日豪サッカー新時代(QLD)第72回「ナデシコ」

日豪サッカー新時代

第72回 ナデシコ
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

地元紙に取り上げられた記事と、海外を共に転戦してきたという日の丸の前でポーズを取る志方英香(本人提供)
地元紙に取り上げられた記事と、海外を共に転戦してきたという日の丸の前でポーズを取る志方英香(本人提供)

当連載では、長らくQLD州のローカル・サッカーに目を配ってきた。多くの日本人選手が、BPL(州2部)のほとんど、幾つかのNPLQ(州1部)のチームにも所属している。日本人選手のプレゼンスの増加は、献身的な日本人選手への高評価が定着した証であり、うれしいことだ。

とはいっても、それはすべて“男子”の話。振り返れば、これまでローカルの女子選手にはあまり触れてこなかった。そろそろ、そこもフォローしていこうと思っていた矢先、見計らったかのような絶妙なタイミングで1通のメールが届いた。

拙稿を読んだ読者や選手が連絡してくることは珍しくない。しかし、今回のような“売り込み”は珍しい。ひと言で言えば「私を取材して!」とのメールの主は、志方英香。QLD州の最高峰NPLQのペニンシュラ・パワーでGKとしてプレーする現役選手。25歳で、学生時代も含めてだが、既に4カ国でのプレー経験がある“国際派”だ。

高校卒業以来、4カ国を渡り歩いた7年間の生き様を支えたのは「ジャパニーズとしてのハングリーさ」とキッパリ。これまでは「英語上達のために、極力、日本人とつるむのは避けてきた」と言い切る彼女には、常に自分をアウェーに置いて自分なりに「日本」を背負って戦ってきたという強い自負心が見て取れた。

大阪の高校を卒業後、米テキサス州のタイラー・ジュニア・カレッジに入学。「毎日、悔しさで泣いていた」という1年目を乗り越え、学業、サッカーでも結果を出して、米短大の名門の主力として全米1位に輝いた。

その後、同州の4年制大学を経て移り住んだカナダ・トロントのクラブ(GSユナイテッド)でも、主力として州1位に輝き、全国大会を経験した。そんな海外での実績にも「アメリカもカナダの時も周りに勝たせてもらった感じ」と屈託ない。

いったん帰国後、サッカーからは離れていたが、思い直して渡豪した。縁あってたどり着いた現所属は、10代の選手が大半の若いチームで、リーグ中位より下と苦戦中。そんな現況にも「(GKの)自分が頑張れば、そのままチームのためになるし、とても楽しんでいます」と、どこまでもポシティブだ。「自分で限界を決めたり、満足してしまったら、そこで“終わり”。サッカー馬鹿で終わりたくないし、これからもチャレンジしながら、いろいろな出会いや経験を積み上げていきたい」とは、本人の言。

外国で鍛えられし、しなやかに強き「ナデシコ」は、豪州の地でも凛と咲く。


【うえまつの独り言】
ブリスベン・ロアの新しいシーズンの滑り出しとなるFFA杯の初戦の対パース・グローリー戦が、8月10日(水)7時半からバリモア・スタジアムで行われる。顔ぶれが大きく変わったチームの今季を占う大事な公式戦初戦を見逃すことなかれ。

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