アジア・カップ2015直前特集

アジアカップがいよいよというところに迫っている。前回優勝の日本、開催国の豪州を含む16カ国が“アジア王者”の座を争うアジア最大級のスポーツ・イベント。23日間に渡る熱戦に備え、我らが日本代表と大会の観戦のポイントなどを、本紙連載コラムでお馴染みの本紙特約記者の植松久隆が解説する。文・植松久隆(ライター/本紙特約記者)

豪州に乗り込む23名のサムライ


本田圭佑(ACミラン)


岡崎慎司(マインツ)

アジア・カップは、もうすぐそこまで来ている。2014年12月15日には、ハビエル・アギーレ監督がアジア・カップに臨む日本代表メンバー23人を発表。Jリーグ3冠に大きく貢献して待望論が上がっていた宇佐美貴史(G大阪)、貴重なユーティリティとして選出が予想された細貝萌(ヘルタ・ベルリン)の落選がある程度の驚きを持って迎えられたが、それ以外に特に大きな波乱は起こらなかった。同月9日に既に発表されていた46人の予備登録メンバーから2倍の競争率を勝ち抜いた顔ぶれの中に、ファンやメディアが期待する“サプライズ”はなかった。

アギーレ監督は、アジア・カップに向けて非常に大きな意味を持つ11月のキリン・チャレンジカップに臨む代表チームに、遠藤保仁(G大阪)、長谷部誠(フランクフルト)、今野泰幸(G大阪)など前体制の中心選手だったベテランを復帰させた。これは、アジア・カップやW杯のような大きな大会の戦い方を熟知する彼らにある程度「依存」することで、大目標のアジア・カップで何とか好成績を残そうとの意図が透けて見える、アギーレ監督のより現実的なアプローチへの“転向”と言える。

すると、監督の意図を汲んだかのように遠藤、長谷部はホンジュラス戦、今野は豪州戦できちんとした仕事で存在感を見せ、大いにアピールしてみせた。そして、3人共に監督にその実力を納得させたうえでアジア・カップの登録メンバーに名を連ねた。彼ら復帰を果たしたベテランに、本田圭佑(ACミラン)や岡崎慎司(マインツ)のような替えの利かない主力が順当に選出されることを考えれば、チームの骨格は発表前からある程度はハッキリと見えていた。流動的なのは、第3のGKを入れても5、6人程度。それらの人選を監督になりきって考えたならば、15日にアギーレ監督が発表した23人に大きなサプライズがないのも納得できるだろう。

渦中のアギーレ監督 最悪、解任も


オーストラリア・チーム


ホーム開催の利点を生かせるか

日本代表は、まさかの事態で大きな不安を抱えたまま大会に臨まなければいけなくなった。16日、海を越えてスペインから伝わってきたニュースで、アギーレ監督自身の身に降りかかった“八百長疑惑”に大きな動きが見られた。アギーレ監督を含む41人が、11年5月の試合に絡む“八百長”に関与したとして、スペイン検察当局に告発されたのだ。

今後の捜査次第では起訴、召喚ということも考えられる状況下、チーム全体の士気にも影響することを考えると、最悪、大会前までに解任すら取り沙汰される事態になった。そこまでは行かずとも、このアジア・カップは代行監督で臨むことも充分に考えられる非常事態。まさに、予断を許さない状況だ。

アギーレ監督本人は、かねてから重ねて疑惑を否定してきており、15日の記者会見では「競技に集中したい」と、アジア・カップにフォーカスすることを明言したばかりだった。しかし、実際の起訴まで発展、召喚を受けるような事態に至るようなことがあれば、解任も現実的な選択肢になってくる中で、今、日本サッカー協会の危機管理能力が問われている。

監督の周辺動向がどのように展開しても、アジア・カップは開幕する。そして、誰が日本代表を指揮するかはっきりしていなくても、12日のニューキャッスルでのパレスチナ戦で日本代表は初戦を戦うというスケジュールに変更はない。

このような事態に至っても、監督以外のスタッフと選手は粛々と準備を続けなければならない。何があっても、日本代表の停滞だけは許されないからだ。チーム周辺の喧騒はさておき、日本代表がアジアで実力と実績で抜けた存在であることに変わりはない。アジア王者として大会に臨む日本は、出場するからには無様な姿だけは見せられない。他国に目標とされる厳しい立場に立たされるが、慌てずにいかに自分たちのサッカーを展開して勝ち進んでいくかにフォーカスする必要がある。

最大の天王山は、準決勝

日本代表は、年明け早々の1月2日に豪州入りする。到着後、すぐに今大会期間中の拠点に定めたNSW州のセスノックに入る。4日には公開でオセアニア代表としてクラブW杯を戦ったオークランド・シティと練習試合を行うなどして、初戦(12日)のパレスチナ戦(ニューキャッスル)に備える。パレスチナ戦の後は、ブリスベンでのイラク戦(16日)を経て、メルボルンに移動してからヨルダン戦(20日)に臨むというのが日本のグループ・リーグのスケジュール。

連覇を狙う日本は、当然ながらグループ・リーグ通過はマスト。監督を巡っての騒動の余波はあれども、このグループ・リーグでもたついているわけにはいかない。“横綱相撲”で勝ち点を積み上げ、堂々の1位通過で決勝トーナメントに駒を進めたい。グループ・リーグを1位通過すると準々決勝はシドニー、2位通過の場合はキャンベラで戦う。相手は、それぞれグループC(イラン、UAE、カタール、バーレーン)の2位、1位で、いずれも中東の曲者。日本相手に守備に多く人数を掛けて、カウンターに活路を見い出す戦法で臨んでくるだろうが、日本もここは自慢の攻撃陣で相手のゴールをこじ開けて勝たねばならない。

準々決勝の大きな山を越えると、さらなる強敵が「打倒日本」に腕を撫(ぶ)しながら待ち構える。その相手は、グループAとBの上位2カ国によって戦われる準々決勝の勝者。グループAには、地元の豪州、日本の仇敵韓国。グループBにも、アギーレ監督がライバルとして名前をあげたウズベキスタン、ほかにも中国やサウジアラビアなどが控えるが、どこをとっても楽な相手はいない。当然、この準決勝が一番の天王山になる。どの国が上がってきても厳しい戦いになるが、どうせならば、ここで韓国を破っておきたい。最大のライバルと戦わずにタイトルを防衛するのではなく、力の差を見せて踏み越えて勝ち進む——それこそが、アジア王者にふさわしい勝ち上がり方ではないだろうか。

決勝での“日豪再戦”、実現なるか


韓国チーム


日本チームの強敵とささやかれる韓国

そして、超満員のスタジアム・オーストラリアで、最大のライバル豪州と前回大会の決勝の再戦となる日豪戦で雌雄を決する——これが、豪州での今大会を現地で目撃する在豪邦人にとっての最善のシナリオ。そのサッカルーズは、アンジ・ポスタコグルー監督の下で不本意な成績が続き、11月にFIFAランキングが過去最低の102位まで落ちるなど低迷している。成績は振るわないが、今でも実力的にアジア有数の強豪であることは間違いない。11月18日の日豪戦(@大阪・長居)では、試合前半は日本と互角以上に渡り合うなど、復活気配は濃厚で、日本代表も「豪州は手ごわい」と感じたはず。

ホームの大観衆が見守る中で「勝ちたい、勝たねばならない」という強いモチベーションで臨んでくる豪州をねじ伏せての連覇、そして5回目の戴冠。幾多の試練を乗り越えて、日本代表のキャプテンの長谷部誠が頭上にアジア・カップ・トロフィー高々と掲げるその瞬間は、日本が紛れもなくアジア・サッカーの覇者であることを世界中に知らしめる瞬間となる。

チームに吹いた思わぬ逆風の中、強敵を1つひとつ乗り越えて達成する優勝。それは、過去4回の優勝のどれとも違う味わいを持つものになるだろう。1カ月に渡る大会を終えた後に、“日本代表・アジア・カップ熱戦譜”に、また熱い熱い1ページが書き加えられることを1ファンとして待ち望むことにしたい。

 

日本代表のアジアカップ日程

1月2日 豪州到着、セスノックで合宿開始(予定)
1月4日 練習試合 オークランド・シティ戦(セスノック/一般公開)
1月12日 対 パレスチナ(ニューキャッスル)
1月16日 対 イラク(ブリスベン)
1月20日 対 ヨルダン(メルボルン)
1月23日 準々決勝(キャンベラ/シドニー)
1月26日、27日 準決勝(シドニー/ニューカッスル)
1月31日 決勝(シドニー)

※準々決勝以降は、予選通過の場合

 

日本代表メンバー

監督  ハビエル・アギーレ FW  豊田陽平 DF  長友佑都
GK  川島永嗣  岡崎慎司  森重真人
 東口順昭 MF  遠藤保仁  太田宏介
 西川周作  今野泰幸  植田直通
FW  本田圭佑  長谷部誠  吉田麻也
 小林悠  香川真司  塩谷司
 乾貴士  清武弘嗣  酒井高徳
 武藤嘉紀  柴崎岳  昌子源

 

日本の気鋭サッカー・ライターに問う! 宇都宮徹壱、清水英斗が見るアジア・カップ2015

日本の気鋭のサッカー・ライター2名を直撃し、アジア・カップについての一問一答形式で意見をうかがった。
①ズバリ、優勝は? ②日本のグループ・リーグの成績は? ③日本代表のキーマンとその理由 ④日本以外に注目する国とその理由 ⑤豪州でのアジア・カップに期待すること/または豪州開催の意義。

①もちろん日本。②2勝1分けで1位通過。③本田圭佑。良くも悪くも「彼ありき」なのが今の日本。④豪州。世代交代したチームが開催国としてどこまで力を発揮することができるかに注目したい。⑤ホスト国の人々の寛容さ。シドニーで痛ましい事件が起きたが、アジア・カップでは中東のチームも多数出場するだけに、寛容さをもって彼らを迎えてほしい。

宇都宮徹壱(うつのみや てついち):写真家/ノン・フィクション・ライター
97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』で第20回ミズノ・スポーツ・ライター賞最優秀賞を受賞。最新刊は『フットボール百景』。

①日本。②3勝で1位通過。③本田圭佑。現代表では、本人が「ものさしを変えた」と語るフィニッシャーとして右ウイングに入る。本田がその高い決定力で日本に足りないフィニッシュ能力を補うことで、チームのバランスは向上した。④豪州。2014年11月の日豪戦で近代的なパス・サッカーに覚醒しつつある印象を受けた。しかし、近代的ながら要所で“昔のオージー・サッカー”が姿を現すようなプランBが打倒日本には必要。そうなれば、日本にとっては厄介な相手になる。⑤米国や日本など、W杯開催をきっかけにサッカー熱が広がった国は多い。この国も同じ道を歩むために、ホスピタリティ、運営能力、スタジアムの機能性などW杯開催国にふさわしいことを今大会でアピールするべき。

清水英斗(しみず ひでと):サッカー・ライター
プレーヤー目線で試合を切り取るサッカー・ライターとして、コアなファンの熱い支持を受ける。著書に「あなたのサッカー観戦力がグンと高まる本」「サッカー守備 DF&GK練習メニュー100」など。

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