第59回 NAT 金星

 

第59回 金星

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


ブラジル戦でカイラ・サイモンの得点を祝うマチルダスの面々

カナダを舞台に女子W杯が戦われている。大会は、当稿締切段階でベスト8が出そろったところまで進んでいる。日豪両国もベスト16に肩を並べ、豪州はベスト16でブラジルを破る金星を挙げ、歓喜の準々決勝進出を決めた。

マチルダスの愛称で親しまれるチームの快挙は、豪州にとって、男女ともにW杯の決勝トーナメントで挙げた初勝利。豪州サッカー界の歴史を変えた勝利は、日ごろ、それほどサッカーを大きく扱わないメディアにも大きく取り上げられ、ある番組では、「あと3回勝てば世界王者」とかなり気の早い話もされていた。しかしさすがに、そんなに甘くはない。

実際、ここから先の“未体験ゾーン”は、かなりの険しい道のりになる。日本がオランダ戦(24日)に勝利したことで、女子W杯で初となる“日豪戦”が準々決勝で実現する。仮に(もちろん、好ましくないシナリオであるが)、マチルダズがなでしこジャパンの高い壁を越えたとしても、その先の準決勝では、開催国カナダ、欧州の実力派イングランド、もしくはノルウェーといったいずれも劣らぬ難敵が手ぐすねを引いて待ち構える。そして、そこを突破して決勝にたどり着いても、その先に控えるのはFIFAランキングの1、2位の常連ドイツ、アメリカのいずれか。

前回大会の日本がそうであったように、今大会の豪州は戦いながら成長していくタイプのチームのようだ。どの選手もハード・ワークを惜しまず、バランスの取れたチームだけに、もう1つ、2つ、サプライズを演出したとしても驚きはしない。次に日豪戦が実現して、そこでサプライズを起こされるのはできればご遠慮願いたいが、この先、このチームがどう成長していくかもまだまだ見てみたい気もするので非常に悩ましいところだ。

マチルダス、その一風変わった愛称の由来について触れておく。この“Matilda”、元々は、国民的愛唱歌の“Waltzing Matilda”の歌詞の中でSwagman(ブッシュを放浪する旅行者)が自らのSwag(寝袋)に付けた女性の名前で、歌が全豪に広まるととも豪州自体を擬人化したイメージとしても伝播していった。そして、いつしか最もオージーらしい響きを持つ女性の名前というイメージが定着、サッカー女子代表チームにこの愛称が付けられるに至った。

そんなオージーの誇りともいうべき名前を戴いたマチルダスにとって、前回王者の日本と真っ向からぶつかる日豪戦こそ、今大会のハイライトになるに違いない。


【うえまつの独り言】
日ごろ、女子サッカーを観る機会が限られる身にとって、4年に1度の女子W杯は驚きの連続。戦術面や基礎体力などの向上が著しく、かつてほど上位国とそれ以下の差が縮まっているように思う。これを機に、マチルダス、きちんと追っていこうかなと思ったりもした。

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