【新連載】ラグビー五郎丸歩、世界への挑戦 – ブリスベンから現地レポート

【新連載】ブリスベンから現地レポート

ラグビー五郎丸歩、世界への挑戦

Photo: Nino Lo Giudice
Photo: Nino Lo Giudice

第1回:五郎丸、来豪。SRデビュー戦までの歩み

今や、日本で知る人がいないほどの知名度を誇る男が、豪州にやって来た。ブリスベンに本拠を構えるラグビー・スーパー・リーグ(SR)のクイーンズランド・レッズ(以下レッズ)に入団した五郎丸歩(29歳)の6カ月の挑戦の軌跡――。ブリスベン在住のライター植松久隆が、日本のメディアとは異なる現地在住者の目線も加えてレポートしていく。その第1弾は、その序章ともいえる開幕戦までの歩みを振り返る。取材・文・写真=植松久隆(本紙特約記者)

あの“奇跡”のワールドカップ(W杯)での南アフリカ戦から5カ月。その歴史的勝利の立役者の1人、五郎丸歩が豪州の地に降り立った。

W杯後の五郎丸フィーバーの喧騒は、ここで字幅を割かずとも、当地の皆さんの耳にも届いているはず。その実力やW杯での活躍もさることながら、精悍な顔立ち、ユニークなルーティン、五郎丸という珍しい姓、さまざまな要素が相まって五郎丸は、一躍、時の人となった。

その彼が次なる挑戦の舞台として選んだのが、世界ラグビーの最高峰スーパー・リーグ(SR)。だからこそ、ブリスベンに本拠地を置くレッズからのオファーを彼が断わる理由は無かった。この移籍の実現には、日豪をラグビーでつなぐエディー・ジョーンズ前日本代表HCの力添えがあった。レッズは、バックスに大きな不安を抱えるチームの来るべきシーズンの戦力補強の目玉として、W杯で大活躍を見せた五郎丸に白羽の矢を立てた。いわば、相思相愛での入団で桜のジャージの15番はレッズの赤いジャージを身に纏うことに決まった。

当然、レッズは五郎丸人気にあやかってマーケティング的妙味も追う。実際に彼らが受けたインパクトは、予想をはるかに上回っていた。14日に行われたファン・デーでレッズ関係者が目にしたのは、ポジティブな「想定外」。五郎丸グッズが間に合わなかったにも関わらず、ジャージ、キャップといったグッズが飛ぶように売れた。今までには見られない光景に、彼らは“五郎丸フィーバー”を実感したのだった。

ここからは、到着後の五郎丸の動向を時間を追ってのドキュメント形式で振り返る。

日本出発からデビュー戦まで

ちびっ子ファンの突撃インタビューにも真摯に対応!?
ちびっ子ファンの突撃インタビューにも真摯に対応!?

日本代表ジャージ姿のテディベアを持った渋谷桃那さんとツーショットに収まる五郎丸(Photo: Nino Lo Giudice)

日本代表ジャージ姿のテディベアを持った渋谷桃那さんとツーショットに収まる五郎丸(Photo: Nino Lo Giudice)

ずらりと並んだ取材陣をぐるりとファンが囲んだ(Photo: Nino Lo Giudice)

ずらりと並んだ取材陣をぐるりとファンが囲んだ(Photo: Nino Lo Giudice)

全体練習に初参加時の五郎丸。程よい緊張感を見せながら入念なウォームアップで汗を流した

全体練習に初参加時の五郎丸。程よい緊張感を見せながら入念なウォームアップで汗を流した

■2月1日(月)
 新入団選手の扱いとしては異例の「五郎丸メンバーシップ」の販売をレッズが発表。会員になると「GOROMARU 15」と書かれた特製キャップ、バックパックなどの特典に加え、五郎丸からのメッセージが同封されたメンバー・カードが発行される。チームの広報担当によると「引き合いは上々」とのこと。詳細は、レッズのメンバーシップ専用ページ(Web: www.redsmembership.com.au)で。

■2月5日(金)
 いよいよ、ブリスベンに向け出発。成田空港で記者会見。報道陣からの「ブリスベンで何をしたいか」という問いには、「遊びに行くわけではない。練習します」とキッパリ。

■2月6日(土)
 早朝、ブリスベン空港に到着。40人ほどの日系のファンが、母国の英雄を待ち構える。いったん別の出口から出たものの、ファンが待っていた乗降口まで戻ってファン対応。機内で着替えたレッズの公式ポロシャツ姿を初めて披露した。
 夕刻、ブリスベン近郊のバリモア・スタジアム。早朝の到着にも関わらず、プレシーズン・マッチの会場で行われた邦人団体や商工会関係者とのレセプションに出席。疲れを見せずに、出席者との写真撮影やサインに応じた。その後、試合を終えたチームメイトとの顔合わせも行った。

■2月8日(月)
 レッズの五郎丸としての入団会見。会見には、日豪のメディアがずらり。「家族との時間もしっかり確保できるし、最初に海外に出たのがブリスベンだったこともあって(レッズ入団を)決めた」と入団の経緯を話した。その後、予定されていた全体練習に初参加。チームメイトとも談笑しながらリラックスした様子で汗を流す。心配されたケガの具合も悪くない様子。

■2月10日(水)
 12日のプレシーズン・マッチのメンバー発表。サブに名前が載った五郎丸。その出場を「20~30分ほど試したい」とグラアム監督が確約。

■2月12日(金)
 ブランビーズとのプレシーズン・マッチ。会場には、多くの日本人の姿が見えた。試合残り10分、五郎丸、豪州での実戦デビュー。交代を告げる場内アナウンスには、この日一番の歓声が上がる。短い時間ながら、鋭いタックルなど守備で貢献。試合終了直前の味方のトライで、ど真ん中のコンバージョン・ゴールをお馴染みの“五郎丸ポーズ”無しで決める。
「課題もないくらい、短い時間だった」というデビュー戦の試合後には、ピッチが解放されて至近距離でのファン・サービス。他の選手の後日談によると、この試合の後、選手みんな揃ってスタジアムでBBQを楽しみ、「Goroも楽しんでたよ」とのこと。

■2月14日(日)
 ファン感謝デー。開門の前から長蛇の列ができる。開門直後、日本人が殺到したのは五郎丸が店頭に立ったグッズ売り場。同僚のツイ・ヘンドリック選手が「今日は“五郎丸デー”だね」と言うように、バリモア・スタジアムに日本の“五郎丸フィーバー”の賑わいが再現された。

■2月15日(月)
 SRシーズン終了後のフランスのトゥーロンへの移籍の報道が流れる。レッズ広報は「報道は事実でない」と完全否定。

■2月18日(木)
 ブリスベン中心部でのレッズ仕様の新しいフェリーのお披露目イベントに参加。偶然、居合わせた日本人は予期せぬ五郎丸の登場に大騒ぎ。
 試乗した船上ではリラックスした表情で流れ行く景色を眺めた。報道陣からの仏移籍に関する質問には、「今はSRに集中するだけ」とキッパリ。

■2月27日(土)
 五郎丸、アウェーのワラタス戦でSRデビュー。前半26分出場で5得点。チームは10-30で敗れたが、試合後の会見でSRデビューは「夢の世界」と語った。

■3月5日(土)
 ホーム開幕戦でFBとして先発出場。フル出場で2本のPGを決めて6得点も、チームは6-22で開幕2連敗。

■3月7日(月)
 開幕2連敗でリチャード・グレアム監督が電撃解任の憂き目に。

当稿を読者の皆さんが手に取るころには、既に開幕戦は終わっている。五郎丸は期待通りの活躍でのSRデビューを果たしのか。その続きは、本紙のウェブ記事でご確認いただきたい。弊紙では、今後も五郎丸の豪州での挑戦をコミュニティー紙ならではの切り口でカバーしていく。

最後に1つだけ。いくら五郎丸が“時の人”であろうとも、彼のSR挑戦は、自らの選手生命をかけての挑戦だ。そこは、最大限、リスペクトする必要がある。彼はアスリートであってセレブリティーではない。プライベートを邪魔してまでもサインや写真をねだるのは、彼のためにはならない。彼の6カ月の豪州滞在がポジティブなものに終わることを願う。蛇足めいてはいるが、そんな思いを書き足しておきたい。(文中敬称略)

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