第65回 QLD 不毛

日豪サッカー新時代

第65回 不毛
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

熱いWSWサポーター。彼らのパッションがグラウンドから消えるのは大きな損失だ(筆者撮影)
熱いWSWサポーター。彼らのパッションがグラウンドから消えるのは大きな損失だ(筆者撮影)

Aリーグ、いや、豪州サッカー界が揺れている。

11月22日にシドニーの有力紙の日曜版「サンデー・テレグラフ」に載った記事が発端となった今回の騒動。コアなサポーターの豪州サッカー連盟(FFA)に対する抗議行動が先鋭化している。

発端となったのは、スポーツ・ジャーナリストのレベッカ・ウィルソンの署名記事。リークされたAリーグによる試合会場への入場禁止を言い渡されたサポーターの名簿を入手した彼女は、それを使ってサッカー批判記事を執筆。テレグラフ紙がその記事を掲載した一面で数名のサポーターの顔写真と名前をさらした。名うての“サッカー嫌い”のウィルソンの記事は、単純にサッカーに対するネガティブ・キャンペーンの一環だった。名物ラジオDJのアラン・ジョーンズなどと組してのサッカー追い落としの行為は見苦しいものだった。当初、サッカー・ファンやサポーター、サッカー関連メディアは、それらの行為に対して怒りの声を上げた。

しかし、その一連の流れで沈黙を守ったのが、豪州サッカーの大元締めであるはずのFFAと今回の攻撃の直接的対象であるAリーグ。本来であれば、サッカー・コミュニティーの先頭に立って立ち向かわなければいけないはずの彼らが声を上げなかったことに、多くのサッカー・ファンは失望した。

そして、彼らはファンを守らないFFAとAリーグに対して実際的な抗議行動に出た。騒動発生後、最初の開催週の週末の試合会場には多くの横断幕が掲げられた。アクティブなサポーター集団は、試合開始後30分で一斉に席を立つ“ウォークアウト”。さらには一切試合会場に姿を見せない“ボイコット”などの形で抗議の意を示した。

今回の198名の中には、度重なるフリーガン行為を繰り返し、“追放”の処分を受けた問題サポーターも含まれる。彼らのような悪質なサポーターの行為を正当化する気はさらさらない。しかし、彼らのプライバシーもまた守られて然るべきだと考える。また、中にはいわれなき罪でリストに上げられた人、または、冒頭の記事に写真が載ったことで職を失った人もいると聞く。そのように、明らかに行き過ぎた結果を引き起こしている今回の騒動。FFAは「ファンあってこそのプロ・スポーツ」との原点を今一度思い起こして、事態の収拾に積極的に動いてもらいたい。今からでも遅すぎることはない。見える形で行動して、この不毛な争いにピリオドを打って欲しい。そう、切に願う。


【うえまつの独り言】
12月6日、ティム・ケーヒルが36歳の誕生日を迎えた。大ベテランと呼ばれるにふさわしい年齢になっても、その進化のスピードは衰えを知らない豪州の絶対的エース。日本戦以外のサッカルーズの試合ではこれからも末永く活躍願いたい。
Happy Birthday, Timmy!!

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