2017年6月 ニュース/総合

就任以来2回目となる予算案を発表したスコット・モリソン連邦財務相
就任以来2回目となる予算案を発表したスコット・モリソン連邦財務相

連邦政府、2017/18年度予算案発表

インフラ投資拡大も、4年後の黒字化目指す

連邦政府は5月9日、2017/18年度(17年7月〜18年6月)の予算案を発表した。ターンブル政権下の予算案発表は、15年9月の政権発足以来2回目。歳出面では、インフラ整備を加速すると共に初等・中等教育予算の増額、住宅購入者への支援拡大などを盛り込む一方、歳入面では大手銀行への課税強化やメディケア(国民健康保険)税率の引き上げなどの増税策を打ち出した。

歳出は4,335億ドル(前年度比6.9%増)、歳入は4,597億ドル(同4.4%増)を見込んだ。企業の利益に当たる財政収支(政府系ファンド「未来基金」の運用益を加算した「基礎的現金収支」ベース)は、294億ドルの赤字となる見通し。赤字額は前年度の376億ドルから縮小し、4年後の20/21年度には小幅ながら74億ドルの黒字化を目指す。

スコット・モリソン連邦財務相は9日夜、連邦議会での予算案演説で「公平、安全、機会という基本方針に基づいた、信頼出来る、実現可能なプランだ」と述べた。その上で同財務相は、◇経済成長とより給与の高い雇用の創出、◇基本的な生活水準の保障、◇生活コスト負担の軽減、◇持続可能な財政運営、の4点を強調した。

メディケア税引き上げ、大手銀にも増税

連邦政府は9日発表した新年度予算案で、豪州経済の競争力強化に不可欠とされる生産性向上を図るため、インフラ整備を強化する方針を鮮明にした。26年開港予定の西シドニー空港の建設では、今後4年間で53億ドルを投じる。シドニー国際空港を運営するシドニー空港会社が新空港の建設・運営を拒否したことを受けて、国営の「西シドニー空港公社」を新設する。メルボルンとブリスベンを結ぶ全長1,700キロの貨物列車の整備に、84億ドルを追加で拠出するなど道路・鉄道網の整備も加速する。

不安が高まっている電力不足を解消するため、先に発表したNSW州南東部の水力発電施設「スノーウィー・マウンテンズ・スキーム」の大規模改修も推進する。

不動産価格の高騰を背景に住宅の新規購入が難しくなっている問題では、住宅購入者への支援強化も図る。公立・私立校(小学校・高校)の予算も拡充する。

一方、増税策としては、メディケア(国民健康保険)税率を現行の2%から2.5%へ引き上げる他、大手銀行への課税を強化して年間15億ドル以上の税収増を図る。大学授業料に占める政府負担も引き下げる。初等・中等教育の予算を手厚くする一方で、大学生の負担は増やす。

国内で人材が不足している技能職を補う新しい就業ビザ「テンポラリー・スキル・ショーテージ=TSS」については、今回の予算案で外国人就業者1人当たり3,000ドルまたは5,000ドル(現行は年間1,200ドルまたは1,800ドル)を徴収する増税策を示した。今後4年間で12億ドルの歳入増を見込み、オーストラリア人の技能向上を目的とした基金の財源に充てる。

成長率は2.75%に加速へ

新年度予算案の経済見通しによると、実質国内総生産(GDP)の成長率は、2016/17年度に1.75%で底を打ち、17/18年度は2.75%、18/19年度は3%と加速する。

家計支出(個人消費)も16/17年度2.5%、17/18年度2.75%、18/19年度3%と加速する見通し。消費者物価指数は16/17年度2%、17/18年度2%、18/19年度2.25%と、豪準備銀行(RBA)がインフレ目標とする「2%台」の前半で推移する。失業率は16/17年度5.75%、17/18年度5.75%、18/19年度5.5%と大幅な改善は見込んでいない。

一方、12年以降の資源価格の急落を受けて大幅な減少を続けていた資源部門の投資は、16/17年度マイナス21%、17/18年度マイナス12%、18/19年度マイナス3%と次第に下げ幅を縮小する見通し。予算書は「個人消費と資源部門以外の事業投資が景気の再加速をけん引するだろう」と予想した。

史上最低水準の政策金利(現在1.5%)も「家計や企業の資金調達コストを抑え、成長を下支えしている」と指摘した。豪ドル安も経済に好影響を与えている。豪ドルは対米ドルで11年のピーク時と比較して約30%低い水準で推移。予算書は「このことが、資源部門への投資がけん引する成長から、より幅広い分野に根付いた成長への転換を促している」と分析した。


トランプ大統領就任後初の豪米首脳会談

珊瑚海海戦75周年、強固な同盟関係アピール

マルコム・ターンブル首相は米東部時間の5月4日(豪東部時間5日)、ニューヨーク市内でドナルド・トランプ米大統領と初の豪米首脳会談を行った。両首脳は今年初めの電話会談で難民引き渡し協定を巡り激しい口論になったと報じられ、豪米関係に隙間風が吹いたとされるが、トランプ氏は電話会談に関する報道について「フェイク・ニュース」(偽ニュース)だと一蹴した。5日付の公共放送ABC(電子版)が伝えた。

首脳会談は、ニューヨーク市内ハドソン川に浮かぶ米海軍の退役空母「イントレピッド」の艦上で行われた。トランプ氏は会談後、問題の電話会談について「君たち(報道陣)が誇張したんだ。僕たちは赤ん坊じゃない。電話会談はすばらしかった。私の印象では、あれ(報道)はいささかフェイク・ニュースだ」と述べ、首脳間の緊密な関係をアピールした。トランプ氏はその上でオーストラリアについて「地球上で最も美しい場所の1つだ。友達もたくさんいる」と述べ、早期の訪豪を実現させたい考えを示した。

両首脳はその後、同艦上で開かれた珊瑚海海戦75周年を記念する夕食会に出席した。有名プロ・ゴルフ選手のグレッグ・ノーマン氏やメディア王のルパート・マードック氏ら、オーストラリア出身の著名人や政財界の関係者が臨席した。

珊瑚海海戦は75年前の1942年5月、オーストラリア北東沖の海域で日本軍と豪米の連合軍の間で行われた史上初の空母同士の戦い。ターンブル氏はスピーチで同海戦について「勝利のために米国とオーストラリアの海軍兵と空軍兵600人以上が命を落とした。我々の自由は、敵(日本軍)と勇敢に戦った彼らによってもたらされたものだ」と語り、豪米同盟の力強い絆を強調した。

トランプ氏は、中東での豪国防軍の貢献に謝意を示した上で、「歴史と全能の神への信心を共有する2つの国(豪米)を愛している。旧交を温め、繁栄と恒久的な平和のために、末永い協力関係を誓う」と演説した。

トランプ氏は同日、首都ワシントンの下院議会で選挙公約の「オバマケア」(医療保険制度改革)廃止法案を小差で可決に持ち込んだ。このため、ニューヨーク入りがずれ込み、首脳会談は予定より約3時間遅れて行われた。

会談に先立ち、ターンブル氏はハリー・ハリス米太平洋軍司令官と会談し、緊迫する朝鮮半島情勢を始め安保問題について意見を交換した。ニューヨーク市警察の対テロ作戦司令部も視察した。


457ビザ、2つの新ビザに移行
発給要件を厳格化—連邦政府

連邦政府は4月18日、一時就業技能ビザ「サブクラス457」を廃止し、国内で人材が不足している技能職を補うビザ「テンポラリー・スキル・ショーテージ=TSS」を新たに導入すると発表した。マルコム・ターンブル首相は会見で「オーストラリア人の雇用と価値観を最優先する」と述べ、国益に合致した移民政策を推進すると強調した。

連邦政府は、今回の変更により一時就業ビザを短期と中期の2種類に細分化する。一時就業ビザの対象となる「職業リスト」を絞り込み、一部の情報通信(IT)技術者など200以上の職種を既に除外した。英語能力テストや無犯罪証明、現地の人材で賄えないことを証明する「労働市場テスト」などビザの発給基準をより厳しくする。

新しい一時就業ビザは2種類。①国内で人材が不足している技能を持つ外国人を対象とした最大2年間有効の短期就業ビザは、1度しか更新が出来ない。英語力はIELTSで平均5以上(1科目最低4.5以上)。②より高い技能を持つ外国人を対象とした最大4年間有効の中期就業ビザは、条件を満たせば3年後に永住ビザへの切り替えが可能。英語力はIELTSで1科目最低5以上が要求される。いずれも同じ仕事で最低2年の職務経験が必要になる。

改正の背景には、「外国人に雇用を奪われている」という批判に応えざるを得ないターンブル政権の政治的な事情がある。米国も先に就業ビザの厳格化を発表しており、オーストラリアに続いてニュージーランドも同様の政策を打ち出した。

4月18日時点で発給されている457ビザは有効だが、申請中の人は職業リストの変更などによってビザを取得出来なくなる恐れがある。同日以前に申請して発給を待っている人のうち、職業リストの変更によってビザが取得出来なくなった人は、申請料金の払い戻しを受けることが出来る。現時点で一時就業ビザを保持している人も、職種によっては更新時に影響を受ける可能性がある。

457ビザで滞在している日系企業の駐在員、現地採用者、今後現地での就職を検討している邦人は、今後も連邦政府が発表する最新情報に注意したい。影響を受ける可能性がある人は、ネットなどに拡散した噂に惑わされず、有資格の移民申請代理人の助言を参考にする必要がある。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る