2019年3月 ニュース/総合

豪州産石炭が中国・大連港で禁輸されたとの報道を否定したジョシュ・フライデンバーグ連邦財務相
豪州産石炭が中国・大連港で禁輸されたとの報道を否定したジョシュ・フライデンバーグ連邦財務相

豪州産石炭、中国で禁輸と報道

連邦財務相は否定――豪ドル下落

ロイター通信は2月21日、中国北東部・遼寧省の大連港が、豪州産石炭の輸入を禁止したと報じた。豪中両政府は報道を否定しているが、何らかの理由で、豪州産石炭を積んだタンカーが沖で足止めされていることは間違いないようだ。禁輸が事実であれば、対中輸出への依存度が高い豪州経済への打撃につながりかねない。

報道によると、同港を含む5港で豪州産石炭の通関が止まった。2019年末までの石炭輸入量の上限も1,200万トンに規制されたが、ロシアやインドネシアからの石炭輸入は影響を受けていないという。

ロイター通信によると、豪州産石炭の大連港の取扱量は豪石炭輸出全体の1.8%に過ぎない。ただ、大連港の18年の石炭輸入量約1,400万トンのうち、豪州産が約半分を占めるという。

豪州は世界最大の石炭輸出国で、石炭は鉄鉱石と並ぶ資源・エネルギー輸出の主力商品だ。連邦政府の統計によると、17/18年度(17年7月~18年6月)の豪州産石炭の輸出額は、製鉄用の原料炭が380億ドル、発電用の一般炭が230億ドル。原料炭と一般炭の合計で、首位の鉄鉱石(610億ドル)に匹敵する。このうち中国向けは約131億ドルだった。

21日の外国為替市場では、豪州経済が打撃を受けるとの観測から豪ドルが急落。豪ドルの対米ドル相場は一時、1豪ドル=0.7086米ドルと1%以上下落した。

豪大手銀ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)の主席エコノミストであるコルホーン氏は、ロイター通信に「禁輸が豪中貿易関係の悪化を反映したものであれば、より広範囲に経済的な悪影響が及ぶ」との見方を示した。

中国外務省の広報官は同日の会見で、安全性と品質の観点から税関が輸入石炭を検査しているとした上で、「中国の輸入業者の法的権利と利益、自然環境を守ることが目的だ」と述べた。

一方、豪州のジョシュ・フライデンバーグ連邦財務相は22日、公共放送ABCのラジオ番組で、禁輸の事実を否定した。豪州産石炭の輸出が滞っていることについて、同財務相は「豪中貿易関係は非常に強力で、特別に重要だ」と述べ、背景に政治的思惑があるとの観測を退けた。

豪輸出の主力、石炭を標的か

豪州経済はこれまで27年間、景気後退(リセッション=2四半期連続のマイナス成長)を回避してきた。主要先進国で最長とされるリセッション知らずの経済成長をけん引したのが、急激な経済成長を遂げた中国への資源輸出だ。

特に主力の鉄鉱石と石炭の対中輸出は、2000年代から爆発的に増加した。連邦政府の統計によると、16/17年度の豪州のモノの輸出額(2,966億ドル)に占める対中輸出は33%を占め、中国は最大の輸出先だ。貿易額全体でも中国は最大の相手国となっている。17/18年度の豪州産石炭輸出額のうち、中国向けは製鉄用の「原料炭」の22%、発電用の「一般炭」の21%を占める。

中国企業の対豪投資や中国系移民の増加も国内経済を下支えした。連邦政府は中国との関係を重視。前労働党政権は中国人民解放軍との軍事交流にも踏み込んだ。

ところが、ここ数年で潮目は大きく変わった。国内では、北部ダーウィンで15年、中国企業が港湾施設の99年間にわたるリース権を取得。中国が南シナ海の軍事拠点化を進める中で、安全保障上の懸念が浮上した。ダーウィンは第2次世界大戦中に旧日本軍も空爆した地政学上の重要拠点で、現在米海兵隊も巡回駐留している。

中国の豪州政界への影響力拡大も懸念され、18年にはこれまで許可されていた外国人による政治献金を禁止する法案も成立した。豪与野党への大口献金を通して中国政府の影響力拡大を図っていたとされる中国人富豪の永住権が、連邦政府に取り消されていたことも2月6日、明るみに出た。

国外では、米トランプ政権が中国との対決姿勢を強め、18年には安保上の懸念から華為技術(ファーウェイ)など中国の大手通信企業の排除に乗り出した。米国と同盟関係にある豪州も同年、これに追従した。2月1日には、ジョン・ブランビー元VIC州首相が、政界引退後に務めていたファーウェイ在豪法人の取締役を退任すると発表した。

一連の動きを背景に、豪中関係は冷え込んでいる。今回の石炭禁輸は、米中貿易協議が大詰めを迎えたタイミングで報じられた。米国陣営の一角である豪州の主力輸出商品が狙い撃ちされた可能性は否定できない。


中国依存の豪経済に試練――石炭禁輸
輸出先の多角化に活路、過去の歴史にヒント

豪資源輸出の主力を担う石炭の集積場。「中国頼み」の豪州経済は、米中間の貿易戦争の狭間で揺れ動く(Photo: BHP)
豪資源輸出の主力を担う石炭の集積場。「中国頼み」の豪州経済は、米中間の貿易戦争の狭間で揺れ動く(Photo: BHP)

今回の豪州産石炭の禁輸をめぐる騒動は、中国への依存度の高い豪州経済にとって悪夢への第1歩となるかもしれない。米中貿易戦争の展開次第では、豪州が大きな経済的損失を被る事態も予想される。

大手会計事務所KPMGは2018年、米中が本格的な貿易戦争に突入した場合、豪国内総生産(GDP)が5年間で最大2.4%下振れするとの試算を発表している。

それだけに、豪州の産業界は中国と本気で対峙したくないのが本音。短期的には、3月1日に期限が切れる米中貿易協議と、近く開かれる可能性がある米中首脳会談の結果が焦点となる。米中が一定の合意に達すれば、貿易戦争をめぐる懸念はいったん後退しそうだ。

ただ、世界の覇権を懸けた米中の「新冷戦」が、一気に収束するシナリオは想定しにくい。豪州は米、英、カナダ、ニュージーランドと共にアングロサクソン陣営5カ国が諜報情報を共有するUKUSA協定(通称「ファイブ・アイズ」)の一員。米中の攻防が、先端技術やサイバー空間を含む安全保障上の覇権争いに発展した今、米国の安保戦略と一蓮托生の豪州には、ファイブ・アイズの足並みを乱して中国に接近する選択肢は残されていない。

幸い、豪州の輸出商品は、仕向け地によって仕様が異なる高度な工業製品ではない。鉄鉱石や石炭、穀物といった汎用性の高い一次産品が主力だ。大連港沖で足止めされた石炭は、買いたたかれるにしても中国以外に売り先はある。

豪州は旧宗主国の英国や欧州との経済関係が薄れた1970年代から80年代にかけて、外交・通商政策の軸足をアジアに移す「脱欧入亜」を進め、日本を中心としたアジアとの貿易拡大にかじを切った。日本のバブル崩壊後の90年代初頭、豪州経済も最後のリセッションを経験。日本経済との「共倒れ」も懸念されたが、後に中国への輸出を大幅に伸ばし、現在の経済的繁栄につなげた。

人口約13億人と中国に迫るインド、成長の伸び代が大きい東南アジア諸国連合(ASEAN)やアフリカ諸国……。過去の歴史と同様に、豪州が他の成長地域に販路を更に広げれば、中国依存のリスクをある程度分散できる可能性がある。

主な豪州産資源・エネルギーの輸出額と輸出先(2017/18年度)

順位 商品 輸出額(豪ドル) 輸出先上位3カ国(カッコ内は全体に占める割合)
1 鉄鉱石 610億 中国(83%) 日本(8%) 韓国(6%)
2 原料炭(製鉄用) 380億 インド(25%) 中国(22%) 日本(19%)
3 液化天然ガス(LNG) 310億 日本(47%) 中国(31%) 韓国(12%)
4 一般炭(発電用) 230億 日本(44%) 中国(21%) 韓国(13%)
5 原油 70億 米国(21%) 欧州(14%) 中国(13%)

出典:連邦産業・イノベーション・科学省 資源・エネルギー四半期統計(2018年12月)

豪州と中国のモノの貿易(2017/18年度)

金額(豪ドル) 全体に占める割合 国別順位 前年比 上位3品目
輸出 1063.3億 33.70% 1位 11.3%増 鉄鉱石、石炭、羊毛
輸入 681.2億 22.50% 1位 10.8%増 通信機器、コンピューター、家具
貿易 1744.5億 28.20% 1位 11.1%増

出典:連邦外務貿易省


NSW州与党保守連合(自由党、国民党)のグラディス・ベレジクリアン州首相
NSW州与党保守連合(自由党、国民党)のグラディス・ベレジクリアン州首相

与野党が僅差の争いへ

NSW州選挙、3月23日投票

国内最大の人口を抱えるNSW州の議会選挙の投票が3月23日、実施される。世論調査では与野党の支持率が拮抗していて、与党保守連合(自由党、国民党)と中道左派の労働党の2大政党が僅差を争う接戦となる見通しだ。いずれも下院で過半数を確保できない場合、小政党や無所属議員と手を結び、少数与党となる可能性もある。

保守連合は、2015年の前回選挙以来2度目の再選を図る。17年1月に就任した女性のグラディス・ベレジクリアン州首相の下では初の選挙。一方、労働党はルーク・フォリー前党首が昨年11月、セクハラ疑惑で辞任し、マイケル・デイリー党首が就任してからまだ日が浅い。知名度の低い新リーダーの下で、11年以来8年ぶりの政権奪回を目指す。

NSW州選挙は4年に一度、下院(定数93、任期4年)の全議席と、上院(定数42、任期8年)の半数21議席を改選する。改選前の州下院の各党の議席数は、保守連合52(自由党36、国民党16)、労働党34、その他の勢力7(グリーンズ3、無所属3、地方政党の「シューターズ、フィッシャーズ・アンド・ファーマーズ党」(銃愛好家・漁業者・農業者の党)1)となっている。

同州選挙は、5月末までに実施される次期連邦選挙の事実上の前哨戦となる。同州の保守連合政権が大幅に議席を減らせば、支持率低迷を背景に苦戦が予想される連邦のモリソン保守連合政権への逆風が一段と強まることになる。

2大政党対決の構図に変化

調査会社エッセンシャルが2月6日~11日に実施した最新の世論調査によると、NSW州の各政党別の支持率は保守連合が39%、労働党が36%、左派の「グリーンズ」(緑の党)が9%、強硬右派の「ワン・ネーション」が8%。優先順位2位以下の支持を振り分けた2大政党別支持率は、労働党が51%、保守連合が49%と野党が少差で与党を上回った。

英紙「ガーディアン」豪州版などの分析によると、直近の2大政党別支持率が選挙結果に反映された場合、与党は下院で過半数を割り込み、少数勢力の閣外協力を得てかろうじて少数政権を維持する可能性がある。

ただ、与野党の勝敗を握る鍵は少数勢力にあるようだ。選挙情勢分析の専門家である公共放送A

BCのアントニー・グリーン氏は、11日付の同放送電子版で「ほとんどの選挙区で保守連合と労働党が対決した20年前と異なり、NSW州では2大政党対決の構図は崩れてきた。現在では、選挙区によって労働党対グリーンズ、自由党対グリーンズ、国民党対無所属といったさまざまな対決の構図が見られる」と指摘。その上で同氏は「今回の選挙は州全体の投票傾向ではなく、個別の選挙区の結果が鍵になる」と述べ、従来の選挙予想モデルは当てはまらないとの見方を示した。

家計支援のバラマキ応酬

選挙は3月4日公示。即日開票される。ただ、候補者に優先順位を付けて得票を振り分ける複雑な選挙制度のため、接戦となった場合は勝敗の判明までに最大で数週間掛かる場合がある。

争点の1つが生活コストの問題だ。住宅ローンや家賃、エネルギー料金などの高騰が家計を圧迫しているとの声を背景に、与野党の公約は共に一般家庭への現金支援策が目立つ。

保守連合は、1月の州内失業率が3.9%と過去最低を記録したことを挙げ、経済運営の実績をアピール。これまでに発表した公約では、昨年の州予算で打ち出した子どものスポーツ支援金を1人当たり100ドルから200ドルに倍増する他、芸術や音楽、ダンスの教室に通う子どもにも1人100ドルを支援するとしている。新生児1人300ドルの出産支援金も拠出する。

自己資金でリタイア生活を送る人には電気・ガス料金を3カ月当たり50ドル補助する。道路通行料金を1週間当たり25ドル以上支払っている人には既に自動車登録費を無料化しているが、2019年7月からは同15ドル以上25ドル未満の登録費を半額にする。

一方、労働党も政権交代を実現した場合、保守連合の子どもへの支援金を維持すると同時に、一部小学校への検眼士の派遣、視力検査・メガネの無償提供を行う。学校に通う子どもの公共交通運賃無料制度も拡充する。電力会社への規制を強化し、電気料金の引き下げを図る。一部高速道路の料金払い戻し、シドニー空港の鉄道割増運賃の引き下げ、鉄道が30分以上遅延した場合の料金払い戻しなども打ち出している。


強度低いコンクリート使用
シドニーのひび割れ欠陥タワマン

シドニー西郊の36階建て新築超高層マンション「オパール・タワー」で昨年12月、建物の内部に亀裂が発生して住民が避難した問題で、NSW州政府の調査報告書が2月22日、公表された。同日付の公共放送ABC電子版が伝えた。

報告書は、10のフロアと地下で床がひび割れたり、壁が剝がれ落ちているのが見つかったと指摘した。◇強度の低いコンクリートの使用、◇天板の梁の設計不良などが原因だったと結論付けた。

オパール・タワーはシドニー・オリンピック・パークに昨年8月に完成。昨年12月24日に床や壁が割れる大きな音が発生し、入居したばかりの住民は避難を余儀なくされた。ABCによると、22日の時点で392室のうち259室が空室となっており、数百世帯が依然として避難生活を送っているという。当初報じられた倒壊の恐れはないとされるが、修理の見通しも立っていない。資産価値の低下も避けられない模様だ。

報告書は、オパール・タワーを手掛けたVIC州のゼネコン「アイコン」を含む業者の責任の所在については、踏み込まなかった。なお、日本の大手ゼネコン鹿島は2015年、現地法人の鹿島オーストラリア(メルボルン)を通してアイコンを買収している。


大規模な洪水に襲われたQLD州東部タウンズビルで2月4日、飼い犬を抱いてボートで避難する住民たち(Photo: AFP)
大規模な洪水に襲われたQLD州東部タウンズビルで2月4日、飼い犬を抱いてボートで避難する住民たち(Photo: AFP)

QLD州で大規模洪水

タウンズビルで降水量2,000ミリ

2月初めにQLD州を襲った大規模な洪水で、7日までに2人が死亡、2万人が避難した。メディア大手ニューズの電子版が報じた。

豪保険協議会によると、6日時点で洪水による損害保険の請求件数は6,500件あった。最終的な保険請求金額は8,000万ドルに達する見通しだという。

大規模な洪水に見舞われているQLD州東部タウンズビル周辺では、無人となった家屋を狙った空き巣事件が相次いだ。住民が避難したため空き家となった家屋では、現金や貴金属、電気道具、自転車、サーフボードなどの盗難が報告された。

QLD州警察タウンズビル署は6日、声明を発表し、洪水に便乗した犯罪の被害に遭わないよう住民に自衛措置を呼び掛けた。警察は捜査員を増員して被災地の警戒に当たった。

首相:「畜産業の復興に最大10年」

公共放送ABC電子版によると、QLD州北部の放牧場では洪水で牛が溺死したり、餌の牧草が流されるなどの被害が出た。干ばつに悩まされてきた畜産生産者にとって「恵みの雨」となるはずだったが、「100年に一度」と言われる豪雨で大打撃を受けた。

同放送によると、州北西部ジュリア・クリークの放牧場では約200頭の牛が死亡したとみられる。放牧場の管理者は5日、浸水した牧場にボートを出し、6頭の牛を救出した。しかし、ボートがフェンスに絡まったり急流につかまって遭難する恐れがあり、救出作業は危険を極めたという。

州北部リッチモンド郡は4日、洪水で孤立した牛の群れに餌を与えるため、ヘリコプターで干し草の投下を行った。豪陸軍もヘリによる干し草の投下作戦を実施した。

スコット・モリソン首相は15日、洪水で大打撃を受けたQLD州北西部の放牧場を視察した。首相は約50頭の牛の死体が横たわる赤い大地を前に「畜産業を再生するには5年から10年掛かる」と述べ、畜産事業者への長期的な支援を約束した。

豪気象局(BOM)によると、タウンズビルの一部では降り始めから12日間の降水量が2,000ミリに達するなど、州北東部の多くの地域で観測が始まって以来の降水量の記録を更新した。干ばつに見舞われていた北西部のジュリア・クリークやリッチモンドでも過去最高の降水量を記録した。


次期連邦選挙に出馬せず、政界を引退する意向を表明したジュリー・ビショップ前外相
次期連邦選挙に出馬せず、政界を引退する意向を表明したジュリー・ビショップ前外相

ビショップ前外相が政界引退へ
豪州初の女性外相

ジュリー・ビショップ前外相(連邦下院議員)は2月21日、連邦議会でスピーチを行い、次期連邦選挙に出馬せず、政界を引退すると表明した。ビショップ氏は与党保守連合の経済運営を理由に次期選挙の勝利は確実だとした上で、「私の席を新しい議員に譲る時が来た」と述べた。

ビショップ氏は弁護士を経て、1998年の連邦選挙でパース西部カーティン選挙区から立候補して初当選。現在7期目。ハワード政権時代に高齢化相、教育相、野党時代の2007年~13年に保守連合副代表を務めた。

政権復帰後の13年9月、アボット内閣で豪州初の女性外相に就任し、自称「イスラム国」(IS)の台頭やマレーシア航空機行方不明事件、北朝鮮の核・ミサイル開発などの国際問題に対処した。18年8月に起きたマルコム・ターンブル前首相の事実上の更迭劇では、自由党の党首選に出馬したものの、第1回投票で敗北。モリソン内閣には加わらず、外相を辞任した。

5月末までに実施される次期連邦選挙では、与党の有力選挙区で、野党労働党が「刺客」となる女性候補者を着々と準備している。人気と知名度の高いビショップ氏の引退は、支持率が低空飛行を続けるモリソン政権にとって痛手となりそうだ。

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