第22回 NAT グッド・ルーザー

 

第22回 グッド・ルーザー

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


国立競技場のカクテル光線の下の前日練習で汗を流すロア・イレブン(筆者撮影)

ブリスベン・ロアのACL東京遠征の取材を兼ね一時帰国した。ゴールデン・ウィーク真っ只中で、ACL以外にも2試合を生観戦(TV中継でさらに2試合)、日本のサッカーを久しぶりに堪能できた。

4月28日のFC東京対清水(味スタ)の試合は面白かった。FC東京の現況と清水の豪州代表アレックスを見るのが主目的だったが、試合そのものを大いに楽しめた。

相変わらずカード出しまくりの西村主審が裁くこの試合、相次ぐ退場で清水は9人で約20分を戦う厳しい状況に陥った。その時点のスコアは0−0。清水のゴトビ監督は、前線を若い高木俊幸と経験豊富な高原直泰に任せ、一瞬のチャンスを伺う姿勢。監督の意図を理解したベテラン高原が可能な限りボールをキープ、一瞬のチャンスを逃さず、走りこむ高木に速いパスを通す。それを受けた高木が思いきり蹴りこんだボールがゴールに吸い込まれる。

虎の子の1点を守り抜いた9人の清水が、FC東京を沈黙させた。試合終了直後、清水サポーターの「9人で勝っちゃった」の即席横断幕が上がったが、確かに久々に面白いものを見せてもらった。

5月2日、FC東京対ロアが行われた国立競技場は、あいにくの雨。しかも寒い。そんな悪条件下で逆転での完敗(最終スコア2−4)という結果にもかかわらず、試合後、なぜか気持ちは晴れやかだった。

まず最初に、日本サッカーの聖地・国立で豪州王者ブリスベン・ロアが公式戦を戦ったことの感慨。さらには、2得点を挙げた試合の序盤で見せ場を作り、FC東京を慌てさせたこと。そして何よりも、雨のピッチ上で「繋いで繋いで」の自分たちのサッカーを愚直に繰り広げたことにより、豪州サッカーに対する未だ根強い“偏見”を打ち砕くことができたこと。このような思いがあいまって、敗戦後にもかかわらず、晴れやかな気分だった。

試合後のロアのイレブンもある種の充足感が見て取れた。エリック・パァトゥルーは「試合は確かに完敗、次(のステージ)に行くチャンスもなくなった。ただ、自分たちのサッカーを貫いたことでインパクトを与えられたのであれば、1つの大きな目的を達成できた」と言う。

FC東京のポポビッチ監督も「ビューティフル・フットボール」の連発でロアを賞賛。私個人も、試合前後を通じて、ロアのサッカーに興味を持った日本のサッカー・メディアの方々からいろいろな質問を受けた。

豪州サッカーのステレオ・タイプを打ち崩した今回の遠征。“グッド・ルーザー”として拍手を送られたロアが、クラブ・レベルでの「日豪サッカー新時代」の訪れに大きく貢献したことは間違いない。


【うえまつの独り言】
ACLグループ・リーグの帰趨が決した。ブリスベンとセントラル・コーストの敗退を尻目に、アデレードは堂々の1位通過でベスト16進出。ACL経験豊富なアデレード、やっぱり場慣れしている。豪州代表としてさらに上を目指すアデレードは、次は29日にホームで名古屋を迎え撃つ。

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