第61回 NAT 門番

 

第61回 門番

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

先のアジアカップでも優勝に大きく貢献した守護神ライアン(右から3番目・©LOC Asian cup 2015)
先のアジアカップでも優勝に大きく貢献した守護神ライアン(右から3番目・©LOC Asian cup 2015)

実は、豪州は隠れたゴール・キーパー大国だ。1990年代末から2000年代初頭に台頭したいわゆる“黄金世代”では、欧州のトップレベルで活躍するGKを3人同時期に輩出した。そろって72年生まれのマーク・ボスニッチ、ゼリコ・カラッチ、そしてマーク・シュウォーツァーの3人だ。そのうちのボスニッチとカラッチは、既に引退。前者は、FOXスポーツのサッカー番組の看板ホストとしてお馴染み。後者は、長らくシドニーFCでGKコーチを務めた後、今年からライバルのWSWに移って後進の指導を続けている。

そして、かつてのサッカルーズの顔として日本でもよく知られるシュウォーツァー。彼は42歳となった今も現役で、今季はイングランドのレスターに所属しており、日本代表の岡崎慎司とはチーム・メイトの間柄。3人の中で一番最初に才能が開花したボスニッチのキャリアが、プレミア・リーグを制覇したマンチェスターU時代をピークに下降線をたどったのを受けて、サッカルーズの守護神の座を確固たるものにしたシュウォーツァーは、13年に代表引退するまでに実に109試合で豪州のゴールを守り抜いた。

そんな偉大な守護神の後継者探しにはまったく手間取らなかったのは、豪州にとってはラッキーだった。12年、19歳で代表に初招集されたマット・ライアンは、13年11月にシュウォーツァーが代表引退するまで代表チームで偉大なGKの薫陶を受け続けた。そのライアンは、シュウォーツァーの代表引退以降、サッカルーズの守護神の座に座り続ける。まだ22歳と若い彼の正GKとしての立場は安泰で、豪州のゴールは彼がいる限り確実にあと10年は大丈夫と断言できる。

そのライアンのキャリアは順風満帆。今季、ベルギーからスペインにステップ・アップして、名門バレンシアの正GKとして既にチャンピオンズ・リーグの晴れ舞台にも立った。毎年、着実にステップ・アップしていく若きサッカルーズの守護神が、数年後、欧州有数のビッグ・クラブのゴール前に立つ姿を見るのもあながちない話ではない。

豪州のGKの人材は何も彼だけではない。サッカルーズの控えGKの一番手ミッチェル・ランゲラクは、ブンデスリーガのシュトゥットガルトで正GKのポジション獲りに挑む。さらには、今季プレミアに昇格したボーンマスのアダム・フェデリッチも、自身3季ぶりのプレミアでの活躍の機会を狙う。今季の欧州のシーズンでは、さまざまなリーグで活躍するオージーの“門番”たちの活躍を見守っていくというのも一興かもしれない。


【うえまつの独り言】
全豪のクラブのオープン参加で行われるFFA杯。さまざまなドラマを生む同杯のベスト16が出そろった。まだまだ、サッカーの醍醐味の1つでもある“ジャイアント・キリング”の余地は残されている。次のラウンドではどんなドラマが起こるのか、今から楽しみだ。

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