最新WSW小野の戦い

WSW、おとぎ話の最終章へ

佳境を迎えたAリーグ13/14シーズン&ACL2014

 小野伸二のウェスタンシドニー・ワンダラーズ(WSW)の今季がいよいよ佳境に入りつつある。残りのリーグ戦、そしてファイナル・シリーズ、さらにはACLを戦うWSWと小野の熱い4月をプレビューする。
文=植松久隆(ライター/本紙特約記者) 写真=Richard Luan

2位死守でファイナルへ

3月22日、ブリスベンのサンコープ・スタジアム。試合終了間際のロスタイムに、ブリスベン・ロアMFブラッタンのミドルシュートがメルボルン・ビクトリーのゴールに刺さり、ロアが劇的な勝利を果たした瞬間、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)の2年連続「レギュラー・シーズン優勝」の夢は潰えた。

しかし、現行のファイナル・シリーズのレギュレーションは、上位2チームがホームでのセミ・ファイナルから参戦できるよう優遇されるシステム(別表参照)になっている。2位に入った際の1位チームとのアドバンテージの差異は、対戦相手が「3位〜6位の勝者」ではなく「4位・5位の勝者」になるのと、グランド・ファイナルの会場がアウェーになるくらいで、大差はない。

シーズンの佳境を迎えた第24節、WSWはブリスベンがシーズン優勝を決めたことを知ってからの試合も、ホームでパース・グローリーを圧倒。いったん3位に転落していた順位を今季の定位置とも言える2位に戻した(3月23日現在)。ファイナル制覇が大目標である以上、昨季すでに獲得済みのシーズン優勝のタイトルを逃したことのダメージは、パース戦の選手の様子を見ても、WSWにはほとんどない。

非常に拮抗した実力のチームが争うAリーグでは、3位のチームも6位のチームもそれほどの実力差はない。シーズン優勝の目がなくなった今となっては、残り3試合で何とか現在の2位の座を死守。一発勝負のセミ・ファイナルをきっちり勝って、グランド・ファイナル進出を最短距離で狙うシナリオが1番有力となる。

 

残りのリーグ戦、楽な相手は無し

ざっと残り3試合をプレビューしておこう。この3試合の相手がなかなかに難しい。まずは、3月29日のセントラルコースト・マリナーズ(CCM)。現在、WSWとは勝ち点僅か2差で4位につけるCCMは、言わずとしれた昨季のグランド・ファイナルで苦杯を舐めさせられた因縁の相手。そのCCMと、このシーズンの佳境でアウェーで戦う試合には油断は禁物だ。そして、既にシーズン優勝争いを決めたブリスベンとのホームでの対戦(4月5日)と続くが、この試合は”仮想グランド・ファイナル”として、お互いの手の内を知る非常に有効な機会となる。しかも、シーズン優勝のタイトルを手中に収めたブリスベンは余裕で構えられるが、熾烈な順位争いの渦中にあるWSWには一瞬の油断も許されない。この心持ちの違いが結果にどう反映されるかが見物だ。

最終節にアウェーで対戦するメルボルン・ハートも決して楽な相手ではない。現在、ブービーでファイナル進出の可能性がほとんどないに等しいメルボルンHだが、他のチームにはない特殊なモチベーションを持つ。というのも、メルボルンHは今季途中に英国プレミア・リーグのビッグ・クラブ、マンチェスター・シティに買収されてその傘下に入った。そして、来季以降はチーム名が「メルボルン・シティFC」に変わる可能性が高いとされる。すなわち、この今季最終戦は、「メルボルン・ハート」としての最終戦となる可能性が高く、彼らは有終の美を飾ろうと強い気持ちで臨んでくる。

WSWは、ファイナル制覇とACLという“二兎”を追っている。したがって、大事なこの3試合をACLの日本と韓国への遠征を含む過密日程(別表参照)の中で戦わねばならない。ポポヴィッチ監督は、引き続き選手のローテーションをしながらの“二面作戦”を継続することを強いられる。残り3戦の相手でブリスベン、メルボルンHは、ACLに参戦せずリーグ戦に100%フォーカスした状態で臨んでくる。その意味では、ACLとの過密日程という同じハンデで戦える次節(3月29日)のCCM戦が大きなカギになる。もし、ここで勝てば、6位以内のファイナル圏内が事実上確定するので残り2試合も戦いやすくなる。CCMには、今季1勝1分けと優位に立っているだけに、何とかこの試合で確実に勝ち点3を積み上げておきたい。

 

ACLで存在感発揮

ここから先は、WSWの追うもう一匹の“兎”であるACLについて書いておこう。

WSWにとって初めてとなるACLのキャンペーンは、まずまず、いや存外の好調な滑り出しと言ってもいいだろう。ACL対策で獲得したDFマレン、ゴレッチなどが予想以上に早く戦力として計算できるようになり、用兵にも幅が広がってきた。WSWは、ACLの初戦の蔚山現代戦(ホーム)こそ敗れたが、アウェーの貴州人和、ホームの川崎フロンターレに連勝、ここまで3戦2勝1分けという成績で、現在グループHの2位に付ける善戦を見せている。

WSWの3月19日の川崎フロンターレ戦は、観ていて非常に感慨深いものがあった。小野と同級生で親交の深い稲本潤一、小野自身も実力を認める中村憲剛、そして大久保嘉人という日本代表経験者との久々の再会は、小野に色々な刺激をもたらしたことだろう。そしてピッチ上での小野は、J1の選手を相手に自分のプレーをぶつけることで、Jのレベルを肌で感じようという意図があったかなかったか、のびのびとプレーしているように見えた。十分に存在感をアピールすることで、日本でこの試合を見ていたファンにも健在ぶりをしっかりアピールできたことだろう。

 

おとぎ話の最終章

WSWのACLグループ・リーグの残り3試合(日程別表参照)は、アウェーでの川崎戦(4月1日)、アウェーでの蔚山戦(4月15日)を経て、ホームでの貴州人和戦(4月22日)で完結する。ここで2位以内に入れば、晴れて次ステージである決勝トーナメントのラウンド16に進出できる。

しかし、5月7・14日に予定されているラウンド16のホーム&アウェーの試合で小野伸二の姿が見られるかどうかは、現況でははっきりしない。コンサドーレ札幌との契約は6月1日からとされるが、できるだけ早くの合流を要請されているだろうし、WSWがグランドファイナルまで勝ちあがったとしてもAリーグ2013/14シーズンの全日程は、5月4日で終わる。その3日後に行われる試合に、WSWが移籍の決まっている小野を拘束するとは考えにくい。

いずれにしても、WSWというクラブの存在感をアジアでアピールするには、蔚山や川崎といった強豪に伍したうえで勝ち上がり、アジアのベスト16に名を連ねることが必要になる。小野自身も、ローテーションされながらも二面作戦のいずれでもチームの欠かせない主力として身を粉にして、何とか目に見えた結果を残すことで、2年に渡るクラブ、そしてサポーターとの幸福な関係を終えたいと思っていることだろう。

小野伸二とWSWの“おとぎ話”’の最終章にどんなストーリーが書き加えられるのだろうか。泣いても笑っても、残された時間は1カ月少々。まだまだ終わらないWSWの“熱い”シーズン、小野伸二のウェスタンシドニーでの雄姿を目に焼き付けるべく、ぜひスタジアムに足を運んいただきたい。

ファイナル・シリーズ、いよいよ始まる!
 4月中旬から、レギュラー・シーズン上位6チームによるファイナル・シリーズが開催される。ファイナル・シリーズでは、まずレギュラー・シーズン3位と6位、および4位と5位による「セミ・ファイナル進出決定戦」が行われる。それぞれの勝者のうち、順位の低い方がレギュラー・シーズン1位のチームと、高い方がレギュラー・シーズン2位のチームと「セミ・ファイナル」を戦い、それぞれ勝ったチームが「グランド・ファイナル」進出となる。ファイナル・シリーズにもぜひご注目を!

■順位表(参考:本稿締切時点)


順位  チーム名 試合数 ポイント
1  ブリスベン・ロア 24 15 3 6 40 21 19 48
2  ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ 24 10 8 6 29 24 5 38
3  メルボルン・ビクトリー 24 10 6 8 35 39 -4 36
4  セントラル・コースト・マリナーズ 24 10 6 8 28 32 -4 36
5  アデレード・ユナイテッド 24 9 7 8 42 32 10 34
6  ニューキャッスル・ジェッツ 24 9 5 10 29 30 -1 32
7  シドニーFC 24 10 2 12 33 35 -2 32
8  ウェリントン・フェニックス 24 7 7 10 34 42 -8 28
9  メルボルン・ハート 24 6 7 11 31 35 -4 25
10  パース・グローリー 24 5 7 12 22 33 -11 22

ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ試合日程

ACL  4月1日(火)7:00PM  VS 川崎フロンターレ(日本)  川崎等々力スタジアム
26節  4月5日(土)5:45PM  VS ブリスベン・ロアー  ピアテック・スタジアム
27節  4月12日(土)3:30PM  VS メルボルン・ハート  AAMIパーク
ACL  4月15日(火)7:30PM  VS 蔚山現代(韓国)  蔚山文殊フットボール・スタジアム
ACL  4月22日(火)6:30PM  VS 貴州仁和(中国)  ピアテック・スタジアム

 

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