2人に聞いた予算案の特徴

政局展望

2014/15年度連邦政府予算案

アボット保守連合政権 初年度予算案の特徴

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー:松本直樹

 

 アボット政権としては初めての今次予算案の最大の特徴とは、同予算案が国民各層に影響を及ぼす、相当に厳しい政策内容を含むものであることだ。しかも、第1に、そもそも自由党は「安価な政府」を標榜していること、第2に、野党時代の保守連合は、労働党政権の「放漫経営」ぶり、浪費ぶりを執拗に批判してきたこと、そして第3に、保守連合が労働党政権を「重税政権」と鋭く攻撃してきたことから、財政再建は増税や新税策といった、歳入サイドの手段を主体とするものではなく、各種政策分野での構造改革を通じた、歳出の削減、抑制を主体とするものとなっている。ただ、予算案の行方には不透明感が漂っている状況である。

予算案の特徴:全方位的な歳出抑制/構造改革

今次予算案が、文字通り歳出に大鉈を振るった、ハワード第1次保守連合政権の「FY1996/97成立予算案」以降では、最も厳しいものであるのは間違いないとしても、国民生活への当面の負のインパクトは、FY96/97予算案のそれを下回るものと考えられる。その理由は、アボット保守政府がいわゆる「2期戦略」、すなわち4年間の「予算の将来見積もり」(Forward Estimates)期間(注:FY2014/15〜FY2017/18)を第1期に、そしてFY2018/19以降を第2期とした上で、第1期目にはできるだけ穏当な節減策などを選択し、大きな痛みを伴う制度改革、構造改革の実施は、第2期目としたからだ。アボット政府が「2期戦略」を採用した背景には、第1に、国内経済の先行きにやや不透明感が漂っている、第2に、労働党政権時代に確定した歳出プログラムの存在、第3に、次期連邦選挙での勝利を確実にするため、第4に、構造改革に対する国民の信託を得るため、などの事情や目的があった。

こういった諸改革を通じて政府は、FY2018/19にはアンダーライング現金ベースでの財政収支を黒字へと転換して、FY2023/24時点では黒字幅をGDPの1%程度に、また同年度には、政府純債務残高も3,890億ドル程度にまで減少するものと期待している(注:いわゆる「自然体」の状況では、同年度の政府純債務残高は、GDPの17%に相当する4,400億ドルに達するとの試算あり)。

さて、今次予算案に盛り込まれた、あるいは予算案で明らかにされた歳出削減/抑制策、そして制度/構造改革の内容を、大きく(1)保健・医療分野、(2)社会保障/福祉分野、(3)税制分野の3つに分けて見てみると、まず(1)での代表的政策が、一般開業医(GP)での受診や血液検査などに、共同拠出制度を導入するというものである。具体的には、「一括請求制度」を採用する診療所での診療などに対しても(注:同診療所で診療を受けた場合、現行では患者は一切の診療費を負担する必要がない。当然のことながら同方式は、低所得層や引退した年金生活者には極めてありがたい制度)、患者に1回の診療当たり7ドルを拠出させるというものである。

次に(2)の社会保障/福祉分野で重要なのは、家族支援制度の変更で、具体的には「家族税給付パートA」および「パートB」ともに受給要件が厳格化され、例えば後者の制度は、受給のための世帯収入の「敷居」が、15万ドルから10万ドルに引き下げられるし、また末子が6歳となった時点で、給付は打ち切られる。一方、とりわけ注目を浴びているのは、老齢年金関連の施策で、今次予算案では、2023年で67歳まで引き上げられる年金の受給開始年齢を、その後も徐々に引き上げ、35年で70歳とすること、そして、これまでは「男性フルタイム就業者の平均週給」に連動して引き上げられてきた給付額を、17年9月より、引き上げ率のより低い「物価スライド措置」(注:CPIインデクゼーション)に変更するとしている。さらに、失業手当て関連の施策も重要である。同改革は若年層をターゲットとしたもので、30歳未満の失業手当て申請者は、受給まで6カ月の待機期間が設けられ、また受給後も6カ月しか給付は受けられず、しかも受給中には、いわゆる「失業手当て受給のための就労スキーム」への参画が義務付けられる。最後に、(3)で重要なのは、高所得層だけを対象とする財政再建税の導入と、燃料物品税の増税策である。前者では、所得が年間18万ドル以上の層を対象に、18万ドル以上の所得に対して2%が追加課税される。それ以上に重要なのが後者で、燃料には1リットル当たりで38.1セントの燃料物品税が課税されているが(注:過去13年ほどにわたり定額)、今後は01年に廃棄された、燃料物品税への「物価スライド措置」が再導入される。また全国で3,000社ほどの大企業から、公的な産児有給休暇制度のための1.5%レビィーが徴収される。政府は、現行の法人税率を1.5%だけ低減することを計画しているが、大企業はこのレビィーにより減税の恩恵が相殺されることとなる。

予算案の特徴:公約違反


真価が問われるトニー・アボット首相

アボットは、昨年9月の連邦選挙の前日にテレビ番組のインタビューを受け、その中で、保守連合が勝利しても、新政権は教育や医療分野、公営ABC放送の予算カットは一切しないし、老齢年金制度にも手をつけないばかりか、財・サービス税(GST)制度の変更も、新税や増税もないなどと大言壮語していた。昨年の連邦選挙では、かなり以前から保守連合の勝利が予想されていただけに、新政権の政策上の手足を縛る上記公約など、はなはだ不要なものであった。案の定、アボットの余計な選挙公約が頚木(くびき)となって、構造改革を通じて歳出の削減や抑制を目指した今次予算案は、重大な公約違反との烙印を押されている。ただ最も物議を醸しているのは、ラッド/ギラード労働党政府の策定したゴンスキー初等・中等教育改革や、全国公立病院制度改革に絡むものだが、今次予算案で明らかにされた保守政府の姿勢、すなわち両改革ともに、連邦政府から州等政府への追加助成コミットメントはFY2017/18まで、というのは、決して公約違反ではない。これに対して、新税や増税はないとのアボットの公約は、今次予算案では明瞭に破られている。

具体的には、財政再建税と燃料物品税の増税である。とりわけ後者の違反は深刻なものである。というのも、前者はあくまで暫定的なもので、しかもわずかな数の高所得層だけを対象とするものだが、後者の「物価スライド措置」の再導入は、一時的、暫定的な税政策ではなく、構造的な制度改革と言えるものだからだ。ところがアボットは、選挙前には構造改革どころか、暫定的な増税策すら否定していたわけで、公約違反の罪はより重い。

また、低所得層を含む国民全般に影響を与えるゆえに、批判も強いばかりか、経済への影響も懸念されている。いずれにせよ、両税が賢明な政策であるか否かの議論は別にして、アボットの公約違反であるのは否定できず、したがって政治的には愚かなものであった。

確かに、政治家が公約をすべて遵守するなど不可能なことではある。しかしながら、アボットの場合には、公約遵守の問題でより厳しく判断、評価されても決して文句は言えまい。その理由は、アボット率いる野党時代の保守連合が、各種世論調査で一貫してギラード労働党政府に大幅なリードを維持し、しかも昨年の選挙で大勝を果たしたのも、アボットがギラードの炭素税問題での選挙公約違反を徹底的に攻撃し、ギラード政府のクレディビリティーを回復不能なまでに貶めたことのおかげであるからだ。

モラル的な高所に立って、ギラードは嘘つきと執拗に批判してきたアボットだけに、自身の公約違反のダメージも当然大きくなるし、大きくなってしかるべきと言えよう。アボットが公約違反問題を軽く見ることは極めて危険である。野党時代から一貫して人気のないアボットだけに、なおさらと言えよう。

予算案の特徴:政治的な狡猾さ

今次予算案は、その実際の効果はともかくとして、いくつかの点で政治的に狡猾なものであった。まず、「一括請求制度」開業医での診療等に際し、共同拠出政策を採用したことへの批判をかわすことを主目的に、受診1回当たりで7ドルのうちの5ドルを、新設する(先端)医療研究将来基金に投入するとしたことだ。これによって政府は、「アボットの公約違反」との批判を一応かわせるとともに、未来へのビジョンや長期的な戦略を持っているとも喧伝できる。一方、燃料物品税の増税と道路インフラストラクチャーとのリンケージ、すなわち運転者から追加で集めた税収入を、運転者に利益をもたらす道路整備の財源に回すことによって、政府は一般国民の反撥を和らげようとしているが、これについては特段の効果を上げるとは思えない。

言うまでもなく、道路インフラの改善が認識されたとしても、それは一部の地域に過ぎず、他方で物品税の増税は、国民の日々の生活、国民の懐具合に直接のインパクトを、しかも恒常的に与えるものだからだ。多くの国民が政府の当然の役割と見なしている公共財の整備を、わざわざ国民の負担に結びつけたことは、むしろ逆効果であったかもしれない。

上記2つのリンケージ策はともかくとして、今次予算案で最も狡猾であったのは、ゴンスキー教育改革ならびに全国公立病院改革分野での政府の決定である。上述したように、FY2017/18をもって、連邦政府の追加助成コミットメントを終了するとの決定は、公約違反に相当するものではないし、またFY2018/19以降に、連邦政府から州等政府へ交付される、教育分野や医療分野への「使途指定付き交付金」がなくなるわけでも毛頭ない。キャンセルされたのは、ゴンスキー改革やラッド/ギラード病院改革に基づき、労働党政府が約束した州等への寛大な追加助成策に過ぎず、アボット政府はその後も一定の算定方式に則り、助成を継続していくこととなる。

ところが州等政府は、何と言っても莫大な追加助成額を当てにしていたので、事前の相談もなしに連邦が一方的にキャンセルしたとして、怒りの声を上げているのだ。この決定によって、連邦は向こう10カ年の間に、教育分野で最大300億ドル、保健・医療分野では最大500億ドルと、合計では実に800億ドルもの歳出節減を達成できると期待しており、他方でアボット政府は、初等・中等教育分野や公立病院は州等政府の主管であり、予算の増加が必要なら、主管する政府が負担すべきなどと、州等政府を突き放している。

ただし、今次連邦予算案の政治的狡猾さとは、各層から批判を受けているような、連邦から州等への「コスト・シフト」の面にあるのではない。もちろん、莫大な節減額は連邦政府にとっては大きな恩恵だが、実は同施策の狡猾さとは、それが、00年7月の導入以降、長らく政治的タブーであった税率10%の財・サービス税(GST)制度の見直し、すなわちGST税率の引き上げか、課税範囲の拡大、もしくはその両方を通じたGST増税への、政治的地ならしである点にほかならない。要するに、連邦も州等政府のほとんども、GSTの増税を望んでいることから、予算案での連邦の決定は、GST増税の機運を高める、あるいはGSTの増税に関して州等政府からの支持を獲得する(注:GSTは連邦税ではあるものの、税率の変更などに関しては、その膨大な税収を全額受領する州等8政府すべての合意が必要)、それどころか、増税の言いわけを州等政府に提供するためのものとも考えられる。

今次予算案の行方

上下両院の権限がほぼ同一となっている豪州では、あらゆる法案の成立のためには、両院で可決されることが要件となる。これは、最重要議案の予算案についても同様である。ところが野党労働党やグリーンズは、今次予算案に盛り込まれたほとんどの重要政策に反対することを表明している。結局、アボット政府としては、7月からスタートする新上院に期待したいところだが、ここにも問題がある。その理由は、新上院の政党別勢力分布は、与党保守連合が33議席、野党労働党25、グリーンズ10、「その他」が8と、多数のマイナー政党/泡沫議員が存在するからだ。仮に労働党とグリーンズが新上院でも政府法案に反対した場合、法案を可決させるために政府は、「その他」8議員のうちの6人の支持を確保することが必要となる。

確かに、保守政府にとっては幸いなことに、「その他」議員には保守的な思想傾向の者が多い。しかしながら、アボット政府は、新上院下で数多くの、しかもさまざまな要求を掲げた「プレイヤー」との複雑、煩雑な個別交渉を余儀なくされることとなる。しかも政府にとっては頭の痛いことに、「その他」議員の中には、エキセントリックなパーマー率いるパーマ連合党議員が3人も含まれている。そのため、アボット政府の初年度連邦予算案の行方にも、実のところ不透明感が漂っている状況である。

2014/15年度連邦予算案の概要

EY パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括/オセアニア リーダー 菊井隆正

 

 労働党から6年ぶりに政権を奪回した、保守連合政権下初のオーストラリア連邦予算案が4月に発表された。前労働党政権から引き継いだ財政赤字の構造にメスを入れ、喫緊の課題である財政緊縮に取り組み、なおかつ景気を過度に冷え込まさないよう配慮した、全体的に釣り合いの取れた予算案となっている。

ジョー・ホッキー財務相は、2014/15年度は298億ドルの赤字(GDPの1.8%)を見込み、今後4年間で合計600億ドルの赤字を計上後、18/19年度で黒字化を確保すると発表。これは中間経済財政見通し(Mid-Year Economic and Fiscal Outlook)の1,040億ドルの赤字見通しから著しい改善だと言える。

財政規律の確保は歳入(税収)増よりも、対外援助の削減、大学教育や子どものいる家庭に対する支援の抑制や、今後10年にかけて行う教育費や医療費の抜本的な歳出削減策(800億ドル)に依存している。

今回の予算案では、最も重要な課題である税制改革に向けた施策が見られない。より長期的に安定した財政運営を可能とする効率性の高い税制を構築することが求められるが、残念ながら、その議論は政府が今年の後半に発表を予定している税制改革に関する白書が出るまで先延ばしにされ、実際の導入は次期選挙でアボット首相が再選されるという前提で2期目以降に予定している。

さらに予算案は、新インフラ・パッケージ、新医学研究未来基金(Medical Research Future Fund、MRFF)、および高等教育改革により経済成長を促進させようとしている。しかしながら、インフラへの実際の新規資金投入は116億ドルに限られ、パッケージの全体的な効果は、州政府および民間部門からの協力にかかっている。

財務相が言った通り、今回の予算案は「財政再建への最初の一歩」であるため、その善し悪しを現時点で判断するのは難しい。この予算案はまだ道半ばのものであり、続いて大胆な税制改革が求められる。以下、いくつかの主要な連邦予算案の内容について言及する。

経済

大方の予想通り、財務相は13/14年度は180億ドルの財政赤字を見込み、15/16年度までに財政均衡を図るという道筋を示した。予算案はコモディティー価格の下落と豪ドル高という問題を指摘し、今後4年間の税収見通しは600億ドル引き下げられている。

今年度の実質GDP成長率予想は2.75%で14/15年度は3%であり、歴史的低水準のインフレ率と相まって、財政黒字化には今後の世界経済の見通しに悪材料が出ないことが必要だ。

 

主要な指標

14/15年度の現金収支は、対GDP比1.8%の298億ドルの赤字となる見通しである。これは年央経済財政見通しの13/14年度499億ドルの赤字からの大幅な改善であり、14/15年度予想339億ドルからは若干の改善となる。

オーストラリアの経済成長率は若干トレンドを下回ることを前提としている。財務省は、失業率の高止まりと、特に資源セクターでの軟調な設備投資を予想している。実質GDP成長率は14/15年度に2.5%と予想され、17/18年度の3.5%へ徐々に拡大すると予想される。

輸出は14/15年度に5.5%増と予想される。15/16年度には、資源セクターの鉱業ブームが建設段階から生産段階へのシフトが続くことを受け、輸出は7%増とさらに大きな伸びが見込まれる。輸入は14/15年度に2%増、15/16年度には2.5%増が予想され、輸入額は豪ドルの変動に大きく左右される。

財務省の予想では、14/15年度および15/16年度の失業率は6.25%となり、その後は若干低下する。インフレ率は14/15年度に2.25%となり、17/18年度まで2.5%に留まると予想される。

予算案に含まれる、14/15年度から17/18年度までの4年間においての主な歳出削減の対象は、高等教育ローン・プログラムへの返済が求められる年収と物価スライド方式の変更(21億ドル)、高等教育セクターでの需要主導型制度の強化(10.7億ドル)、対外援助(70億ドル)などである。また一連の子ども給付金制度(ファミリー・タックス・ベネフィット)の改革も予算案に組み込まれた。将来見積り期間以降については、医療と教育セクターを対象に大幅な削減が行われ、今後10年間で800億ドルの歳出削減が予想される。

歳入側では、高額所得者への課税で31億ドルの税収が予想され、燃料物品税率への物価スライド方式の再導入が22億ドルの純収入を生むと予想される。これらの施策に加え、一般開業医(GP)による診察とそのほかの医療サービスにおいて自己負担が導入される。

この予算案での主な勝ち組は医学研究(MRFF200億ドル)、防衛(14億ドルの防衛支出を17/18年度から前倒し)、そしてインフラ(116億ドルのインフラ成長パッケージ)などである。

公共サービス

医療

一般開業医による診察で1回当たり12ドルの自己負担が課せられるとの発表があったが、その内訳は、実質的な自己負担額7ドルと、標準的診察でのメディケア払戻減額5ドルである。処方薬購入時における自己負担額を5ドルとする案も発表され、セーフティー・ネットの強化も行われる。

これらの施策を合計して4~5年間で48億ドルの歳出削減の達成が見込まれ、その削減分はMRFFの財源に向けられる。

公共福祉

若い家族対象

年収10万ドルから資力調査が課せられるなど、子ども給付金制度(ファミリー・タックス・ベネフィット)の受給資格が大幅に厳格化される。加えて、子どもが6歳になると家族は給付金を受け取れなくなり、既に受給している家族は2年後に給付が終了する。子ども給付金の物価スライド制も2年間凍結された。

 

年金受給者

資力調査が課され、年金受給者対象割引が削減。連邦政府は年金受給者対象割引を実施するための州への交付金を削減する。審査の基準値を再設定し、年金受給者の資産テストと収入テストのすべての基準値を17年7月1日から3年間固定する。

同年9月1日からは年金増額はインフレ率のみに連動する予定である。老齢年金の支給開始年齢を23年7月1日までに67歳に引き上げるという前政権による動きを基盤とし、現政権は老齢年金支給開始年齢を35年7月1日までに70歳に引き上げる。

インフラ

道路

予算案では、以下のインフラ・プロジェクトに約110億ドルの新規資金が割り当てられている。

● 37億ドル…17/18年度までの期間にわたる新規道路プロジェクト向け追加資金
● 20億ドル… NSW州での「WestConnex」有料道路プロジェクトへの優遇条件による貸付
● 50億ドル…資産リサイクル・イニシアチブへの割り当て(資産売却をコミットする州政府に「早い者勝ち」で提供する、新規の生産性の高いインフラ・プロジェクトへの投資資金)

道路資金を確保したことにより、メルボルンの「East-West Link」ステージ2、QLD州のトゥーウンバ・バイパス、WA州のパース「Freight Link」という3件の主要プロジェクトが確約された。これらのプロジェクトは、州政府との共同出資となる可能性が高く、重要な点として民間部門からの出資も期待される。パース「Freight Link」は、WA州で初の民間出資を伴う道路プロジェクトとなる。産業界は、州政府がこれらプロジェクトをいつ民間に開放するかの指針を求めるだろう。

連邦政府は「WestConnex」有料道路プロジェクトの「M5 East Stage」への優遇条件による貸付を確約したことによって、新方式による交通プロジェクトの加速化および新参加形態を導入する意欲を示した。これは、民間資金導入を伴う可能性が高く、オーストラリアでの新たなインフラ資金調達モデルとなる。

新規資金ではないが、予定されているバジェリーズ・クリークのシドニー第2空港開発を支援する道路プロジェクトに、連邦政府は29億ドルを割り当て、このNSW州の重要な交通インフラ計画の進展へのコミットメントを表明した。

またインフラ成長パッケージ(Infrastructure Growth Package)の一部として、予算案は資産リサイクル・イニシアチブ(Asset Recycling Initiative、ARI)を導入する。これは、州政府が資産を売却し、その売却収入を新たな生産性の高い経済インフラに再投資するインセンティブを提供するものである。

ARIの上限額は50億ドルであり、18/19年度末までの期間限定の施策である。また、資産売却価格の15%に相当する奨励金の支払いを受けられるのは、連邦政府が16年6月30日までに承認する資産売却・再投資プログラムに限定される。

企業

法人税率引き下げ

政府は従来の発表通り、法人税率の28.5%への引き下げを15年7月1日以降の課税年度に適用する計画のようである。予算案で明確に述べられているわけではないが、研究開発費にかかる税額控除調整の文脈でこの減税について言及されている。

財務相は予算演説で、政府は有給の育児休暇を15年7月1日から導入する意図があると発表したものの、1.5%の有給育児休暇税も同日から開始するという前回の提案については、何も詳細を発表しなかった。これらの措置に関しては政府の税制改革案の一環として年内に発表されると見られる。

 

資源関連会社に影響する変更

政府は、特に資源セクターの納税者に関連するいくつかの措置を発表した。

● 権益持分調整取引…政府は、金属鉱物資源産業や石油産業における合弁パートナー間における権益持分調整取引での税務上の取り扱いを明確化し、13年5月14日以降に適用する。これにより、鉱業・石油プロジェクトの効率的開発の税務面における障害が取り除かれる。
● 探査開発奨励制度(EDI)…政府は、選挙の公約であったEDIの導入を確認した。14/15年度は2,500万ドル、15/16年度は3,500万ドル、16/17年度は4,000万ドルと、3年にわたり総額1億ドルのEDIが支払われる。
● Division 855改正の延期…係争中の訴訟があるため、政府は前政権が発表した非居住者のキャピタル・ゲイン税(CGT)主要資産テスト改正を延期した。この改正案では、採掘、採石、探査の情報やのれんも関連する鉱業権とともに、資産評価の対象となる。

 

連結納税の「抜け穴」とMECレビュー

連結納税制度におけるMECグループ規定(豪州における外資の複数の姉妹会社およびその子会社により組成される連結納税グループ)の引き締め策として、以前発表されていた数項目については改正を13年5月14日から遡及適用を確定。またMECグループ規定のさらなる見直しに先駆けMECグループ・レビュー報告書を発表し、14年7月1日以降に適用の可能性のある改正内容について今後協議に入る。今までMECグループ規定の特性上存在していた税務上のメリットが今後失われる可能性があり、MECグループを採用している企業グループは今後注意が必要だ。

 

非居住者のCGT制度保全措置(Integrity measures)

政府は、先に発表していたオーストラリアの非居住者CGT税制における主要資産テスト見直しについて詳細を検討する予定である。この措置は、主要資産テストが、連結課税グループ・メンバー間に存在する課税対象であるオーストラリア不動産以外の資産によって希薄化されないようにするもので、13年5月14日から遡及的に適用する。

法人による資産の二重計上を防ぐため、新たな措置は、非居住者が連結納税グループについて保有する持分だけでなく、非連結納税グループについて保有する持分にも適用される。非居住者が非連結納税グループに保有する持分に関しては、予算案発表日の夜以降に発生したCGTイベントに改正案が適用される。

資源関連会社の項で述べたように、政府は非居住者のCGT主要資産テストの改正案の導入を、現在係争中の訴訟が決着するまで延期することにした。この改正案では、採掘、採石、探査の情報やのれん代も、それらに関する鉱業権とともに資産評価の対象となる。

 

雇用主

雇用主は以下のような税率変化の影響を受けることになる。

14年7月1日から、年金拠出率は現行の9.25%から9.5%に引き上げられる。年金拠出率は最終的に12%まで引き上げられることが提案されているが、現在は18年7月1日から毎年0.5%ずつ引き上げられることになっている。

フリンジ・ベネフィット税(FBT)率は15年4月1日に現行の47%から49%に引き上げられるが、適用期間は17年3月31日までである。

 

研究開発費税額控除率は減少

14年7月1日以降、政府は研究開発費の税額控除率を以下のように1.5%引き下げると発表した。

● 年間総売上高が2,000万ドル未満の企業には43.5%の還付型税額控除
● 年間総売上高が2,000万ドルを超える企業には38.5%の還付不能型税額控除

税額控除率の引き下げは、将来予定されている法人税率引き下げを踏まえたものであるが、有効となるのは15年7月1日以降である。したがって、企業は14/15年度については研究開発費税額控除メリットの実質的な減少を実感するであろう。

 

燃料税

政府は13年ぶりに、航空燃料以外のすべての燃料に対する燃料税に対し、半年毎のインフレ上昇率調整などを再開する計画だ。インフレ上昇率調整は14年8月1日から開始する。インフレ上昇率調整により、公道を走る小型乗用車の燃料コストは増え続けるだろう。

個人

予算均衡化税(時限立法)

高額所得者は、また予算均衡のための負担を負うことになる。予想通り、課税所得が18万ドルを超える部分への2%の課税が14年7月1日から3年間適用される。既に立法化されているメディケア・レビーの2%への引き上げと合わせ、14年7月1日から高額所得者の最大限界税率は49%となる。

15年4月1日からのFBT税率の2%引き上げと合わせ、この発表によって税務プラニングへの関心が再び高まると思われる。
 詳細は下表を参照。

 課税所得  税率(2013/14)  税率(2014/15)
 0-$18,200  なし  なし
 $18,201-$37,000  $18,200を超える部分につき$1当たり
 19セント
 $18,200を超える部分につき$1当たり
 19セント
 $37,001-$80,000  $3,572+$37,000を超える部分につき
 $1当たり32.5セント
 $3,572+$37,000を超える部分につき
 $1当たり32.5セント
 $80,001-$180,000  $17,547+$80,000を超える部分につき
 $1当たり37セント
 $17,547+$80,000を超える部分につき
 $1当たり37セント
 $180,001以上  $54,547+$180,000を超える部分につき
 $1当たり45セント
 $54,547+ $180,000を超える部分につき
 $1当たり47セント

※上記の税率にはメディケア・レビー(13/14年度は1.5%、14年7月1日以降2%)は含まれていない
※本文中のすべての通貨は豪ドル

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