2015年4月 ニュース/総合


海外展開に強みを持つトール(Photo: Toll Holdings)

日本郵政の買収提案受け入れ

豪物流大手トール

豪物流大手トール(本社メルボルン、ブライアン・クルーガー社長)は2月18日、日本郵政グループの買収提案を受け入れると発表した。買収総額64億8,600万ドルは、日本企業による豪州企業の吸収・合併(M&A)としては「過去最大」(経済紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー)となる。2社の売上高を合計すると約247億米ドル(同紙)となり、世界第5位の巨大物流企業が誕生する。

日本郵政はアジア太平洋地域に広く展開するトールのネットワークを取り込むことでグローバル化を加速させるとともに、今年後半の上場に向けて収益性の強化を図る。1株当たり9.04ドルで100%取得して完全子会社化する。これは豪証券取引所(ASX)のトール株の17日の終値6.08ドルと比べ約49%高い水準。買収受け入れの発表を受けて、同社株は18日、8.95ドルまで急騰した。トールの株主総会と外資審議委員会(FIRB)の承認を待って6月上旬の取引完了を目指している。

トールはNSW州東部ニューキャッスルで1888年にアルバート・トール氏が創業した、馬車で石炭を運ぶ会社が源流。1986年に買収した前社長のポール・リトル氏の下で小規模な運送業者のM&Aを繰り返して急成長し、93年にASXに上場した。2014年6月期の売上高は88億1,100万ドル、純利益は2億9,300万ドル。従業員数は約4万人。50カ国以上の約1,200カ所に拠点を持つ。

豪州では近年、日本の飲料大手各社による豪企業の買収が相次いでいるほか、第一生命も豪保険大手を買収するなど、かつて主流だった資源部門からサービス産業へと日系企業によるM&Aの幅が広がっている。住宅や小売関連企業の直接進出も拡大している。豪経済界には、今後も金融緩和であふれたジャパン・マネーが豪州に押し寄せてくるとの観測もある。人口が縮小していく日本と比較して市場の成長余力があり、金利も比較的高い豪州への投資は日本企業にとって魅力が増している。



2月12日、シドニーで開かれた準天頂衛星システム関連の報告会で講演する日立オーストラリアの石原均社長

準天頂衛星システムとは?
 日本が独自開発を進めている複数の人工衛星を組み合わせた測位システム。カーナビなどに幅広く利用されている米国の全地球測位網(GPS)よりも格段に高い測位制度が可能になる。日本のほぼ真上から南半球のオーストラリア上空に至る8の字の「準天頂軌道」を周回する。日本の上空にとどまる時間は1機当たり8時間となっているため、24時間運用するには最低3機の衛星が必要。初号機「みちびき」を2010年に打ち上げて実証実験を行っており、18年をめどに合計4機体制によるサービス開始を計画。23年ごろには7機の運用を目指している。

日豪の通信協力で成果
準天頂衛星でトラクター自動制御

日本とオーストラリアの通信分野での協力が実を結び、日本の準天頂衛星「みちびき」をオーストラリアの農業に役立てるための実証実験で成果が出ている。日本の総務省、実証実験に参加している日立製作所、日立造船、ヤンマーなどが2月12日、シドニー市内で開いた会議でプロジェクトの成果を報告した。

日豪両政府は昨年4月、人工衛星や情報通信技術(ICT)分野での協力推進で合意した。オーストラリアの農地で行われた実証実験はその一環で、みちびきを利用して無人のトラクターを誤差がわずか5センチ以内と極めて高い精度で制御できることが確かめられた。会議では、日豪協力の概要や実証実験の結果の詳細、農業でのICT活用の可能性などについて発表があった。

準天頂衛星の本格運用が始まれば、特にオーストラリアの大規模農業では生産性の大幅な向上につながるとの期待がある。トラクターの遠隔制御だけではなく、山火事などの防災、広大な放牧地での家畜の位置把握など幅広い応用も想定している。準天頂衛星の軌道下にあるアジア諸国の農場でも利用が広がる可能性もある。

一方、日本の総務省と連邦通信省は13日、シドニーで「スマート社会構築のための日豪ICT政策対話」の第1回会合を開いた。会合は、日豪双方で携帯電話やスマートフォンの国際ローミング料金の引き下げを検討することを決めた。携帯機器を本国の契約プランのまま海外で使用した場合、特にパソコンやスマートフォンなどのデータ通信ではきわめて高額な通信料金が請求される場合があり、問題となっている。

このほか、両国は①準天頂衛星の実証実験を元に実用化やビジネス・モデルの構築に向けて引き続き協力すること、②インターネットの統治に関する国際協力、医療や介護、防災などさまざまな社会的課題の解決に向けてICT分野の協力を強化すること、などでも一致した。


カフェ立てこもり事件で報告書
容疑者への過去の対応は「妥当」

昨年12月15日にシドニー市内のカフェで銃を持った男が人質を取って立てこもり、3人が死亡した事件に関する報告書が2月22日、発表された。複数の事件で公判中だったマン・ハロン・モニス容疑者(警官突入時に射殺)に対する事件前の当局の対応に関して、連邦首相府とNSW州首相府が警察による事件捜査とは別に検証した。報告書は、容疑者がイランから亡命してから事件を起こすまでの当局の対応や法規制などを幅広く検証した上で、「入手が可能な情報に基づいて、複数の政府機関が下した判断は妥当なものだった」と結論付けた。

報告書によると、モニス容疑者は2008~09年に諜報機関の豪保安情報機構(ASIO)の内偵下にあったが、テロを起こす意思や危険な個人やグループとの接触は認められなかった。イランから1996年に入国して翌年亡命ビザを申請、04年に市民権を取得するまでASIOが複数回面談したが、国の安全保障にとって脅威だとは判断されなかった。また、元交際相手の殺人を教唆した容疑、複数の性犯罪の疑いなどで起訴されていたにもかかわらず保釈されていたが、当時の法律では保釈を差し止める十分な根拠がなかったとされた。

また、アボット首相は翌23日、一匹狼型の「国産テロ」の脅威が拡大していることを受けて対テロ戦略の強化を表明した。組織横断的な対テロ統括者を任命するほか、テロ組織に関与した二重国籍者のオーストラリア国籍を剥奪できるよう移民法の改正も目指す。

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