2017年8月 ニュース/総合

確執が再燃する兆しを見せているマルコム・ターンブル首相(左)とトニー・アボット前首相
確執が再燃する兆しを見せているマルコム・ターンブル首相(左)とトニー・アボット前首相

与党自由党内に不協和音

アボット前首相、現政権を暗に批判

ターンブル政権の支持率が低空飛行を続ける中、与党自由党内がざわつき始めた。

公共放送ABCによると、トニー・アボット前首相は6月27日、メルボルンの民間シンクタンクの集まりで「今年は豪州にとってすばらしい年ではない」と述べ、現政権の教育政策や新しい銀行税の導入策について否定的な考えを示した。

アボット氏は26日の民放ラジオでも、クリストファー・パイン国防産業相兼院内総務の同性婚推進をめぐる発言を批判。7月1日には、シドニーで開かれた自由党保守派の集会で「次期連邦選挙で勝利出来るように、我が党を取り戻そうではないか」と述べるなど、ここにきて政権批判とも取れる発言を繰り返している。

一方、マルコム・ターンブル首相は同日、ニューズ社系新聞に寄せた投稿で「(国民は)政局や権力争いにうんざりしている。今必要なのは、建設的な人であって、破壊者ではない」と釘を刺した。ジョシュ・フライデンバーグ連邦環境相も「アボット氏の批評で得をするのは、ビル・ショーテン野党労働党党首だ」と、不快感を示した。

こうした動きを受けて、地元メディアでは「自由党内の保守派と穏健派の対立が深まっている」(ABC)との見方が広がっている。アボット氏には、2015年9月に急きょ開催された党首選でターンブル氏に敗北し、首相の座から引きずり降ろされた遺恨がある。保守強硬派のアボット氏とリベラル派のターンブル氏は、政策面でも折り合わない。

豪州の政界では、退陣した首相は政界を引退するのが慣例だが、アボット氏は「バックベンチャー」(役職の無い議員)にとどまり、次期選挙での再選にも意欲を示している。現時点では、一連の発言が直ちに倒閣運動につながると見るのは時期尚早だが、アボット氏がターンブル氏への「リベンジ」をかけて再登板を狙っているとの憶測は消えない。

「オーストラリア・ファースト」不発気味

自由党内に不協和音が出始めた背景には、国民受けを狙った政策を相次いで打ち出しているにもかかわらず、ターンブル政権への支持率が浮揚していないことがある。7月10日付の全国紙「オーストラリアン」が掲載した調査会社ニューズポールの世論調査によると、2大政党別の支持率は、保守連合(自由党、国民党)が前回6月19日掲載の調査と変わらず47%と、最大野党の労働党(同53%)を引き続き下回った。

各政党別の支持率でも、保守連合は1ポイント下落して35%となり、引き続き36%(1ポイント下落)を獲得した労働党の後塵を拝した。右派のワン・ネーション党は11%(前回と変わらず)まで支持を伸ばしている。左派の環境保護政党グリーンズ(緑の党)は10%(1ポイント上昇)、「その他の政党」は8%(1ポイント上昇)だった。

前評判の高かったターンブル氏だが、首相就任後は指導力不足が露呈した。同調査の各政党別支持率では、保守連合は昨年9月以降、40%を割り込んでいる。2大政党別支持率でも、昨年9月以来、労働党にリードを許している。

米国のトランプ政権発足など世界的な自国第一主義の流れを受け、豪州でも反イスラムを掲げるワン・ネーション党が支持を広げるなど「オーストラリア・ファースト」の世論が拡大。ターンブル政権に不満を持つ一定の保守層の受け皿になっている。

支持率低下に悩むターンブル氏は本来のリベラル色を封印して、就業ビザや市民権の規制強化など国内優先の政策を打ち出した。5月の新年度予算案では、一般国民から「儲け過ぎ」との批判のある大手銀行への新税導入を発表。6月には、エネルギーの国内供給を優先させるため、主に海外向けに生産している液化天然ガス(LNG)の輸出制限措置も決めた。

しかし、現時点では、こうしたポピュリズムとも言える政策が支持につながっていない。2019年末までに行われる見通しの次期連邦選挙(下院の全議席と上院の約半数を改選)までまだ約2年あるが、支持率低迷が長引くようだと、アボット氏を中心とした党内保守派から「ターンブル降ろし」の動きが加速する可能性も否定出来ない。

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