第60回 NAT 興行

 

第60回 興行

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

今季限りで退団したリヴァプールの“象徴”、スティーブン・ジェラードのジャージを身に着けたサポーターの姿が多く見られた(筆者撮影)
今季限りで退団したリヴァプールの“象徴”、スティーブン・ジェラードのジャージを身に着けたサポーターの姿が多く見られた(筆者撮影)

Aリーグのオフ・シーズンに欧州のトップ・クラブが“興行”にやって来る。ここ数年で、それもすっかり当たり前の光景になった。

今年はいつにも増してにぎやかだ。まずは、シドニーFCが5月30日にトッテナム・ホットスパー、6月2日に今年のプレミア王者のチェルシーと相次いでシドニーのANZスタジアムで対戦。この2戦での観客動員数は、15万5,147人に上った。

さらに、今年はシドニーとメルボルンの2大都市だけでなく、ブリスベンとアデレードにも、欧州本場のフットボールの風は届けられた。6月にはスペインの中堅クラブ・ビジャレアル、7月には世界有数の人気クラブであるリヴァプールが来豪。それぞれ、ブリスベン・ロアとアデレード・ユナイテッドと対戦するツアーを行い、リヴァプールは2戦で10万人を集客するなど、プレミア・リーグの人気クラブの集客力のすごさをまざまざと見せつけた。また、ゴールドコーストでは、マンチェスター・シティとメルボルン・シティの姉妹クラブ対決が実現した。

そして、極めつけは、このコラムの締め切り段階でメルボルンでまだ開催中のインターナショナル・チャンピオンズ・カップ。アメリカ、中国でも開催されるビッグ・クラブ同士の交流カップ戦の豪州バージョンが、7月18~24日の日程で行われた。今年の参加チームは、レアル・マドリッド、マンチェスター・シティ、ASローマと欧州サッカー先進国の名だたる強豪ぞろい。この3クラブが総当たりで対戦する大会は、当然ながら注目を集め、豪州最大のキャパシティーを誇るメルボルン・クリケット・グラウンド(MCG)に多くの観衆が押し寄せた。

豪州にこれだけのビッグ・クラブがやって来たのには理由がある。親善試合でもかなりの動員を見込めるこのようなイベントは、言葉は少々よろしくないが、金になる。だからこそ、“興行”として出張ってくる価値があるのだ。翻って、国内トップ・リーグのAリーグはどうだ。よほどの大一番でないと、ANZスタジアムやMCGのような“大箱”は埋まらない。

もちろん、ビッグ・クラブの来豪は楽しみだが、毎年、観戦後には少し複雑な気持ちになる。「この観衆の3人に1人でいいので、Aリーグにも興味を持ってほしい」などと願望が口を衝く。身近にあるAリーグに興味を持ってもらうには、どうすれば良いのか−。そんなことを思い悩みながら、オフ・シーズンは暮れていく。


【うえまつの独り言】
Aリーグのストーブ・シーズンも、確実ににぎやかになっている。今のところ、あっと驚く大物入団の報は入ってきていないが、まだまだ時間はある。2季ぶりのデルピエロ級の大物の参戦はあるのか、シーズン開幕ギリギリまで目を離さずに見守ることにしよう。

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