第66回 NAT 均等

日豪サッカー新時代

第66回 均等
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

カシレスの移籍を伝えるCCMの公式サイト。この段階では、メルボルンCへの出戻りは報じられていなかった(CCM公式ウェブサイトより)
カシレスの移籍を伝えるCCMの公式サイト。この段階では、メルボルンCへの出戻りは報じられていなかった(CCM公式ウェブサイトより)

年が明けてすぐに豪州の移籍ウインドーが開いた。以来、有力選手の周辺でさまざまな移籍情報がやかましい。そんな中、今のところ一番話題をさらっているのが、アンソニー・カシレス(23)の“迂回移籍”。セントラル・コースト・マリナーズ(CCM)所属の国内有数の若手有望株に、イングランドから魅力的なオファーが届いた。オファーの主は、誰もが知るプレミア・リーグのメガ・クラブであるマンチェスター・シティ。そのオファーをAリーグでも最小規模経営のCCMが断る理由はなく、本人も移籍希望となれば交渉はまとまらないわけがない。

しかし、ここから先の展開が議論を呼んだ。マンチェスターCは、獲得したカシレスを即座に同じシティ・グループ傘下のメルボルン・シティにローンで貸し出す。ようは「セントラル・コースト発(マンチェスター経由)メルボルン行」という迂回移籍で、しかも系列クラブ同士が故になせる裏技。

このようなAリーグの移籍制度とサラリー・キャップ制の隙間をつく移籍の方法論が取りざたされたのは、今回が初めてではない。昨年、ブリスベン・ロアに所属していた豪州代表MFルーク・ブラッタンがマンチェスターCに移籍した際も、今回と同様の移籍後にローンでAリーグに戻るという可能性が報じられた。実際は、クラブが英国内の下部リーグへのローン移籍を優先させたことでメルボルンCへの移籍は幻と終わったが、ブラッタンのメルボルン移籍の可能性が完全についえたわけではない。

そんな状況下でシティ・グループの次なるターゲットになったのが、カシレス。難なく、国内外の多数のクラブが狙う有望株を手に入れたメルボルンC。移籍金で潤ったCCMには美味しい話でも、面白くないのは、それ以外のAリーグ・クラブとそのファン。当然ながら批判は集まる。フェイスブック上でこの移籍を伝える記事のコメント欄はかなり荒れた。

このような移籍で、果たして、各クラブ間の機会の公平性は保たれるのか−−そこには疑問が残る。実際、カシレスを買い取る資金は、世界有数のメガ・クラブ、マンチェスターCから出ている。当然、メルボルンCはレンタル料は払うが、これも本質的には同じ財布での金銭の出し入れ。ほかのクラブにはこんな金払いの良いパトロンはいないわけだし、機会均等という観点では、このやり方には後ろめたいものがある。有り体に言えば、不公平だ。さて、FFAの考えやいかに。


【うえまつの独り言】
オリルーズが散った。U23選手権でのまさかの予選敗退で、前大会に続いて五輪切符を逃した。攻撃陣にタレントをそろえたが、まったく力を発揮できぬままでの敗退。18歳のDFデンなど新しい逸材も見いだされたが、A・ヴィドマー監督の一貫性のない用兵には疑問が残った。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る