第62回 QLD 途上

 

第62回 途上

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ケアンズでは、ローカル、日系の多くの人々にサポートされてシーズンを全うした(写真提供:GoZamurai)
ケアンズでは、ローカル、日系の多くの人々にサポートされてシーズンを全うした(写真提供:GoZamurai)

8月11日、PK戦の末、FFA杯(筆者注:日本の天皇杯に相当)のベスト16進出を逃したFNQヒート。ケアンズに本拠地を置くヒートは、遠路はるばる遠征してきたメルボルンでの惜しい敗戦に落胆の色を隠せなかった。その試合のピッチで獅子奮迅の活躍を見せたのがDF渡邉志門(24)。この日の悔しい敗戦で気を落としたヒートは、その後に控えた大事なリーグ戦を2連敗してファイナル進出を逃してしまう。その結果、渡邉のNPL初挑戦となった豪州2季目のシーズンは終わりを告げた。

昨年6月、単身渡豪してきた渡邉は大学時代、関東1部リーグの名門・順天堂大学でレギュラーを張った。豪州初年度の昨季は、開幕からかなり時間を経てからの来豪だったことでNPLでのチャンスをつかめず、州2部相当のブリスベン・プレミア・リーグ(BPL)でプレー。その風貌通りの野性味、時折見せる日本人特有の細やかさを併せ持つスタイル。さらには、ローカル選手を臆さず日本語でどやして指示を出す日本人選手には珍しいタイプのキャラクターに「これはハマれば面白い」と感じた。

しかし、そんな“原石”が輝きを見せるには時間を要した。結局、初年度は合流の遅れに加え、ケガに祟られてBPLのリーグ戦は6試合出場のみ。2年目の開幕を迎える過程でもNPLの外国人枠の高い壁に阻まれ、所属先がなかなか決まらなかった。そんな中でも焦らず機会を待つ渡邉の下に、開幕直前、QLDの極北の地ケアンズから練習参加のオファーが舞い込む。

急な練習参加の誘いに身ひとつで飛行機に飛び乗り、空港で一夜を明かしてから合流。そこで、持てる力のすべてを出してアピールした渡邉は、クラブの最終契約選手として滑り込み入団を果たす。そして、このNPLQの最果てのクラブに渡邉はハマった。言葉の壁を乗り越えながら、クラブの欠かせない存在へと成長していった彼は、アウェーの全試合がかなりの長距離遠征という過酷な環境を物ともせず長いシーズンを戦い抜いた。

現役選手である以上、豪州の「最高峰」に挑みたいとの思いを渡邉は隠しはしない。目立った成績を残していない外国人の自分がそのチャンスをつかむことが容易でないことの自覚もある。それでも、日々、たゆまぬ努力で成長を続ける渡邉は、今、まさに発展途上。彼自身が思い浮かべるサッカー道のゴールへと一歩一歩踏みしめて進む途上にある――そんな若人、無条件に応援したくなるではないか。


【うえまつの独り言】
NPLQは13日のグランド・ファイナルで、中岡涼太のモートンベイ・ユナイテッドが悲願の州王者のタイトルを獲得した。3季目の伊藤和也は、シーズン終盤に負った左足全十字靭帯断裂および半月板損傷の全治9カ月の重症から完全復活を目指して懸命なリハビリに励む。

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