2014年6月 ニュース/総合

アボット政権、財政健全化へ大鉈 2014/15年度の連邦予算案発表

ニュース/総合
5月13日、2014/15年度予算案を発表したホッキー財務相(左)とコーマン予算相(Photo: AFP)

 連邦政府は5月13日、2014/15年度予算案を発表した。保守連合政権(自由党、国民党)発足以来初となった予算案は、労働党の前政権下で悪化した財政にメスを入れたことが最大の特徴。社会保障分野などでの歳出削減策とともに、新税導入による歳入増加策などを打ち出した。大胆な財政健全化策により、15/16年度からの3年間で赤字幅を最小限に削減する計画だ。

予算規模は歳入が3,858億ドル、歳出が4,125億ドル、赤字は298億ドルと国内総生産(GDP)の1.8%を占める見通し(基礎的現金収支ベース)。今後赤字幅を段階的に削減し、17/18年度には28億ドルとGDPの0.2%まで圧縮することを目指している。

 予算案のポイント
 ◇ 財政赤字はGDPの1.8%に
 ◇ 若者の失業手当・教育予算の縮小
 ◇ インフラ整備に116億ドル投入
 ◇ 年収18万ドル以上の富裕層に2%課税
 ◇ 一般医の診療費有料化(1回7ドル)
 ◇ 燃料税の実質小幅増税

主な歳出削減措置としては、公務員1万6,500人削減や政府機関の統廃合のほか、家族手当の支給条件引き上げ、若者(30歳以下)への失業手当給付の6カ月間凍結、労働党政権の教育改革の縮小、年金支給年齢の引き上げ(2023年に67歳、2035年に70歳)、特定の産業への支援策の打ち切り、公共放送ABCと同SBSの予算削減などを盛り込んだ。

ただ、アボット政権が重視する道路や鉄道、港湾などのインフラ整備には複数年度で合計116億ドルを投じる。有償育児休暇制度(敷居額10万ドル)も公約通り実施するとしている。ただ、野党の反対で同法案は現時点で成立のめどが立っていない。

一方、歳入増加策では、所得が18万ドルを超える金額の2%を3年間徴収する「臨時財政健全化税」を導入する。一般医(GP)の診察費も1回当たり7ドルと有料化し、このうち5ドルは新設の「医学研究未来基金」の財源に充当する。燃料税も物価スライド制を再導入することで歳入を増やし、道路建設財源に充てる。

財政収支の見通し

年度 12/13 13/14 14/15 15/16 16/17 17/18
基礎的現金収支(単位:10億ドル) -18.8 -49.9 -29.8 -17.1 -10.6 -2.8
対GDP比(単位:%) -1.2 -3.1 -1.8 -1 -0.6 -0.2

出典:2014/15年度連邦予算案(12/13年度は実績値、13/14、14/15、15/16年度は予想値、16/17、17/18年度は推定値)

公約違反との批判強まる

【解説】ジョー・ホッキー連邦財務相は13日夜の予算演説で「コントリビュート・アンド・ビルド(国民が寄与し、将来の国家建設に資する)の予算案だ」と述べ、「構造改革」による痛みを国民が分かち合うべきだとの考えを強調した。今後高齢化が進めば、現在の手厚い社会保障制度は持続できなくなる。財務相は「財政健全化の始まりにすぎない」として、今後も社会保障費などを抑制していく方針を示した。

大胆な財政健全化策に切り込めたのは、政権交代後初の予算案というタイミングもある。大きな失策がなければ、アボット政権は長い視点で政策課題に取り組める。しばらく選挙がないこの時期に、「小さな政府」を標ぼうする保守連合政権が厳しい歳出削減策を打ち出したのは想定内と言える。

しかし、臨時財政健全化税や燃料税増税などの歳入増加策については、「公約破り」との批判が出ている。アボット首相は昨年9月の選挙戦で「新税は導入しない」と言明したが、これらを新税や増税ではないと強弁するには無理がある。いずれも小幅で経済的な影響はほとんどないと見られる一方、診察費有料化は「病人をターゲットにしたGP税」といった指摘も出ている。

このところ支持率が低下傾向にあるアボット政権は、公約違反との批判をかわし通せるかどうか。予算案発表後に実施された主な世論調査では、いずれも2大政党別支持率で野党労働党が与党保守連合を上回った。アボット政権の政局運営は今後、厳しさを増しそうだ。


経済成長率2.5%−予算案経済見通し
インフラ整備、GDP1%押し上げ

連邦政府は5月13日、2014/15年度予算案の前提となる経済見通しを発表した。14/15年度の実質国内総生産(GDP)成長率は2.5%と13/14年度の2.75%から減速するものの、15/16年度には3%まで加速すると予想した。失業率は13/14年度の6%から14/15年度は6.25%と小幅に悪化するとしている。消費者物価指数(CPI)の上昇率は13/14年度3.25%、14/15年度2.25%、15/16年度2.25%となる見込み。

予算書の要約版は、豪州経済の現況について「過去5年間のうち4年間の経済成長率は(長期)トレンドを下回り、失業率は上昇している。鉱業部門の建設ブームの終了と、高齢化の進行、生産性の低い伸びを伴った過渡期が続いている」と説明した。その上で、経済の潜在力をフルに引き出すためには「非鉱業部門の活性化、労働意欲の促進、生産性の向上」が必要だと指摘した。今回の予算案に盛り込んだ総額116億ドルのインフラ整備計画は、連邦・州政府と民間部門の合計で1,250億ドルの投資につながり、GDPを年率で1%押し上げる効果があるとしている。

財政収支の見通し

 年度 12/13 13/14 14/15 15/16 16/17 17/18
 実質GDP成長率 2.60 2.75 2.50 3.00 3.50 3.50
 名目GDP成長率 2.50 4.00 3.00 4.75 5.00 5.00
 雇用数増加率 1.20 0.75 1.50 1.50 2.25 2.00
 失業率 5.60 6.00 6.25 6.25 6.00 5.75
 消費者物価指数上昇率 2.40 3.25 2.25 2.25 2.25 2.25

出典:2014/15年度連邦予算案経済見通し(12/13年度は実績値、13/14、14/15、15/16年度は予想値、16/17、17/18年度は推定値)


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予算案発表後の主な世論調査で支持率が急落した保守連合のアボット首相

 

アボット政権の支持率下落

予算案の緊縮策が影響か

 トニー・アボット首相の保守連合(自由党、国民党)政権の支持率が落ち込んでいる。5月13日の2014/15年度予算案発表後の主な世論調査では、いずれも野党支持率が与党を圧倒したほか、党首別の人気も野党労働党党首のビル・ショーテン氏がアボット氏を上回った。痛みを伴う緊縮型の予算案が、国民の不評を買った形だ。

民間の調査会社ニューズポールが5月16〜18日に実施した最新の世論調査によると、各党支持率は保守連合が36%と前回調査(5月2〜4日実施)比で2ポイント下落、労働党は38%と同2ポイント上昇した。左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は11%と3ポイント下落、「そのほか」は15%(1ポイント下落)だった。

実際の選挙結果により近い2大政党別支持率は、保守連合が45%と2ポイント下落した一方、労働党が55%と2ポイント上昇してリードを広げた。「どちらの党首が首相としてふさわしいか」の問いでは、アボット氏が34%(6ポイント下落)、ショーテン氏44%(6ポイント上昇)となり、ショーテン氏が初めてアボット氏を上回った。

 

ハネムーンは短命か

また、調査会社ニールセンが5月15〜17日に行った世論調査によると、各党支持率は保守連合40%(6ポイント下落)、労働党40%(5ポイント上昇)、緑の党14%(3ポイント下落)、富豪クライブ・パーマー氏の「パーマー・ユナイテッド党」(PUP)6%(2ポイント上昇)、「そのほか」6%(1ポイント上昇)となった。


2大政党別支持率は、保守連合44%(4ポイント下落)、労働党56%(4ポイント上昇)だった。「どちらの党首が首相としてふさわしいか」の設問では、ニューズポールの調査と同様にショーテン氏(51%)がアボット氏(40%)を初めて上回った。

ニールセンの世論調査専門家ジョン・スタートン氏は調査結果について、公共放送ABCで「政権の初期(約8カ月間)にここまで支持率が落ち込むのは異例。アボット政権のハネムーン(蜜月期間)は史上屈指の短命に終わるかもしれない」と分析した。

 

予算案の評価は「悪い」が過去最多


一方、ニューズポールの調査で「予算案は豪州経済にとって良い、悪いか?」を聞いた設問では、39%の回答者が「良い」(「非常に良い」と「まあまあ良い」の合計)と答えた。これに対して、48%が「悪い」(「非常に悪い」と「まあまあ悪い」の合計)と回答し、同調査結果がある1998年以来最大となった。

予算案発表後に支持率が軒並み下落したことで、アボット政権は昨年9月の発足以来最大のピンチを迎えている。予算案の緊縮策は州財政を圧迫するとして、各州の政権も保守連合・労働党ともに反発を強めている。そうした中でアボット氏は、ABCラジオに対して「保守連合の予算案は柔軟路線ではない。しかし、労働党政権が残した赤字と財政危機を制御するためには豪州にとって不可欠な予算案だ」と強調した。

豪州では過去にも政権交代直後の予算案で大胆な緊縮策を打ち出した例がある。次期選挙までまだ年月があるため、国民に不評を買う可能性のある歳出削減策が実行できるからだ。アボット氏の恩師とされるジョン・ハワード首相(当時)の保守連合政権も1996年の選挙で政権を奪回した後、同年の予算案で緊縮財政を打ち出したため支持率が低下した。しかし、その後は財政を建て直し、税制や経済、労使関係などの改革も実行、2007年の選挙で敗北するまで4期11年の長期政権を実現した。


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サメの被害が後を絶たない(Photo: Tourism Australia)

 

WA州のサメ駆除、試行が終了

172匹捕獲−環境保護派は反対

WA州政府は今年1月〜4月30日、インド洋に面した州南西部の一部の海岸でサメを退治するプログラムを試験的に実施した。同州では近年、遊泳やサーフィン中に人がサメに襲われる事故が増えている。州政府はサメの保護より市民の安全が優先されるとして試行に踏み切っていた。

対象となったのは、海水浴客などが多い州都パース市内の数カ所のビーチと、このところサーファーの被害が多発している州南西部の2つの海域。ドラム缶型の浮遊物を使った「ドラム・ライン」と呼ばれる仕掛けを沖合いに設置し、餌を付けた釣り針に掛かったサメを捕獲した。

州水産省の5月7日の発表によると、期間中に172匹のサメを捕獲した。このうち人に被害を及ぼす恐れがある体長3メートル以上の個体50匹を処分した。ただ、これまでに人を襲ったサメの大半を占めるとされる獰猛なホオジロザメは1匹も捕獲されなかった。

WA州のサメ退治事業をめぐっては環境保護勢力が強く反発していた。過激な反捕鯨活動を繰り返しているシー・シェパードが今年初めに差し止めを求める訴訟を起こしたほか、左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)や動物愛護団体なども反対していた。豪州国民は一般的に、食物連鎖の頂点に立つクジラやサメ、マグロなどの大型海洋生物の保護に熱心で、サメの中でも絶滅が危惧されている種は保護されている。このため、過度な保護策が被害の増加に結びいたとの見方もあり、駆除推進派と保護派の間で激しい論争に発展していた。

多くの市民が泳ぐビーチのすぐ沖で危険な大型の個体が捕獲され、目撃されたサメの数も前年と比べて減少するなど、州政府は一定の成果を挙げたとしている。連邦政府の承認を待って、今後3年間、夏季にサメ駆除のプログラムの本格施行を目指す方針だ。


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環境負荷の低い新型の飼料添加物で元気に育ったブラック・タイガー・プローン(ウシエビ)(Photo: CSIRO)

 

エコな配合飼料開発−養殖エビ用
環境負荷低く、生産性高い

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)はこのほど、環境負荷が低く生産性が高い養殖エビ用の飼料添加物を地元企業と共同開発した。公共放送ABCのテレビ番組が取り上げるなど、養殖漁業を変革する可能性がある新技術として注目を集めている。

新しい飼料添加物の商標名は「ノーバック」(Novacq)。これまで10年間の研究を経て昨年、飼料を製造するVIC州拠点のオーストラリア企業「リドリー・アグリプロダクツ」とともに開発に成功した。エビ養殖の餌にも通常、魚肉を加工したものが使用されるが、この商品は海洋性の微生物を原料としていて魚を一切使用しないため、漁業資源や海洋環境に打撃を与えずにエビを養殖できるのが最大の特徴だ。

オーストラリアの1人当たりのシーフード消費量は過去50年間でほぼ倍増しているが、環境保護意識の高まりを背景に持続可能な養殖物の割合が拡大している。近年では、ミナミマグロの畜養、サーモン(大西洋サケ)やバラマンディー(アカメの近似種)、キングフィッシュ(ヒラマサ)、カキ、エビなどの養殖が盛んになっている。ただ、飼料には天然の魚を大量に使用するため、結局は漁業資源の減少につながりかねない。食べ残した飼料による水質汚染や、合成添加物による健康への影響も懸念されている。

ノーバックは高いサステナビリティー(環境の持続可能性)に加えて、経済的なメリットも大きい。通常の飼料を与えたエビと比較して、成長が平均30%速い、大型化する、歩留まりが少ない、といった利点があることが確かめられている。

「消費者と自然環境、養殖業者のすべてにとってより良い商品を作ることができた。オーストラリアの養殖産業のサステナビリティーにとって画期的な業績だ」とCSIROのナイジェル・プレストン博士。原料の微生物に関する詳細は非公開でコストも不明だが、養殖池での試験を重ねてできるだけ早い段階で商業生産をスタートしたいとしている。

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