第69回 QLD 美学

日豪サッカー新時代

第69回 美学
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ロアの黄金期を支え続けたブロイシュの経験がファイナルの修羅場で生かされる(写真:NinoLo Giudice)
ロアの黄金期を支え続けたブロイシュの経験がファイナルの修羅場で生かされる(写真:NinoLo Giudice)

Aリーグのレギュラー・シーズンが終わった。近年まれにみる大混戦を制したのは、シーズン序盤は最下位に沈んでいたアデレード・ユナイテッド。見事な大逆転で10年ぶりのリーグ王者のタイトルを引き寄せた。我らがブリスベン・ロアは、シーズン終盤のもうひと押しが足りず、最終盤で2チームにかわされてのまさかの3位に終わった。

しかし、Aリーグはこれで終わりではない。これから、真の王者を決めるファイナル・シリーズが始まる。レギュラー・シーズンの上位6チームが既定のフォーマットに則って、“ファイナル王者”の座を争う。シーズン3位のロアは、上位2チームの特権、セミ・ファイナルから参戦のアドバンテージを逃した。グランド・ファイナルまでの道のりは1試合多くなって最大で3試合。

ここでファイナル・シリーズの予想めいたことを書くつもりはない。一発勝負のファイナルでは予想外のさまざまなドラマが起こる。過去3回ファイナル王者に輝いているロアは、他のどのクラブよりもファイナルの戦い方を熟知している。ただ、不安材料は、チームの世代交代もあって、前回のファイナル制覇を知るメンバーが減っていることだ。

そこで鍵になる存在は、過去3回のファイナル制覇のいずれでも絶対的存在としてチームを支えてきたベテランのトーマス・ブロイシュ。35歳を迎えた今季のブロイシュは、これまでのシーズンのような輝きを欠いたことは否定できない。中盤の底でチームを支えたスペイン人MFコロナの加入で相対的に存在感が薄まった。絶対不可侵の存在だったはずが、今季は途中交代のシーンもたびたび見られた。

それでも変わらぬテクニック、そして、何よりもAリーグ史上最高の外国人選手としての経験は余人をもって代え難い。ファイナルの一発勝負では、経験の差が勝敗を左右することが往々にしてある。シーズンを不完全燃焼で終えたロアをファイナル王者へと導けるのは、経験豊富なブロイシュのような存在だ。

豪州の地で6年にわたって素晴らしい実績を積み上げてきたブロイシュのキャリアも黄昏時に差し掛かっている。彼のような個が際立つ選手は、キャリアの継続に拘泥せす、選手としての引き際に独特の美学を有しているだろう。これから先の一戦一戦は、トーマス・ブロイシュという稀代の技巧派のピッチ上での輝きを焼き付けることを忘れずにいよう――この試合が最後にならないように祈りながら。


【うえまつの独り言】
シーズンを3位で終えたロアは、4月15日、セミファイナル進出決定戦で、自らの優勝を阻んだメルボルンVをホームのサンコープ・スタジアムに再び迎え撃つ。果たして、ロアは仇敵を倒して、グランド・ファイナルへの道を一歩進められるのか。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る