小野伸二、来季への新たなる想い

サッカーAリーグ、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ

小野伸二、来季への新たなる想い

 サッカー界のレジェンドでありイタリアの英雄、アレッサンドロ・デル・ピエロ、元イングランド代表FWエミール・へスキー、日本が世界に誇る天才プレーヤー、小野伸二。世界を舞台に活躍する「ビッグ3」の加入で俄然盛り上がりを見せたサッカーAリーグも4月のファイナル・シリーズを最後にシーズンを終了した。
 小野伸二が所属するウエスタン・シドニー・ワンダラーズは、ファイナルの王者こそ逃したものの、レギュラー・シーズンを優勝で飾り、結成初年度としてはでき過ぎとも言える素晴らしい結果を残した。小野自身も、そのポテンシャルをいかんなく発揮し、人々の脳裏にはおそらく世界のレジェンド、デル・ピエロ以上もの存在感を残したと言っても過言ではないだろう。
 本紙では、日本への帰国直前の小野伸二へのインタビューを敢行。ここでは、彼の言葉をそのまま飾ることなく掲載していきたい。 取材=編集部 写真=Richard Luan

 

──10月の来豪以来、半年ぶりの日本への帰国ですが素直なお気持ちをお聞かせください(インタビューは4月末に敢行)。

「やっぱり家族に会えるのがうれしいですね。子どもたちとは毎日電話で話してますが、実際に会うのは新年に遊びに来てもらって以来なので」

 

──お子様たちも、まだお父さんに会いたい盛りですよね。

「上の子の夏蓮は8歳、下の子の里桜は6歳ですからね」

 

──お子様のお名前はどういった由来で付けられたんですか。

「上の子はオランダ時代に生まれているので、そういうのもあって最初は海外でも外国人が呼びやすい名前をと思って付けました。あとは花の名前を入れたかったというのもありますね」

 

──そうなんですね。さて、それでは改めてシーズンを振り返らせてください。シーズン序盤は決して順重とは言えない展開だったような印象があります。初戦は引き分け、2試合目は黒星、3試合目の初ダービーでも敗北という滑り出しでした。

「まず、到着したばかりで1週間以内にベンチに入れたというのが驚きでしたね。コンディションは悪くなかったので感謝していますし最初から良い雰囲気の中で、昨年王者だったチームとプレーすることに、自分の中でも非常にわくわくしていた部分がありました。序盤は勝てたチャンスは何度もあったし、初戦で勝てれば勢いも変わっていたのかもしれません」

 

──チームへの合流が短かったというのもあるし、小野選手自身がチームにフィットするまでに時間がかかったというのもあったのでしょうか。

「ほかの選手たちとそれほどコミュニケーションが取れていなかったですし、彼らがどういう動きをするか、どういうプレーヤーなのかを把握するまでに少し時間がかかりました」

 

──3戦目、初のシドニー・ダービーではデル・ピエロがPKを入れながらそれがカウントされず打ち直し。今度は外してしまうもこぼれ球を自らねじ込み決勝点と、デル・ピエロ1人にすべてを持っていかれたようなゲームでした。Aリーグの歴史上初めてのシドニー・ダービー、ヨーロッパでのそれと比べて雰囲気はいかがでしたか。

「ほかの国のダービーと比べると、スタジアムのキャパが狭いという面はありましたが、やはりサポーターの数も雰囲気もほかの試合とは全く違いました」

 

──7節目、初めてスタメンを外れた試合がありました。この時は戦術的に小野選手抜きで試してみようという意図があったのでしょうか。

「パース・グローリー戦ですね。その前に少し足を痛めて2日間くらい練習に合流しなかった時があったんです。復帰はしたものの、完全にフィットしてないということに加え、アウェーで長時間飛行機に乗った疲れもあるということで、少し休んでほしいと監督には言われました。もちろん、戦術的な理由もあると思いますが、スタメンを外れることに対して特別に思うところはなかったです」

 

──そんな中、シーズンの3分の1、9節目までチームの合計得点は5点。チャンスはたくさんあるが点数が入らない。外野から見ていると、正直もどかしさもありました。

「いいところで点数を取れないという場面が多々あったので、周りから見ていたらもどかしかったかもしれないけど、僕らは普通に自信を持ってやっていましたし、自分たちのチーム・メイト、そして監督を信じてやっていました。僕たち自身は何も迷うことはなかったです」

 

──その後10節で遂に小野選手が初得点。これを機にチームのすべてが変わったと言っても過言ではありません。11節はダービーで初勝利、年末の12節ではアデレード・ユナイテッドを相手に6−1の大量得点で勝利。小野選手の得点をきっかけに堰を切ったような勢いで得点と勝利を重ね始めました。

「確かにあのゴールを機に良い結果が出始めたというのはあります。あの試合も残りあとちょっとという0−0の中の均衡を破る形で、気持ち良くゴールを決められまし__た。チーム全体が落ち着いてプレーをした結果、良い形での勝利を得たことで自信が付いたというのもあると思います」

優勝への躍進の始まり

──チームが勢いに乗る中、元日に行われた試合では小野選手は2得点を挙げ、チームはついに3位に浮上しました。

「10日間で3試合というスケジュールの中、監督が体をケアしてくれ、アウェー戦を1戦休ませてくれました。それに対し、次の試合では自分の役割をしっかり果たさねばならないという中で、1日に2ゴールを挙げられたので嬉しかったです。1月1日に試合をするというのは、日本でも天皇杯決勝くらいですし、その特別な状況の中、観に来てくれていた家族にも活躍したところを見せられて本当に良かったです」

 

──その後、16節からいよいよ破竹の連勝がスタートします。5連勝するころにはチームはついに2位に浮上。そして8連勝目で一時首位に立ちました。

「当然、シーズンの最初から皆、トップを狙うつもりでやっていたので、そこにぶれはなかったと思うし、自分たちのやるべきことをやり通したことが結果につながってきたと思っています。もちろん運よく勝った試合もありますが、積み重ねてやっていくことの大事さを皆が感じてやれたのだと思います。信じた通りにやることができた。それが僕らが浮上した要因だと思います」

 

──10連勝で迎えた3度目のシドニー・ダービー。しかもホームの試合。この最高の舞台で引き分けとまさかの連勝を止めてしまう結果になりました。

「あれだけの数のサポーターがホームに駆けつけてくれて、期待していたと思うので、それを裏切る形になったのは本当に残念でしたね」

 

──ちょうどそのころ、来季の契約更新の発表がありました。ほかの国のクラブからもオファーがあったと思いますが、ワンダラーズへの残留に迷いはなかったですか。

「全くないですね。僕としても最初からやりたいということは伝えた上で、細かいことを話し合いで詰めていった感じでした」

ファイナルの重み

── 最終戦でジェッツに快勝し、優勝を決めたわけですが、本紙の読者からも「フットボールの神はいた」「その笑顔が見たかった」などコメントをいただいています。日本代表復帰を願う声なども散見されますが思うところはございますか。

「もちろん入れればそれに越したことはないですけど、どちらにしても自分がやることには何も変わりはないですし、自分は本当に楽しくサッカーができていればそれでいいと思っています」

 

──レギュラー・シーズン優勝で沸く中、それまでチームを支えてきたメディア・コンサルタントのロッド・アレン氏(元シドニー・モーニング・ヘラルド紙スポーツ・エディター)が不慮の事故で亡くなりました。悲しみを抱えてのファイナル・シリーズ参戦となりました。

「優勝を決めた2日後くらいのことで、びっくりしてすぐには信じられませんでした。本当に残念でしたし、ファイナルでは良い結果を彼に届けたいと思っていました。セミ・ファイナルで得点を決めることができたのは良かったですが、優勝できなかったのはその意味でも残念でした」

 

──そうですね。とはいえチーム創設初年度としては、相対的には偉業と言ってもいい結果になったと思います。

「皆が信じてやってきたレギュラー・シーズン優勝という目標をクリアできたのは大きかったと思います。来年、この大会に戻ってきたらグランド・ファイナルで優勝する。それを目標にやっていきたいと思います」

 

──ファイナルの重さを肌で感じたわけですね。

「レギュラー・シーズンの優勝よりもはるかに大きく感じられるような雰囲気でしたし、今シーズンそれを経験できたのは大きかったと思います。来シーズン、絶対ここに戻って来たいという強い気持ちが芽生え、新たなるモチベーションになりました」

 

──レギュラー・シーズンの優勝によって、来季のアジア・チャンピオンズ・リーグの出場権を得ました。来年、日本にワンダラーズの選手として凱旋帰国する可能性もありますね。

「そんなことがあったら最高ですし、日本のチームと戦える、そんなことを海外のチームでできるなんて本当に楽しいことだと思います。同じグループ・リーグに日本のチームが来ることを祈ってます」

日豪のサッカーの違い

来シーズン、ここに戻って来たらファイナルでの優勝を目指したいそれが新たなモチベーションになりました

──ビッグ3の加入とともに始まったシーズンを通してAリーグのメディアでの扱いも大きく変わってきたと思います。

「Aリーグに来た時から、思っていたよりもメディアの数が多いなと感じていましたが、シーズンが終わるころには、チームの成績が良いというのもありましたし扱いも大きかったですね。ただ、もっとテレビでの露出が増えるなど発展してくれればいいなと思います」

 

──Aリーグに参戦してみて感じたJリーグとの大きな違いはどのような部分だと思いますか。

「何が違うかと聞かれると僕もよく分からないんですよね。ただ、日本は細かくボールをつないで、こちらはボールをテンポ良く前に出すという違いはあるかもしれません。また、高さやあたりなどフィジカル面はオーストラリアの方がタフですね。僕自身はどちらでプレーしてもあまり変わらないと思いますが、Aリーグには細かくつなぐ特徴の選手がいないと思うので、こっちにいた方が僕のスタイルはより生きるのではないかと思います」

 

──これまでいろいろなコーチに付いてきましたが、その中でポポビッチ監督はいかがですか。

「小学校時代にサッカーを始めたころから出会ったどの監督も自分が成長していく過程の本当に大きな存在だったと思います。その中で、ポポビッチ監督は自分を変えてくれた、弱っていた自分を強くしてくれた、そういう監督だと思っています。そのぶん、彼のためにサッカーをやりたいという強い気持ちは持っています」

 

──普段、英語のインタビューにもよどみなく答えている印象がありますが、コミュニケーションで困るようなことはありませんでしたか。

「こっちでプレーしている以上、慣れていかなければいけないです。正確に受け答えできていない部分は把握できていますし、相手もそれを理解してくれているので、自分はとにかく伝えようという気持ちを大事にしています。自分の声で伝えたいですし、しっかり聞いて、しっかり話す。それだけを意識として持ち続けるようにしています」

 

──シドニーでの生活、改めて振り返ってみていかがですか。

「僕は今、健康に恵まれいて、そして良い気候の中でサッカーができています。サポーターの人は皆すごく優しいですし、本当に気持ちが良いところですね」

 

──最後に応援してくれているファンの皆さんにひと言お願いします。

「たくさんの応援ありがとうございました。来年も開幕戦から多くの人が来てくれることを願っています。オーストラリアにいる方はもちろん、日本のファンの方たちにもぜひ1度来ていただけると嬉しいです」(4月26日、ブラックタウン・スポーツセンターで)

7月には、香川真司が所属する、世界を代表するビッグ・クラブの1つであるマンチェスター・ユナイテッド(マンU)が来豪し、Aリーグ・オールスター・メンバーと対戦する。それに際し、先日、3万人を超えるサポーターによってオールスター・メンバーを決めるファン投票が行われ、全35選手が選出された。その中で小野は見事にファン投票M F部門で1位を獲得。これにより、オーストラリアの地で、新旧Shinji対決が実現する見通しだ。さらにFW部門ではデル・ピエロが1位となり、小野とのタッグに期待が高まっている。シーズンを終えたばかりのサッカーAリーグだが、オーストラリアのサッカー熱は当分、収まりそうもない。

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