2014年3月 ニュース/コミュニティー(2)

アジア・オセアニア日系企業実態調査

2014年には改善を見込む日系企業

JETROシドニー事務所
調査部長 平木忠義

日本貿易振興機構(JETRO)は2013年10〜11月に「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」を実施いたしました。本調査は1987年からアジア・オセアニア地域における日系企業活動の実態を把握することを目的として実施しており、今回で27回目を数えます。15年の経済統合を控え一層の経済拡大が見込まれるASEAN地域と、資源投資の縮小や豪ドル高によって経済に不透明感の漂うオーストラリアの状況を本調査結果からご紹介いたします。今回の調査実施に際しましてご協力いただきました企業の皆様には、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

【アジア・オセアニア地域の概要】
2014年の新興国の景況感は大幅に改善

アジア・オセアニア地域で活動する日系企業の活動状況をみると、64.6%(前回差0.7ポイント増)の企業が2013年の営業利益を黒字と見込んでいます。また、14年の見通しでは、営業利益が「改善」するとした企業の割合が50.6%に達する一方で、「悪化」するは10.7%に大きく縮小しました。景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した割合から「悪化」した割合を引いた数値)を見ると39.9ポイントとなり、13年見込みと比べ23.9ポイントの上昇となっています。14年の営業利益の見込みが大きく改善する要因として多くの企業が「現地市場での売上増加」を選択しており、アジア地域の経済成長が現地市場を拡大させていることが伺えます。特にカンボジア、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーなどでDI値が60ポイントを上回り、新興国における市場の拡大が景況感の大幅な改善をもたらしていることがわかります。なお、経営上の問題としては「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が多く、特に中国、インドでは8割以上の企業が「従業員の賃金上昇」を経営上の課題としてとらえています。また、その他の課題としては、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」、「現地人材の能力・意識」、「従業員の質」などが上位に挙がっており、進出企業にとってはコスト面と人材面に経営上の課題があるといえます。

【在オーストラリア日系企業活動の概要】
景気減速に伴い2013年の営業利益を黒字と見込む企業は減少

さて、この一方で在オーストラリア日系企業の状況をみると、資源投資の縮小、豪ドル高や中国経済の先行き不透明感からオーストラリア経済には減速感が漂っていることを背景に在オーストラリア日系企業で13年の営業利益を「黒字」と見込む企業は前回調査73.2%から9.5ポイント縮小の63.7%となりました。この一方で、「赤字」を見込む企業の割合は9.5ポイント拡大の21.6%となりました。なお、14年の営業利益の見通しについてみると、「悪化」を見込む企業の割合が大きく縮小する一方、「改善」する企業の割合は拡大しています。

2014年の営業利益見通し改善のカギは販売効率の改善

13年、14年の営業利益見通し改善、悪化の理由についてみると、改善の理由として13年は「現地市場での売上高増加」の割合が高くなっていますが、それ以外に「その他支出(管理費、光熱費等)の削減」「人件費の削減」「調達コストの削減」を挙げています。14年を見ると「現地市場での売上高増加」の割合がさらに高くなっていますが、13年の改善理由と比較すると多くの企業が「販売効率の改善」「輸出拡大による売上増加」を見込んでいます。

次に悪化の理由をみると「現地市場での売上減少」や「人件費の上昇」を選択する企業が多くなっていますが、これらの要因は13年の営業利益見通しの悪化要因としてよりも14年の営業利益見通しの悪化要因として多くの企業が選択しています。

なお、近年の豪ドル高が企業利益を圧迫しているともいわれることから「為替変動」についてみると、改善・悪化を問わず13年は14年に比べて「為替変動」が営業利益の変動要因として大きく作用したことが分かります。回答者の傾向をみると13年の為替レートが12年に比べて軟化したことから「為替変動」を営業利益改善に作用すると回答した企業は現地調達率が高い一方で輸出比率が高く、悪化に作用すると回答した企業の多くは海外からの原材料・部品の調達率が高く、輸出比率の低い内版型企業であったことが特徴として挙げられます。

産業別にみると、製造業、非製造業ともに13年は「人件費の削減」や「調達コストの削減」を営業利益改善の理由とする企業が多く見られましたが、14年では「販売効率の改善」がこれらの割合を上回っていることが分かります。このことから、在オーストラリアの企業の多くはコスト削減が一定程度進むもしくは限界に達し、販売効率を改善することで利益を確保しようとしていることが伺えます。逆に製造業の営業利益見通しが悪化する理由として「人件費の上昇」、「その他支出(管理費、光熱費、燃料費等)」の割合が高くなっている一方、「販売価格への不十分な転嫁」が大きく割合を拡大させていることから、拡大するコストを販売価格に転嫁できず、利益を削ることによって高コストに対応するという姿もまた見ることができるのではないでしょうか。

今後の市場としてASEAN、中国に注目

在オーストラリア日系企業の輸出比率(売上高に占める輸出額の割合)をみると39.3%の企業は「現地市場向け」に事業を行っており、34.3%の企業が「輸出比率50%未満」、残りの26.4%が「輸出比率50%超」となっています。それぞれでの営業利益の見込みを見ると、輸出比率が高くなるにつれて黒字と回答する企業が少なくなっていることが分かります。では、それぞれの輸出先をみると、「輸出比率50%未満」の多くがオセアニア向けに輸出を行っている一方で、「輸出比率50%超」の多くが日本向けに輸出していることが分かります。

15年に経済統合を迎えるASEANや今後のFTA / EPAの締結などによってアジア太平洋地域における貿易はさらに活発化することが予想されます。そこで、今後1〜3年の事業/製品の輸出先として有用な国・地域を見ると、「オセアニア」、「ASEAN」、「日本」、「中国」の順となっており、今後も市場拡大が見込まれる「ASEAN」、「中国」に注目が集まっていることが分かります。また、今後の原材料・部品の調達方針としてどの国・地域からの調達率を引き上げるかについては「現地からの調達率を引き上げる」との回答が38.3%となり、ついで「ASEAN」が34.0%、「中国」が27.7%となっています。この理由を見ると、「中国」、「ASEAN」については「低コスト化」を最大の理由とする一方で、現地からの調達率の引き上げについては「品質の向上」を半数の企業が選択していることから、コストと品質のバランスによって調達先を選定していることが分かります。

以上のように、在オーストラリアの日系企業の活動状況をみると、13年の営業利益見込みについては黒字と回答する企業が縮小する一方、14年には改善を見込む企業が多くなることから、先行きには一定の明るさをみることができます。また、経営上の課題といわれる高コストについては多くの企業が「人件費の削減」や「調達コストの削減」に取り組みつつ、「販売効率の改善」にも取り組むなど、コスト削減が人件費や調達コストの削減だけでは限界に近づきつつあることを見ることができました。

今後、アジア・太平洋地域における貿易自由化などを通して経済は一層活発化することが予想され、企業は原材料・部品の調達先をASEANや中国に求める姿勢も見られるなど在オーストラリアの日系企業活動には変化がみられ始めています。

今回ご紹介させていただきました在オーストラリア日系企業活動調査結果につきましては、14年3月11日にシドニー、翌12日にメルボルンにて各商工会議所主催のセミナーにおいて改めてご紹介をさせていただきます。

表1

表2

表3

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