きな臭い東アジア2011 朝鮮半島・尖閣・日本

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きな臭い東アジア2011

朝鮮半島・尖閣・日本

文=青木公

紛争地といえば、アフガニスタン、イラク、イスラエル、パレスチナ…とアジア太平洋地域には縁遠い話だったが、2010年後半になって、朝鮮半島で砲声が響き、東シナ海・尖閣諸島では日中が紛争。日中朝がホット・ポイントとなって、黄海には、横須賀から米空母ジョージ・ワシントンが出動した。きな臭い国際関係は2011年も続く。2010年12月初め、東京大学安田講堂で、「日米欧と中国の今後」というテーマで、ネット社会になって中国は変わるのだろうか、という国際シンポジウムがあった。ロサンゼルス在住の中国系米国人の教授も4人のパネリストの1人だった。

休憩時間になって、筆者の囲りの女子学生がしゃべり始めた。耳を傾けると、中国語が飛び交っていた。講師への質問の時間となって、中国からの留学生は、「どうして中国人以上に、欧米人や日本の人は中国の政治に関心があるのでしょうか。もっと中国人の暮らし向きや文化にも、興味を持ってほしい」と詰問した。

中国人留学生の反応

中国人留学生は、「一般の中国人は、中国政府の言うことよりメディアの情報に敏感だ」「講師は中国人で新聞を読むのは20%というが、インターネットによる情報革命で、民主化は進むか」と質問。「中間層の市民が増えれば、民主主義社会になるか」とも聞いて、自国の将来を探っていた。

日本人講師は、日中関係は戦略的互恵と言うが、経済的な利益がある範囲内での付き合いだ。中国系米国人の講師は、中国の教育レベルは高くなり、今、700万人が大学卒だ。30年経てば2億人になる。中国共産党の一党独裁には不利になると予測。中国は『5%の国』といわれ、共産党首脳が、司法を越えて国をコントロールしている。政治よりも、人治の国だと特異さを指摘した。

留学生や若い世代、インターネット社会が中国を変えるのか??。興味深いシンポジウムだった。

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日本の海上保安官によって、インターネット上に流出した中国の密漁漁船の海上保安庁巡視船への衝突映像

巻き込まれる日本

エリートたちの日中論議とは違って、日々のニュースは、もっと生々しい。

沖縄・石垣市の一部である尖閣諸島で、中国の密漁漁船が、日本の海上保安庁巡視船の後尾に体当たりする映像が公開されると、中国への印象は悪くなった。南北朝鮮の海上境界付近の小島で、北朝鮮の砲撃によって民家が焼け、逃げまどう韓国人の姿は、北の金王朝の無法ぶりや、異質な国家であることを示した。北の砲撃に対して、日本の横須賀から米第7艦隊の空母部隊が、中国に面した黄海に緊急出動して、泰平ムードの日本社会と、外交音痴といわれる菅首相も緊張した。

米国頼りの韓国、日本は、60年前に朝鮮戦争があったのを思い出し、東アジアではいざとなると米国依存なのは変わっていないことを悟った。在日米軍基地は、中国にも影響力があるのがはっきりとした。また、中国が北朝鮮をコントロールできないことも分かってしまった。

とはいっても、日本は隣国、中国と付き合っていかなければならない。尖閣諸島事件をきっかけに、中国をテーマにした出版物は増え、中国特集をする雑誌も多くなった。日中双方の社会に愛国心が高まって、モヤモヤした感情が濃くなっている。

『坂の上の雲』の中国版

歳末、NHKで歴史ドラマ『坂の上の雲』が、連続放映された。司馬遼太郎の同名の原作が映像化され、日清・日露戦争で、小さな島国が大国に変わっていく過程が、巧みに描かれていた。明治政府が、先進国に追いつけ、追い抜け、という時代背景は、現代中国と共通点がある。

新興国の現代中国は、共産党王朝として、政治、軍事、経済で、60年かけて、先進国に追いつけ、追い越せと励んできた。「坂の上の雲」の中国版といえよう。

溢れる国力は、中国大陸だけでなく、海洋へ溢れ出した。「青い大陸」とも言われる東シナ海や太平洋への進出は、時の流れで、周辺には脅威と写る。日中間では尖閣事件がその現われ。日中の国内で、相手国を責めるという、ゆがんだ愛国心に火がついた。

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黄海での米韓合同軍事演習、沖縄南東での日米共同統合演習に横須賀から出動した原子力空母「ジョージ・ワシントン」

その中国は、日本やオーストラリア、ニュージーランドとは違う政治体制なので、一般的な外交、付き合い方では、理解はできない。先述の東大シンポジウムでも、欧米や日本でいうネット社会と、中国ネット社会は異なる。一党独裁下で、インターネットも操作される。北朝鮮やキューバのように情報操作がまかり通っている。中国のインターネットは、エンターテイメントのためで、ニュース・サイトは政府によってコントロールされている。しかし、国内インターネットを通して、汚職や不正、事故などは、広く中国市民に知られるようになった、という効用はある。中国共産党首脳は、民衆のチャレンジを受けるようになっている??ということが指摘された。

違和感のノーベル授賞式

中国は確かに変わりつつあるが、ノーベル平和賞受賞の民主活動家(作家)への対応は、共産党政府の国際評価を大きく引き下げてしまった。中国人作家夫妻の出国禁止だけでなく、ノルウェー政府までも非難中傷した。ノルウェー・ノーベル委員会とノルウェー政府を同一視する感覚には、どこの国の人でも首をかしげただろう。日本人科学者の2人の晴れ姿を見て、一層、中国の異質さを覚えた。

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