2015年1月 ニュース/総合

豪州経済のスローダウン鮮明に

7〜9月期GDP、0. 3%増にとどまる

23年間連続の経済成長を続けてきたオーストラリア経済が、ここにきて想定を上回るスピードで減速している可能性が出てきた。豪統計局(ABS)が2014年12月3日に発表した同年7〜9月期の国内総生産(GDP)は予想を大きく下回り、市場は「悪いサプライズ」と受け止めた。景気をテコ入れするため、中央銀行の豪準備銀(RBA)が15年初頭に一段の利下げに踏み切る可能性も浮上している。

ABSによると、7〜9月期の実質GDPは季節調整値で前期比0.3%増、前年同期比2.7%増。金融メディア大手ブルームバーグが事前に公表したエコノミストの予想の中央値である前期比0.7%増、前年同期比3.1%増を大幅に下回った。

地域別に見ると、州ごとの成長率にほぼ相当する州最終需要(ステート・ファイナル・ディマンド)は、WA州が前期比2.0%減と4期連続でマイナスとなった。QLD州1.4%減、VIC州1.6%減、SA州0.1減といずれもマイナス成長に転じた。TAS州は前期比で変わらず、プラスは10.1%増と好調な北部準州、1.3%増のNSW州、2.1%増の首都特別地域(ACT)だけだった。

事実上の景気後退が続くWA州は、オーストラリア最大の輸出商品である鉄鉱石の輸出拠点。鉄鉱石の国際的な指標価格は、主な輸出先である中国の経済成長鈍化や世界的な生産過剰を背景にリーマン・ショック後のピークの約半分まで下落していて、同州経済に深刻な影響を与えた形。マイナス成長に転落したQLD州も石炭基地で、資源価格の低下が地域経済に影を落としている可能性がある。

また、GDP統計を部門別に見ると、資源投資は前期比5.8%減、前年同期比16.3%減と減少幅が大きかった。資源価格の下落により、輸出入の儲けを示す交易条件は前期比で3.5%、前年同期比で8.9%、それぞれ悪化した。

さらに、国内で得られる所得の合計に等しい国内総所得(GDI)は前期比0.4%減と2期連続でマイナスとなった。このため主要メディアは、オーストラリア経済は「インカム・リセッション」(所得の不況)に入ったと伝えている。資源価格の下落が交易条件を悪化させ、富の海外流出につながった格好だ。

ただ、GDPの悪化を受け、為替相場は豪ドル安に振れていて、通貨高で疲弊してきた輸出産業には追い風となる可能性がある。豪ドルの対米ドル為替レートは12月3日、一時1豪ドル=83.92米ドルと4年半ぶりの安値を付けた。同レートは1豪ドル=1米ドル以上の最高値圏を維持していたが、RBAが13年に政策金利を史上最低の2.5%まで下げ、米国が14年に量的緩和の終了を決定したことから金利差が縮小し、豪ドル安が進んでいた。

なお、景気の鈍化で年初の利下げ憶測も浮上している。RBAは14年12月まで15回連続で政策金利を史上最低の2.5%に据え置いてきた。従来は15年の適切な時期に利上げに踏み切るというのが大方の予想だったが、GDPの予想外の悪化を受けて、年初にも金利を2.0%程度まで下げるのではないかとの見方が出てきた。

ジョー・ホッキー財務相は3日、GDP統計の発表を受けた会見で、景気を刺激するため「サンタのためだけではなく、国家のためにお金を支出してほしい」と呼びかけた。最大のショッピング・シーズンであるクリスマス商戦の行方は、2月3日に開かれる15年最初のRBA金融政策決定会合にも大きな影響を与えそうだ。

オーストラリアの季節調整済み実質GDPと実質GDIの伸び率(%)
年度 2012/13 2013/14 2014/15
四半期 9〜12月 1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月 4〜6月 7〜9月
実質GDP 0.5  0.3  0.7  0.4  0.8  1.0  0.5  0.3 
実質GDI 0.0  0.4  0.8  0.1  0.8  0.6  -0.3  -0.4 

(出典:ABS)



2015年8月からブリスベン−成田線に就航するカンタス航空エアバスA330の同型機

カンタス航空、羽田就航へ
日本直行便、8月から大幅増便

航空国内最大手のカンタス航空は2014年12月9日、シドニーと東京・羽田間の直行便を毎日、ブリスベンと東京・成田間の直行便を週4日、それぞれ15年8月から新たに就航させると発表した。成田便の残りの週3便は、近日中に発表するオーストラリア国内の他都市からの発着となる。

同航空の日本路線の便数は1週間当たり往復14便増え、現時点と比較して2倍となる、供給座席数は1週間当たり4,000席以上拡大する。機材は羽田便に米ボーイング747、成田便に欧州エアバス330をそれぞれ使用する。同航空は、過去1年間のオーストラリアから日本への渡航者数が17%伸びていることから、需要が見込めると判断した。

同航空のアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は声明で「羽田便は日豪経済連携協定(EPA)(の発効)を受けて需要が高まるビジネス客に特に好評を得るだろう」と述べた。シドニー−羽田便は往路、復路ともに夜出発して翌朝到着するため、出張者が時間を有効に使える運航スケジュールとなっている。

また、ブリスベン−成田直行便の就航により、QLD州を訪れる日本人観光客の増加も見込めるとしている。ブリスベン−成田便の航空券は近日中に予約を開始。15年8月1日以降の出発便を14年12月12日〜22日に予約した客には、就航記念の特別料金往復899ドルで販売する。

カンタスの増便は、オーストラリアの日系観光業界にとっても久々の明るいニュースとなった。訪日オーストラリア人のさらなる増加が見込まれるだけではなく、オーストラリアの日本人観光客市場のテコ入れも期待できそうだ。増便の動きがほかの航空大手に広がるかどうかも注目される。

オーストラリアを訪れる日本人短期渡航者数は1990年代のピーク時に年間約90万人に達したが、現在は約30万人と約3分の1まで減少した。日本では、ほかの海外観光地との競争激化やリピーターが根付かなかったことなどからオーストラリア旅行の人気が低下。定期便の撤退が相次ぎ、供給座席数の減少が需要の縮小に拍車をかけていた。



11月17日、キャンベラで豪中FTAの合意文書に署名する中国の習近平国家主席(中央左)とトニー・アボット首相(中央右)。左は中国の高虎城商務相、右はアンドリュー・ロブ連邦貿易・投資相

豪中FTA、交渉妥結
牛肉、石炭など関税撤廃

トニー・アボット首相と中国の習近平国家主席は2014年11月17日、キャンベラで行った首脳会談で、豪中自由貿易協定(FTA)の締結で基本合意した。協定発効後、中国は輸出が急増している豪州産牛肉のほか乳製品やワインなどの農産物、石炭や銅、アルミなどの鉱物資源に対する中国の関税を即時または段階的にゼロにする。連邦政府によると、対中輸出の95%の関税が撤廃され、豪州側の経済効果は協定発効後の数年間だけでも180億ドルに達する見通しだという。

豪州側にとって特に恩恵が大きいと見られるのは農産物の自由化。来年初めに発効する日豪経済連携協定(EPA)と比較してより踏み込んだ内容となっている。除外された砂糖などの業界団体は反発しているものの、関税が段階的に撤廃されることになった畜産や酪農などの生産者団体は、一様に合意を歓迎する声明を発表した。

アボット首相は17日、ニュージーランドが2008年に対中FTAを締結して以来、5億ドル以下だった中国向けの乳製品輸出額が30億ドル以上に拡大したことを例に挙げて「オーストラリアの農業にとってより良い状況になる。6年前のニュージーランドと同じ土俵に立った」と述べた。

バーナビー・ジョイス連邦農業相も同日、「ニュージーランドは乳製品(の対中輸出)で経済を再生させ、財政を改善させた」と指摘した。その上で、鉄鉱石や石炭など鉱物資源の価格が下落している中で、FTA効果で農産物の対中輸出が伸びれば、経済成長と税収増による財政を下支えするとの認識を示した。

一方、豪州は中国企業の投資規制を緩和する。豪州の外資審議委員会(FIRB)の審査が必要となる中国企業の投資額の下限を現行の2億4,800万ドルから10億8,700万ドルに引き上げる。ただ、中国政府が所有する企業の投資案件についてはこれまで通りFIRBの審査を継続する。また、医療や観光などの分野でも中国企業の進出を解禁する。

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