第67回 NAT 愚行

日豪サッカー新時代

第67回 愚行
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

熱く激しいWSWサポーター。それでも常軌を逸してしまうのはごく一握りの“愚か者”だけだ(筆者撮影)
熱く激しいWSWサポーター。それでも常軌を逸してしまうのはごく一握りの“愚か者”だけだ(筆者撮影)

本当は、かなり活発に動いた豪州の移籍ウィンドー関連を総括して書きたかった。でも、そうもいかない。またも、サッカーの“周辺”が騒がしくなってきたからだ。

事はサポーターの不祥事が発端で起きた。2月6日のAリーグ第18節のメルボルンV対WSWの試合には、遠いメルボルンでのアウェーでの試合にも関わらず、多くの熱心なWSWサポーターが駆け付けた。メルボルンVサポーターと共に醸し出すスタジアムの雰囲気は、さすがにAリーグで1、2を争うサポーター集団同士の対決にふさわしいものだった。

しかし、彼らの対抗心、そして虚栄心が誤った形で噴出してしまった。WSWサポーター席で大量の発煙筒がたかれ、一部はピッチ脇に投げ込まれた。煙がピッチ全体をもうもうと包み、試合はしばしの中断を余儀なくされた。せっかくの試合に拭えない染みを落としたごく一部のサポーターの行状は、「発煙筒は欧州や南米では当たり前だから」とか何とかで擁護されるべきものではない。「ダメなものはダメ」なのだ。

その日のビクトリー・サポーターは、自らのクラブの大事な試合を汚された“被害者”だったはずだ。しかし、彼らの中にも自己顕示欲を抑えきれない“愚か者”が混じっていた。13日、同じ都市の“クロスタウン・ライバル”、メルボルン・シティとのメルボルン・ダービー。そこで、ビクトリー・サポーターも発煙筒をたいた。「おいおい、またかよ」という言葉が口を衝く。

結果、ごく一部の愚か者の行為は、彼らが愛してやまないはずのクラブにそれぞれ「5万ドルの罰金と1年の執行猶予付きの勝ち点3剥奪」という処分として跳ね返った。彼らが、“サポーター”を自称するのであれば、クラブにダメージを与えかねない愚行は厳に慎むべき。こういった行いは世にはびこる「サッカー・ヘイター」に絶好の攻撃材料を与えかねない。曰く、「サッカー・サポーターのフーリガン化は問題だ」「フーリガン文化はこの国にそぐわない」などなど。サッカー全体で見れば、氷山の一角に過ぎないならず者の行状をして、サッカー全体のイメージ低下に結び付けられる−−そんな馬鹿なことは許されない。

今後のAリーグ、そしてサッカー界全体のためにも、このような負の連鎖は断ち切らねばならない。真のフットボール文化の成熟の過程で、今すぐにでも対応しなければならない課題をFFAはどうハンドルするのだろうか。


【うえまつの独り言】
ラグビーの五郎丸歩を取材中に既視感に襲われた。ふと思い出したのは小野伸二を取材していた頃のこと。真のプロは、どんな問いにもよどみなく自らの言葉で応じる。そんな超一流選手の共通点に思わずうなずかされた。またAリーグで、そういう真のプロを取材できるだろうか。

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