2010年9月 ニュース/総合

【2010年連邦選挙】

70年ぶりの少数政権へ
二大政党、ともに過半数割る

-無所属・緑と連携模索

ジュリア・ギラード首相とトニー・アボット野党保守連合代表

与党労働党率いるジュリア・ギラード首相
トニー・アボット野党保守連合代表

 ジュリア・ギラード首相率いる労働党政権の継続か、トニー・アボット自由党党首の保守連合(自由党・国民党)政権誕生か――。下院(定数150)の全議席と上院(定数76)の40議席を改選する連邦選挙が8月21日に行われ、開票の結果、二大勢力がともに下院で単独過半数の76議席を割り込むことが確実となった。いずれも少数政権の樹立を目指し、無所属議員らとの連立または協力を模索している(8月30日現在)。

 豪州で二大政党がともに下院で過半数を割るのは1940年以来70年ぶり。過去の選挙では通常、投票締め切りから2、3時間以内に大勢が判明、両党首がそれぞれ演説を行っていたが、今回はいずれも勝利を宣言できない異例の事態となった。
 ギラード首相は21日午後11時15分すぎ、メルボルンでスピーチを行い、「結果が判明するまでしばらくかかる。無所属議員と政権協議に入る」と述べた。政権維持を目指して少数勢力の協力を取り付ける方針だ。
 また、アボット党首はこの直後にシドニーで「与党が76議席の過半数を割り、統治の正統性を失ったことは明白だ」と演説した。2007年以来3年ぶりの保守政権奪回に照準を合わせて、同党首も早急に無所属議員らとの連立交渉に入ると表明した。
 一方、上下両院で最大10議席と勢力を倍増させた環境保護政党グリーンズ(緑の党)のボブ・ブラウン党首は同日夜、「グリーンスライドだ(同党支持に雪崩を打った)」と勝利を宣言した。
 豪選挙管理委員会(AEC)によると、80.43%の開票が終了した30日午前の時点で、下院議席数は労働党72、保守連合(自由党・国民党)73(WA州国民党1含む)、無所属4、グリーンズ1となる見通しだ。
 しかし、選挙結果は「写真判定」に持ち込まれた格好で、投票日から約1週間以上が経過しても確定していない。投票用紙の候補者全員に順位を付ける豪州の「優先順位付連記投票制」は、接戦になればなるほど確定までに非常に時間がかかるため、郵送投票の開票作業が続いている。
 ともに過半数を割った二大勢力は、既に無所属・グリーンズとの間で、連立政権樹立に向けた交渉を進めている。各党の最終的な勢力が判明する30日~9月3日の週をメドに、与野党による少数勢力の獲得合戦が本格化する。
与党に逆風、左派の環境政党が躍進
 二大政党の1つである与党労働党は、労組などを支持母体とする中道左派政党。ギラード首相の地盤VIC州で善戦したものの、ラッド前首相の出身地QLD州と、州労働党政権の人気が凋落しているNSW州で大幅に議席を減らした。6月末の電撃的なラッド前首相更迭劇への反発、州政権の不人気といったマイナス要因が、初の女性首相という新鮮なイメージを打ち消したばかりか、強い逆風を吹かせた格好だ。
 一方、主に財界や経営者が支持する自由党と、農業生産者など農村を基盤とする国民党で構成する保守連合は、東部2州を中心に議席を拡大した。アボット党首は、昨年12月の党首就任当時は予想できなかった健闘ぶりを見せ、与党内の足並みの乱れが露呈したことなどから、選挙戦前半にリードを稼いだ。ただ、最終コーナーで思うように加速が伸びず、単独過半数には届かなかった。
 また、無所属は合計4人。農村出身の保守系現職3人に加え、TAS州の新人1人の当選が確実となった。
 さらに、左派のグリーンズは、労働党が1904年以来議席を維持してきたメルボルン選挙区で1議席を獲得した。1次選好票の得票率は11.40%、前回選挙比の得票増加率(スウィング)は3.61%と主要政党の中で群を抜く躍進ぶりとなった。同党は2002年の下院補選で1議席を獲得したことがあるが、下院の通常選挙で勝利したのは初めて。
 上院でもグリーンズは、改選前の5議席から最大9議席まで拡大する見込み。今回改選された上院議員が登院する来年7月以降、以前から与党が過半数に満たない上院で議会運営の主導権を掌握する。ただ、同党の立ち位置は、温室効果ガス排出量の極端な削減、アフガニスタン派兵の中止、難民受け入れ拡大など最も左寄り。反捕鯨でも強硬姿勢を採っている。
過半数目指して激しい獲得合戦に
 今後は、無所属4とグリーンズの1合計5人の少数勢力が、次期政権の行方を左右することになる。
 このほかWA州国民党から出馬して当選した新人トニー・クルック氏も独自で交渉に加わる意向を明確にした。同党は議席数の上では保守連合に含まれるが、中央の国民党から独立しているという。同氏1人を除けば、保守連合の実質的な勢力は与党と同数の72となる。
 連立政権樹立に向けた交渉で現在、台風の目となっているのが、保守系無所属3人のグループだ。いずれも現職で、地方の農業生産者を支持基盤とし、過去に国民党から離党した経歴がある。
 ボブ・カッター氏(QLD州ケネディー選挙区)は、93年に国民党の下院議員として当選したが2001年に離党して以来、無所属を通している。トニー・ウィンザー氏(NSW州ニュー・イングランド選挙区)もかつて政界に入る前に国民党に所属していたが、無所属で当選したNSW州議を経て、01年に連邦政界入りした。3人の中では最も若いロブ・オークショット氏(NSW州ライン選挙区)はNSW州議時代に国民党を離れ、08年の連邦補選で無所属議員として初当選している。
 一方、4人目の無所属議員となったTAS州の新人アンドリュー・ウィルキー氏はかつてグリーンズから出馬した経験があり、左派とされるものの、現時点では支持勢力を明確にしていない。同氏は国防軍の元諜報部員だが、ハワード保守政権がイラク参戦の根拠とした大量破壊兵器の存在をめぐり、同政権に反旗を翻した人物として知られる。
 また、グリーンズの新人アダム・バント氏は弁護士出身。再生可能エネルギーの利用拡大や同性愛結婚の承認などを掲げて労働党の牙城を崩したが、選挙後は早々と労働党支持を表明している。
 労働党はグリーンズとの連立で73議席、ウィルキー氏と手を組めば74議席。そこまでは数が読めていると言えるが、過半数の76議席にまだ2議席足りない。ギラード首相にしてみれば、新人2人に加えてカッター氏とオークショット氏、ウィンザー氏の3人を何としても招き入れたいところだろう。
 喉から手が出るほど無所属3人が欲しいのはアボット党首も同じだ。保守連合はこれら3人とクルック氏1人でかろうじて76議席を確保できる。
 3人は25日、共同でギラード首相とアボット党首に7項目からなる公開書簡を提出するなど、現時点では1つのグループとして行動している。ただ、3人は「社会的保守」では一致していると見られるものの、カッター氏が農産物の保護貿易主義や気候変動懐疑説を主張するなど、経済・環境政策では必ずしも一枚岩ではないため、分裂する可能性もある。
 現時点で次期政権の行方は不明だが、与野党の多数派工作が熾烈を極めた争いとなることは間違いない。
■連邦議会の各党議席数

[連邦下院]
政党 改選前 改選後*1
労働党 83 72
保守連合 64 73
無所属 3 4
グリーンズ 0 1
合計 150 150
[連邦上院]
政党 改選前 改選後*2
労働党 32 31
保守連合 37 34
グリーンズ 5 9
そのほか 2 2
合計 76 76

8月30日午前現在。単独過半数は下院76議席以上、上院39議席以上
*1 資料:豪選挙管理委員会 *2 資料:国営ABC放送


【2010年連邦選挙解説】
選挙結果が浮き彫りにした
3つのオーストラリア

「ハング・パーラメント」という聞きなれない言葉が豪州のマスコミを賑わせている。「宙ぶらりん議会」という馴染まない日本語訳が付いているが、連邦議会では第2次世界大戦直前の第1次メンジス政権以来史上2度目という稀なケースだ。政治の方向性が定まらないため、商談や投資を前に進められない業界にとっては深刻な事態となっている。
 ただ、州議会では1991年のNSW州選挙などいくつか実例がある。最近では、今年初めのTAS州選挙後、与党労働党がグリーンズと連立して少数政権を樹立した。二大政党制が長く続いた英国でも今年5月の選挙で、第1党となった野党保守党が過半数に届かず、第3勢力の自由民主党との連立政権を発足させている。
 ところで今回の選挙では、環境保護政党グリーンズが党勢を大きく拡大したことが民意の1つの表れとなった。グリーンズは下院では1議席を獲得したにすぎないが、全国平均で10人に1人以上が同党を1位で投票した。得票率の増加率(スウィング)は他党を圧倒しており、一人勝ちの印象が強い。
 特に、同党の1次選好票得票率は、1議席を獲得したメルボルン選挙区で約36%、シドニー選挙区で約24%、ブリスベン選挙区で約21%と大都市中心部の選挙区で局地的に高い。得票率は都心で極端に高く、郊外に行くほど低いピラミッド型だ。
 全国紙「オーストラリアン」は28日付の社説で「ミドル・オーストラリアと、都市中心部に住む高学歴のインテリ層は価値観が異なり、その間には深い溝がある」と指摘した。これによると、ミドル・オーストラリアは社会的保守主義を標ぼうし、宗教心と愛国心があり、スポーツを好む。一方、都市住民は進歩主義的で宗教心も薄い。
 こうした都市部のインテリ層は従来、労働者層とともに労働党の主な支持層だった。ところが、与党の気候変動対策に不満を持ったインテリ票はグリーンズへ流出したもようだという。
 また、期せずしてハング・パーラメントとなったことで、無所属の農村議員3人の重要性が増し、地方に住む農業生産者の存在がクローズアップされた。全国農業者連盟は23日、「無所属の農村議員3人が次期政権のカギを握ったことで、農業政策の重要性が増した」と期待した。
 同連盟によると、豪州では国土の3%しかない海岸部の大都市圏に国民の88%が居住しており、農村は発展から取り残されているという。同連盟は開発を促すため、地方に拠点を移す人や企業に優遇税制を設けることを提唱している。
 こうして見ると、今回の連邦選挙の結果、オーストラリアは、左傾化する都市中心部、社会的保守が根強い都市郊外、取り残された農村という大きく分けて3つの部分の分断が進んでいることが改めて浮き彫りになっている。
 いずれにせよ、与野党のどちらが過半数を制しても、薄氷の上で不安定な政局運営を強いられることは必至だ。1~2議席差では大胆な改革は望めず、議会が紛糾すれば再選挙実施の機運が高まるかもしれない。
 特に来年7月以降、保守連合が政権に就いた場合、上院で法案通過の主導権を握るグリーンズと激しく対立することが予想される。労働党が政権を維持した場合は、政策の軸がグリーンズ寄りに振れる可能性も否定できない。


駐豪全権特命大使に佐藤大使が着任

駐豪全権特命大使に佐藤大使が着任
 8月3日に豪州へ到着した佐藤重和大使は8月26日、ブライス豪州連邦総督への信任状捧呈を終え、在豪州日本大使として正式に着任した。佐藤大使の略歴は以下の通り。
○略歴
佐藤重和(さとう・しげかず)東大法卒。1974年外務省に入り、在米国参事官、アジア局中国課長、アジア局外務参事官、アジア大洋州局審議官、在インドネシア公使、経済協力局局長を経て、2006年8月から在香港総領事(大使)。60歳。東京都出身。


アフガニスタンでまた戦死者

アフガニスタンでまた戦死者
ブリスベンで行われた戦死したグラント・カービー兵士とトーマス・デール兵士追悼式の様子(Photo: Commonwealth of Australia 2010)
 ジョン・フォークナー国防相は8月21日、キャンベラで記者会見し、豪時間で20日午後にグラント・カービー兵士(35)とトーマス・デール兵士(21)がアフガニスタンで戦死したと発表した。アフガニスタン駐留豪軍部隊はこれまでに18人の戦死者を出しており、8月中旬にパースのSAS部隊員が戦死したばかり。
 2人はブッシュマスター装甲車に乗って作戦活動中に、即製爆発装置の爆発で死亡した。2人はブリスベンの第6大隊所属で、第1指導タスク・フォースの隊員。この事件でほかに豪兵士2人が負傷しているがいずれも命に別状はない。
 駐留豪軍の戦死者はこれで20人に達したが、そのうち9人は2010年6月以降に死亡しいている。
 緑の党は、豪部隊のアフガニスタンからの撤退を掲げているが、労働党・野党保守連合はいずれも「豪部隊のアフガニスタン駐留を続ける」としている。豪国防軍のアフガニスタン派兵は、ジョン・ハワード政権が議会に諮らず、政府決定で進めた。当初、国民の派兵支持率も高かったが、駐留が長引きアフガニスタンの平静化見通しも立たない状況で撤退支持が徐々に増えてきている。


オーストラリア経済、20年目の成長に入っている
バテリノ豪中銀副総裁

 オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)のバテリノ副総裁は8月20日、QLD州レッドクリフで講演した。講演テキストによると、同副総裁は「豪経済は20年目の成長に入っている」とし、「経済の柔軟性向上と慎重かつ規律ある金融政策の追求」がその大きな要因になったと述べ、豪ドルの変動が海外からのショックを和らげるのを助けたとの見方を示した。
 RBAは少なくとも向こう数年間は堅調な景気拡大が続くと予想している。同副総裁は、1991年7~9月期から始まった豪経済の成長は、少なくともこの1世紀で最長で、この間、前年同期比で成長がマイナスになったことはないと指摘。長期間拡大が続いている理由として、人口の増加や中国向け資源輸出といった要素もあるものの、これらは小さな要因にすぎないとの見方を示した。
 その上で、経済の柔軟性が高まった要因として、1983年の変動為替相場制への移行決定があったとし、豪ドルの上下動がアジア危機など海外からの影響を和らげる重要な役割を果たしたと説明。2006~08年の商品ブームでは豪ドルが上昇し景気過熱圧力を抑える助けとなったほか、直近の世界金融危機では豪ドルが一時的ながら大幅下落したことが景気の落ち込みを和らげたと語った。
 副総裁はまた、現在の資源開発投資ブームに言及。資源開発投資は平均的にはGDP(国内総生産)比1.75%程度で、これまでのブームでは最大3%程度だったが、今回は既に4.25%に達していると指摘。先行きさらに大幅に上昇する見通しだと述べ、今後、経済を押し上げる大きな要因になるとの見方を示した。
 講演テキストでは金融政策の見通しなどについては触れていない。(時事)


新幹線技術を豪州にアピール
シドニーで高速鉄道セミナー開催

高度な技術を誇るN700系新幹線
高度な技術を誇るN700系新幹線

 豪州で高速鉄道の可能性を模索するセミナー「ハイ・スピード・レイル・ワールド2010」(イベント会社テラピン主催)が8月24・25日、シドニーで開催された。鉄道・インフラ業界や政府などの関係者ら100人以上が出席した。豪東海岸主要都市を高速鉄道で結ぶ構想が浮上する中で、日本貿易振興機構(ジェトロ)シドニー・センターが主要スポンサーとして参加、在オーストラリア日本国大使館、国交省、JR東海など日系5社と連携して「オール・ジャパン」で新幹線の技術を紹介した。

 セミナーで講演した豪州の鉄道・インフラ業界関係者らは、豪州で過去に立ち消えになった構想の問題点を整理した上で、事業の採算性や、航空需要との競合の問題、人口政策に合わせたインフラ整備の必要性などについて議論した。
 また、在オーストラリア日本国大使館の飯塚秋成一等書記官は、1964年の開業以来、死亡事故がゼロであるなど安全性の高さ、平均遅延時間が1分以内というダイヤの正確性、高い輸送効率、低い建設コストなど新幹線の利点を強調した。
 さらに、JR東海シドニー事務所の岡田充治所長も新幹線の安全性や信頼性をPR。高速性能と乗り心地の良さ、省エネを両立させたN700系新幹線や、最高速500キロ以上を計画している超電動リニア「SCMAGLEV」の先端技術を紹介した。
 同所長は記者の取材に対して「新幹線は当初、モータリゼーションの時代に無用の長物だとの批判もあったが、当時の指導者の決断には先見性があった。高速鉄道の推進には強いリーダーシップが必要になる」と話した。
 一方、ライバルの仏TGV関係者は「路線の総延長8,400キロと欧州各地に広がっているTGVは、高速鉄道の世界標準だ」と宣伝していた。
インフラ事業の海外展開を支援
 セミナーでは講演のほか、ジェトロ・シドニー・センターが展示ブースを設置して新幹線をアピールした。国交省とJR東海シドニー事務所、三菱電機オーストラリア、日立オーストラリア、東芝インターナショナル、凸版印刷オーストラリアが協力、パネルや映像で各社の技術を紹介した。
 24日の講演終了後、出席者を前にあいさつしたジェトロ・シドニー・センターの児山信之所長は「今回のセミナーが豪東海岸の高速鉄道実現に寄与することを願う」と語った。その後、在シドニー日本国総領事館の小原雅博総領事が日本政府を代表してスピーチを行い、「新幹線のシステムは既に台湾や中国本土で導入され、今後も多くの国で採用される見通しだ。日本の技術が豪州の鉄道の発展に少しでも貢献できれば」と述べた。
 日本政府は鉄道を含むインフラ産業の海外展開を推進している。ジェトロもインフラやプラントを手がける日本企業の海外展開を支援していることから、セミナーに参加することになった。
 児山所長は取材に対し「豪州で有望なインフラ・プラント・ビジネスとしては、鉄道のほかにも再生可能エネルギーや水事業、エコ住宅などがある。今回の高速鉄道構想のように、具体的な計画が出る前の段階で議論の中に入っていくことが重要だ。官民連携(PPP)のインフラ事業を中心に、今後も積極的に支援していきたい」と意欲を示した。
新幹線は環境負荷も低い
 豪州では80年代以来、高速鉄道の建設構想が何度か浮上しては消えているが、ここにきて推進の機運がにわかに再燃してきた。人口増加が進む東海岸の都市部では交通インフラの整備を求める声が高まっており、航空機や自動車と比較して鉄道は温室効果ガス排出量が少ないため、環境対策としても注目を集めている。
 与党労働党は8月5日、ブリスベンとメルボルンを結ぶ高速鉄道の事業化調査を年内に着手するとの選挙公約を発表した。政権を維持した場合、2,000万ドルの予算を投じ、1年半かけて実現の可能性を検討する。特にシドニー─ニューキャッスル間の地質調査やルート検討を先行させる。アンソニー・アルバニーズ連邦インフラ・交通相は、移動時間短縮と混雑緩和による生産性向上と、温室効果ガスの削減が見込めるとしている。
 また、野党の環境保護政党グリーンズも今年4月、同じルートで高速鉄道を建設する構想を発表した。航空機から高速鉄道への移行を進めることで、温室効果ガスの削減と混雑緩和が望めると主張した。
 その点、日本の新幹線は環境負荷が低いのも利点だ。ジェトロによると「1人を1キロ運ぶ場合の二酸化炭素排出量は航空機の5分の1、自動車の8分の1。同エネルギー消費量はそれぞれ4分の1、6分の1」という。
二大都市間の航空需要は世界4位
「高速鉄道はシドニー第2空港構想に代わる選択肢になり得る。解決すべき点は多いが、いつの日か実現させたい」。そう話したのは、日本の鉄道事情に詳しいウロンゴン大学のフィリップ・レアード准教授。高速鉄道の開業によって国内の空の需要が縮小すれば、シドニー空港の混雑が緩和されるとの予測だ。
 同准教授らが参画する「鉄道イノベーション共同研究(CRC)」は今年初め、高速鉄道に関する報告書を発表した。報告書は「東海岸の人口増加や混雑の拡大、環境保護意識の高まりを背景に、高速鉄道の魅力は以前と比べて飛躍的に向上した」と推進を提言している。
 アルバニーズ連邦インフラ相によると、想定ルート周辺の人口は豪全体の半分近い約1,000万人。グリーンズのボブ・ブラウン党首によると、シドニー─メルボルン間の航空需要は世界4位という。高速鉄道の潜在需要は十分にありそうだが、距離と所要時間、料金を天秤にかけて、航空機に対してどれだけ競争力を確保できるかが課題となる。
 国交省の資料によると、交通機関の利用率は東京─大阪間(553キロ)では鉄道77%、航空機19%だが、東京・広島間(894キロ)ではそれぞれ55%、42%と接近。東京─福岡間(1,175キロ)になると、9%、90%と航空機が圧倒的に多くなる。
 一方、建設ルートにもよるが、最短距離(自動車道)はシドニー─メルボルン間が893キロ、シドニー─ブリスベン間が1,027キロ。グリーンズの高速鉄道構想では、それぞれ4時間程度の所要時間を想定している。

セミナーの座長を務めたのデービッド・ジョージ代表と岡田充治所長
セミナーの座長を務めた鉄道イノベーション共同研究(CRC)のデービッド・ジョージ代表(左)と、日本の新幹線について講演したJR東海シドニー事務所の岡田充治所長
ブースに技術を展示した各社と政府機関の関係者
ブースに技術を展示した各社と政府機関の関係者。左から、渡辺健二ゼネラル・マネジャー(日立オーストラリア)、石原均社長(日立オーストラリア)、岡本吉平社長(凸版印刷)、山中晃太郎社長 (三菱電機オーストラリア)、林さゆり社長(グローバル・プロモーションズ・オーストラリア)、岡田充治所長 (JR東海)、ビル・レイドロー(東芝インターナショナル)、飯塚秋成一等書記官(在オーストラリア日本国大使館)、児山信之所長(ジェトロ・シドニー・センター)

アデレードで新自動車燃料販売開始

アデレードで新自動車燃料販売開始
アルコールと炭化水素の比率逆転
 SA州アデレードのサービス・ステーションで8月26日、新型の低温室効果ガス排出燃料の販売開始が発表された。新燃料「Bio E-Flex」は、二酸化炭素排出量の少ないエタノールが85%、ガソリンが15%という配合割合が特徴で、現在普及している混合燃料「E10」のエタノール10%、ガソリン90%という配合割合に比べて大幅にエタノールの割合が増えている。SA州政府が資金を提供し、石油会社カルテックスとGMホールデンが共同開発した。
 新燃料発表にあたって、州政府のパトリック・コンロン・エネルギー担当相は、「これで温室効果ガス削減に向けてさらに1歩前進した。温室効果ガス削減には単一の解決法はなく、あらゆる部門が力を合わせて努力し、国内技術や新案に投資して支えていかなければならない。市民には通勤に公共交通機関の利用を奨励するが、同時に最新技術を利用して温室効果ガス削減のために新型燃料を開発することも支援していく」と述べている。
 新型燃料はGMホールデンが間もなく発表するVEシリーズIIコモドアのフレックス・フューエル型式で使用できる。この燃料は海外ではE85と呼ばれており、アデレードではカルテックス系サービス・ステーション3カ所で給油できるが、2010年10月には「Bio E-Flex」の看板を掲げる30カ所、2011年には100カ所に増える予定。価格はリットルあたり通常のガソリンよりも20セント安いが、Flex-Fuel車以外には適していない。
 それ以外の新型車、一部の旧式車、SUV、軽営業車などはこれまで通りE10無鉛を使わなければならない。


「ウィキリークス」創設者に一時逮捕状
内部告発サイト「ウィキリークス」(http://wikileaks.org

「ウィキリークス」創設者に一時逮捕状
レイプの嫌疑-スウェーデン

 スウェーデンの検察当局は8月21日、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者でオーストラリア人のジュリアン・アサンジ氏(39)に対し、レイプ容疑などで逮捕状を出したが、逮捕状はその後取り下げられた。
 検察報道官は当初、「(同氏には)スウェーデンでのレイプの嫌疑が掛けられている」と述べていた。その後、検察当局は声明を発表し、「アサンジ氏に容疑はないとの結論に達した」ことを明らかにした。
 アサンジ氏は先にストックホルムで行った記者会見で、ウィキリークスが入手したアフガニスタンでの対テロ戦争に関する大量の米軍機密文書のうち、未公表の残り1万5,000点を数週間以内に公開すると発表していた。(時事)


アサヒビール、豪飲料3位を買収-272億円で
 アサヒビールは8月26日、オーストラリア飲料業界3位の「ピー・アンド・エヌ・ビバレッジズ・オーストラリア」(P&N)の発行ずみ全株式を今年11月末をめどに取得し、子会社化すると発表した。買収総額は約272億円を予定し、拡大が見込まれる豪州市場の開拓を急ぐ。アサヒは2011年7月から持ち株会社制に移行することも併せて発表。機動的な経営による成長を目指す。
 P&Nはミネラル・ウオーターや炭酸飲料などを扱い、各商品で高いシェアを持つ。アサヒは昨年、豪州飲料業界2位のシュウェップスを買収しており、将来的にはP&Nとシュウェップスを経営統合する方針。両社間で隣接している工場は統廃合し、生産や物流面の効率化を図る。
 26日会見したアサヒの泉谷直木社長は、豪州市場について「人口も増え、魅力がある」と話した。(時事)


テロ計画立ててこい-高校で過激な宿題-
 WA州の高校でこのほど、宿題で「テロ計画を立ててくる」ことを命じた教師が懲戒処分となった。宿題を出された生徒の1人は、2002年のバリ島テロ事件で親族を失っており、州教育局長が8月26日までに本人に平謝りした。
 宿題が出されたのはWA州のカルグーリー・ボールダー高校。生徒らは「無防備な豪州の街」を選び「最大限の市民を殺害して自分のメッセージを訴える」方法を考えてくるよう指示された。提出する際には犠牲者や場所、時間、使用兵器の選定理由や計画を実行した場合の人体に及ぼす影響を書かなければならない。
 しかし、生徒の帰宅後、親から抗議が殺到し、即座に撤回された。テロについて何を学んだかを生徒に問うための宿題で、学校側は「悪気はなかった」と釈明しつつも、問題の教師が「かなり経験不足」だったことは認めた。(時事)


夏時間、10月3日スタート
 NSW州で10月3日の日曜日からデーライト・セービング・タイム(夏時間=DST)がスタートする。NSW州は同日午前2時の時点で時計を1時間進めて午前3時とする。これにより、QLD州との間に1時間の時差が発生し、日本との時差は2時間になる。
 DSTは2011年4月3日の日曜日まで。


日本が連覇-豪州に大勝
2大会連続優勝を果たした女子野球日本代表

日本が連覇-豪州に大勝
女子野球W杯

 女子野球の第4回ワールドカップ(W杯)最終日は8月22日、ベネズエラのマラカイで行われ、日本は決勝でオーストラリアに13-3で大勝し、2008年の第3回(松山市)に続く2大会連続2度目の優勝を果たした。
 日本は一回、敵失に乗じて先制し、高島(平成国際大)の適時二塁打など打者一巡の猛攻で一挙9点を先取。その後も加点し、磯崎から里(ともに尚美学園大)に継投。五回コールド勝ちした。
 大会最優秀選手には、打率6割4分3厘(14打数9安打)で首位打者にもなった六角(サムライ)が選ばれた。(時事)


連携強化目指し、提案相次ぐ-ASEAN会合閉幕
 ベトナム中部のダナン市で行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)経済閣僚と日本を含む周辺国による一連の会合が8月27日、閉幕した。周辺国は、2015年発足を目指すASEAN経済共同体(AEC)との連携強化を目指し、提案を競い合い、各会合では10月下旬の首脳会合(サミット)に向けた協力が確認された。
 ASEAN経済閣僚は期間中、日中韓、インド、豪州とニュージーランド両国、ロシア、欧州連合(EU)、米国と個別会合を開催した。中国は26日の会合で、域内貿易での人民元決済の拡大を提案。各国は歓迎の意向を示したが、スリンASEAN事務局長(タイ元外相)は「人民元が信頼を得るには時間が必要だ」(AFP通信)とし、段階的な過程を踏むべきだとの認識を示した。
 また、ロシアもASEAN経済閣僚との初の会合を開催し、貿易拡大を目指すことで一致。年初にASEANとの物品に関する自由貿易協定(FTA)を発効させたインドは、投資・サービス分野を含む一層の緊密化を求め、「早期対応を期待する」(シャルマ・インド商工相)と迫った。 
 一方、日本はタイやベトナムなどメコン流域5カ国とも会合を行い、開発協力を提案。またASEANプラス6カ国の協議では、日本が主導した総額24兆8,000億円に上る「アジア総合開発計画」に承認を得て、今後、資金調達の枠組みなど具体化に向けた議論を進めていくことになった。(時事)

紙面ニュース/ニュース解説の記事

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