2016年8月 ニュース/総合

投票から8日目の7月10日、勝利を宣言したマルコム・ターンブル首相(Photo: AFP)
投票から8日目の7月10日、勝利を宣言したマルコム・ターンブル首相(Photo: AFP)

与党の再選がようやく確定

僅差で過半数獲得−連邦選挙

7月2日投票の連邦選挙は、与党保守連合(自由党、国民党)が下院で大幅に議席を減らし、与野党がわずかな議席差を争う接戦となった。マルコム・ターンブル首相(自由党党首、保守連合代表)は投票日から8日目の10日になってようやく勝利を宣言し、2期目の続投を決めた。最大野党の労働党は大きく躍進したものの、あと一歩のところで3年ぶりの政権奪回を果たせなかった(議席数は12日午後時点のオーストラリア連邦選挙管理委員会=AECの推計)。

開票が進むにつれ、一時は保守連合、労働党のいずれの勢力も過半数に届かない「ハング・パーラメント」となる可能性が浮上した。しかし、保守連合は11日夜までに、下院の全150議席の半数を1議席上回る76議席を獲得する公算が高まった。保守連合は2013年の前回選挙時と比較して14議席を減らした。一方、労働党は14議席を増やして69議席を獲得する見通しだ。

各党のすう勢の目安となる「スイング」(前回選挙比の得票の増減率=1次選好票ベース)は、保守連合がマイナス3.4%、労働党がプラス1.6%だった。

2大政党以外の少数勢力はこれまで通り5議席。環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)と、QLD州選出のボブ・カッター氏の「カッターのオーストラリア党」(KAP)がそれぞれ1議席を維持した。党首のクライブ・パーマー氏が政界を引退した「パーマー統一党」は議席を失った一方、SA州選出のニック・ゼノフォン無所属上院議員の新党「ニック・ゼノフォン・チーム」が下院で1議席を獲得した。無所属議員は2人が当選した。

ターンブル首相の賭けは失敗

保守連合は昨年9月の党首選で首相に就いたターンブル氏の下で「経済成長と雇用」を訴えたが、このところの支持率の下落傾向を挽回できなかった。労働党は得意分野の「教育と医療」を全面に押し出し、与党のメディケア(国民健康保険)政策に対するネガティブ・キャンペーンを展開した。労働党は前回選挙で大幅に議席を減らして政権の座を失ったが、3年で一定の党勢回復に成功した。

ターンブル首相は今回、年末までに実施される見通しだった3年に一度の連邦選挙を大幅に前倒しした。これに加えて、下院の全議席だけではなく上院(通常は約半数改選)の全議席も改選する「両院同時解散選挙」を29年ぶりに実施した。

両院同時解散の直接のきっかけは、建設労組の影響力を削ぐ「豪建築・建設委員会」(ABCC)の復活法案が上院で再度否決されたことだった。しかし、首相の本音では、与党が過半数に満たないねじれ状態の連邦上院で、キャスティング・ボートを握る少数勢力を一気に落選させる狙いがあったと見られる。

ところが、与党は下院で過半数ぎりぎりの辛勝となり、上院では依然として過半数に届かなかった。復活を許した右翼政党「ワン・ネーション党」などの少数勢力が、上院の主導権を握る状況に変化はない(12日午後の時点で上院の11議席が未確定)。

支持率が低下しているにもかかわらず、早期選挙と両院同時解散に打って出たのは、ターンブル首相にとって政治的な「賭け」だったが、結果的には成功しなかった。昨年首相の座から引きずり下ろしたトニー・アボット氏の支持派にはターンブル首相への不満もくすぶる。今後、与党支持率が低迷すれば、党内からターンブル首相の責任論も浮上しそうだ。

少数勢力が影響力拡大へ

ターンブル首相は11日、過半数の議席獲得が視野に入ったことを受けて勝利宣言を行ったが、「喜びたいが、当然(の勝利)とは考えていない」と自戒の念を込めた。その上で首相は「議会を機能させるには、合意できる部分は(野党と)一緒に協力することが欠かせない」として、野党の協力を得て慎重に議会運営を進める考えを示した。

これに先立って労働党のビル・ショーテン党首は「国家のために保守連合が良い仕事をすることを望む」と敗北を宣言。議会の機能不全を避けるため、可能な分野での超党派の協力を呼びかけた。その一方で同氏は「メディケア(の維持)、学校への適切な予算配分、雇用の重視については(国民の)信任を得た」と攻める姿勢も強調した。

ハング・パーラメントの下で与党単独で法案を下院で通過できない事態はかろうじて回避したものの、ターンブル首相を取り巻く状況は厳しい。与党は慣例通り議決権を持たない下院議長を出せば、議席数は実質75となる(ただし、賛成票と反対票が同数の場合は議決権を持つ)。議員の辞職や死去に伴う補選で敗北すれば、与党はたちまち過半数を割り込むことになる。

このため、与党にとってはキャスティング・ボートを握る少数勢力の協力が欠かせない。ターンブル首相は既に少数勢力と交渉を重ね、KAPのボブ・カッター氏や無所属のアンドリュー・ウィルキー氏らから信任の約束を取り付けた。ただ、これらの少数勢力はそれぞれの法案については是々非々で対応するとしており、今後、影響力を高めそうだ。

第2次ターンブル政権は、党の内外に不安を抱えながら、薄氷の上で慎重な政局運営を強いられる。

連邦下院の各党の議席数

与党 保守連合 自由党 45(-13) 76(-14)
クイーンズランド自由国民党 21(-1)
国民党 10(+1)
野党 労働党 69(+14)
その他 グリーンズ(緑の党) 1(0) 5(0)
カッターのオーストラリア党 1(0)
ニック・ゼノフォン・チーム 1(+1)
無所属 2(0)
合計 150

出典:オーストラリア連邦選挙管理委員会
カッコ内は前回選挙比の増減数

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