日豪サッカー新時代(NAT)第69回「ドラマティック」

日豪サッカー新時代

第69回 ドラマティック
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ロアを率いたジョン・アロイジは、確かな手腕を見せたがタイトルにはわずかに及ばず(写真:Nino Lo Giuduce)
ロアを率いたジョン・アロイジは、確かな手腕を見せたがタイトルにはわずかに及ばず(写真:Nino Lo Giuduce)

Aリーグ・ファイナルがたけなわだ。この原稿の執筆時点で、今季の残りは5月1日のグランド・ファイナル(GF)だけとなった。それにしても、最後まで大混戦だったレギュラー・シーズンに続いて、ファイナルに入っても劇的な試合が続く。一発勝負にふさわしいドラマも見られる。これこそが、ファイナルだ。

最近、あるイングランド人と話をした時、「シーズンを必死に戦ってタイトルを得たチームが王者にならないのはおかしい」との疑問を呈された。よくある疑問だ。しかし、プロ・スポーツのファイナル文化が当たり前のこの国で、その方式に従うのはごく自然なこと。それに異議を唱えても、そこには不毛な議論しかない。さらには、現行のレギュレーションで上位6チームがファイナルに進めることへの是非を問う論議も根強くある。これもまた、10チームしかないリーグではある程度致し方のないことで議論をしても詮無きこと。

今季のファイナル、結果だけ見れば、ほぼ順当な結果で推移している。シーズン優勝のアデレード・ユナイテッドと勝ち点差1の2位に終わった悲願のGF制覇を狙うウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)が、5月1日の頂上対決で相対する。

まだ、GFを控えるが、ここまでのファイナルの最大のドラマの主役は何といってもブリスベン・ロア。まずは、15日、ホームにメルボルン・ビクトリーを迎えたセミファイナル進出決定戦(正式には、エリミネーション・ファイナルと呼ぶ)では、試合終了4分前に相手に先制を許す苦しい展開も残り時間2分での起死回生の同点弾。そのまま延長かと思われたロスタイム3分過ぎにトーマス・ブロイシュが決勝点を挙げ、レギュラー・シーズンで泣かされたメルボルンVを葬った。そして迎えた24日のアウェーでのWSW戦。今までのファイナルでさまざまな因縁を持つ両軍の対戦は、Aリーグ史上に残るドラマティックな試合となった。ここに経緯を全て書く余裕はない。端的に書けば、3点先制したロアはWSWに逆転を許すも、食い下がって追い付く。しかし、延長戦にもつれ込んでからの相手の決勝点で4−5と敗れた、とこうなる。

こんなドラマはめったにない。こと、ファイナルとなるといつもドラマティックな展開にはロアの姿がある。そのドラマ・キング不在で迎えるGFには、どんなストーリーが待ち構えるのか。どうせなら大いにドラマティックなものを見たいものだ。


【うえまつの独り言】
今季のアデレードの追い上げは神がかっていた。一時期、ファイナル圏外にいたチームが無敗記録を更新しながら差を縮めてシーズン王者。そしてファイナル王者までもあと一歩のところまで迫った。WSWとのガチンコ勝負、勝利の美酒を味わうのは、果たしてアデレードだろうか。

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