計局

オーストラリア統計局(ABS)が6月6日に発表した統計によると、2018年3月四半期(1~3月)の実質国内総生産(GDP)は前期比1.0%増、前年同期比3.1%増(いずれも季節調整済み)と約2年ぶりの高水準だった。17年12月期の前期比0.4%増、前年同期比2.4%増から加速した。ただ、軟調な個人消費が、好調な資源輸出や企業業績に影を落とした。

エコノミストの予想は前期比0.7%増、前年同期比2.7%増(4日付公共放送ABC電子版)だった。

ABSのブルース・ホックマン主席エコノミストは声明で「力強い鉱物資源輸出を反映して、GDPの伸びに占める輸出の寄与度は全体の半分に達した。鉱物資源輸出の力強い伸びと共に企業の利益が拡大し、交易条件の改善につながった」と分析した。

石炭と鉄鉱石、液化天然ガス(LNG)の生産が好調で、鉱業の付加価値額は前期比2.9%増、前年同期比4.2%増と大きく伸びた。金融を除く民間企業の利益は、前期比6.0%増と過去1年間で最も高い伸びを示した。民間企業の設備投資も力強い伸びを維持した。

政府部門の最終消費支出は前期比1.6%増、前年同期比5.1%増だった。

一方、家計部門の最終消費支出は前期比0.3%増、前年同期比2.9%増にとどまった。実質賃金の低調な伸びを背景に、所得に占める貯金の割合を示す貯蓄率は2.1%となり、世界金融危機前の07年12月以降の約10年間で最低を記録した。


所得減税法案が成立――首相「税金は低く公平で簡素に」

所得税の減税と税率のフラット化を柱とした法案が6月21日、連邦上院を通過し、成立した。与党保守連合(自由党、国民党)のマルコム・ターンブル首相は声明で「納税者は大変な労働に見合った恩恵を受ける。税金はより低く、より公平で、よりシンプルになる」と強調した。

減税措置は3段階。まず2018/19年度から、約1,000万人の低・中所得者層を対象に最大で530ドルを還付する。同年度から22/23年度にかけて、一定税率が適用される所得の敷居額を引き上げることで幅広い層の税負担を軽減。24/25年度からは、税率適用範囲を3段階に簡素化し、34.5%の中間税率が適用される納税者を全体の約94%まで拡大する。

所得税減税は、マルコム・ターンブル首相の保守連合(自由党、国民党)政権が、5月に発表した2018/19年度予算案の目玉と位置付けていた。今年8月から19年5月までに実施される次期連邦選挙を念頭に、浮動票を握る中間層の支持を取り込む狙いがある。

減税法案は与党勢力が過半数に満たない上院で野党の反対に遭い、審議が難航したが、右派のワン・ネーション党などの支持を得て賛成多数で可決した。ただ、保守連合は各種世論調査の支持率で最大野党・労働党の後塵を拝している。法案成立をテコに選挙に向けて支持率浮上を図れるかどうかは見通せない。


6月6日、シドニーで会見したロブ・ストークスNSW州教育相(右)とレイ・ウィリアムズ同州多文化相
6月6日、シドニーで会見したロブ・ストークスNSW州教育相(右)とレイ・ウィリアムズ同州多文化相

オンラインで運営スムーズに

移住者の子ども向け語学教室――NSW州

主に海外からの移住者の子どもを対象に母語を教えているNSW州の「コミュニティー・ランゲージ・スクール」が、教室の運営を管理するオンライン・ツールを導入する。地域の小規模な教室で教えるボランティア教師の事務作業を電子化することで、生徒の学習能力の向上につなげる狙いがある。NSW州政府が6月6日、発表した。

シドニー大学の研究機関が民間企業に委託して開発したツールを利用し、教師の入学手続きや生徒の出欠などの作業を補助する。最大1,000人の生徒が学ぶ約10カ所の教室で試験運用を始める。州政府が3年間で1,090万ドルを投じる同スクール振興策の一環。ツールの開発運営費として178万ドルを拠出する。

ロブ・ストークスNSW州教育相は会見で「母語の習得を願う生徒たちを支援するために投資したい」と述べた。また、レイ・ウィリアムズ同州多文化相は「生徒数の拡大や教える言語の増加に対応できるよう、スクールへの支援を強化していく」と強調した。

同スクールは現在、州内545カ所の教室で、58の言語を約3万5,000人の生徒に教えている。日本語クラスも週末に地域の学校の教室を借り、シドニー市内など州内12カ所で開講している。

州政府は、同スクールのボランティア教師を育成するための奨学金プログラムを実施。毎年200人を対象に、シドニー大学でプロの語学教師としてのスキルを習得させている。


差別犯罪への刑罰強化へ
NSW州与党、議会に法案提出

NSW州の保守連合政権(自由党、国民党)は6月初め、いわゆる「ヘイト・クライム」などの差別犯罪を禁じる州法改正案を議会に提出した。禁止対象は、人種、信仰、性的嗜好、ジェンダー・アイデンティティー(性的自己同一性)、インターセックス(男女の中間的性質)、後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)をめぐる差別に基づく脅迫や暴力など。

現行の反差別法が規定する犯罪を刑法で再定義する。刑罰も大幅に強化する。刑期を現行の最大6カ月から同3年に延長し、罰金も1万1,000ドルから5万5,000ドルに引き上げる。

グラディス・ベレジクリアンNSW州首相によると、法律専門家との間で言論の自由との兼ね合いを慎重に協議したという。州首相は「他者に対して脅迫や暴力を誘発する者は、言論の自由を盾にしてはならない。保守連合政権は多様性に富んだ社会を守り抜く」と強調した。


JTBがサンゴ礁の再生に資金を寄付したQLD州北東部沖のグレート・バリア・リーフ(©Tourism & Events Queensland、Photo:Andrew Watson)
JTBがサンゴ礁の再生に資金を寄付したQLD州北東部沖のグレート・バリア・リーフ(©Tourism & Events Queensland、Photo:Andrew Watson)

JTB、3団体に5万5,000ドル寄付

豪州の環境資源保護に貢献

日本の旅行大手JTBはこのほど、オーストラリアの観光資源の保護に寄与するため、「グレート・バリア・リーフ・サンゴ礁保護基金」、野生動物保護施設「カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリー」、先住民支援の「ムティジュル財団」の3団体に、合計5万5,000ドルを寄付したと発表した。

グレート・バリア・リーフ・サンゴ礁保護基金はケアンズを拠点に、死滅しつつあるサンゴ礁の再生を目的に活動。ケアンズ沖のフィッツロイ島にある施設で研究と再生プログラムを実施している。

カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリーはゴールドコーストにある非営利団体で、野生動物保護園を運営。負傷した野生動物の手当ても行っている。

北部準州(NT)の観光地ウルル(エアーズ・ロック)にあるムティジュル財団は、先住民族の健康や教育、経済活動への参加をサポートしている。

JTBは2018年度、オーストラリア政府観光局(TA)と共同で豪州観光のプロモーションや商品開発、セミナーなどを展開している。団体旅行やMICE(会議、招待旅行、展示会など)、教育旅行、個人旅行など全方面で訪豪客の拡大を目指しており、同年度に合計8万人の送客を目標に掲げている。


日本水産、豪エビ養殖最大手に出資
新事業でブラックタイガー安定供給へ

日本水産(本社東京都港区)はこのほど、オーストラリアの養殖エビ大手「シーファーム・グループ」(本社WA州パース)への資本参加で同社と合意したと発表した。シーファームの発行済み株式の14.99%に相当する第三者割当増資を2,500万ドルで引き受ける。

シーファームはQLD州で高級養殖エビを生産し、国内養殖エビ生産の3分の1強を占める最大手。北部準州(NT)で新たに手掛ける大規模な養殖場開発計画に認可のめどが付いたことから、出資を決めた。シーファームの子会社が、今年度中に北部準州でブラックタイガー(ウシエビ)の養殖場建設を始め、21年度に1万トンの生産を目指している。

日本水産は、シーファームが北部準州で生産するブラックタイガーを日本とオーストラリア、ニュージーランドで独占的に販売する。関連商品もグループの販売網を通して世界展開する。シーファームの既存のエビ養殖事業については、シーファームの子会社からブラックタイガーなど年間2,000トンの供給を受け、日本とオセアニアで販売する。

日本水産によると、日本のエビ市場は緩やかな縮小傾向にある一方、欧米や中国では拡大傾向にあり、養殖エビの世界的な需要は堅調に推移する見通し。流通量の8割は養殖効率の高いバナメイエビが占め、かつて主流だったブラックタイガーは2割にとどまるという。しかし、ブラックタイガーはサイズの大きさ、加熱後の鮮やかな色彩、食感の高さから人気があり、バナメイと比較して高値で推移している。

日本水産は海外養殖事業の拡大に取り組んでいる。シーファームへの出資を通して養殖エビの安定供給を図り、エビを白身魚やサケ・マスに次ぐ主要事業に育てる。

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