日豪サッカー新時代(NAT)第76回「地道」

日豪サッカー新時代

第76回 地道
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

代表から戻ったロアのエースFWマクラーレンをシドニーFCのDF陣が激しくマーク(Photo by Nino Lo Guidice)
代表から戻ったロアのエースFWマクラーレンをシドニーFCのDF陣が激しくマーク(Photo by Nino Lo Guidice)

今年のAリーグは違う。昨季までに比べて、グンとレベルが上がった(ように感じる)。全日程のおよそ4分の1が消化されたリーグ戦を、各節数試合をチェックする筆者だが、今季はいわゆる“外れ試合”が少ない印象だ。

その中でも、特筆すべきはシドニーFC。ここまで7戦消化して6勝1分。シーズンに入ってからの無敗記録を7に伸ばした(11月21日現在)。総得点が18点、失点はわずか3という数字が如実に表す1試合平均約2.6点を決める攻撃的サッカーの破壊力は、尋常ではない。昨年の体たらく(まさかのリーグ戦7位)からよくもここまで立て直したものだ。さすがは、グラアム・アーノルド、転んでもただでは起きない。

今年のシドニーFCは、キャプテンのアレックス・ブロスケ、攻撃で存在感を発揮するデービッド・カーニー、守備の要のアレックス・ウィルキンソンといった元代表のベテランが要所を抑え、中盤で光るジョッシュ・ブリランテ、果敢な攻撃参加で魅せるマイケル・ズーロといった現役の代表クラスの選手がうまく絡む。そこに、今季獲得したブラジル人FWボボ、2季目で更なる輝きを見せる元セルビア代表のMFミロシュ・ニンコビッチ、元スロバキア代表のフィリップ・ホロスコらの外国人選手が有機的にフィット。

そんなシドニーFCが、こちらも7戦3勝3分1敗とまずまずの滑り出しで3位につけるブリスベン・ロアと対戦した試合が出色だった。ブリスベンで行われたその試合、ロアはいつものオレンジではなく海老茶色のユニフォームを着用。ピッチ上には、シドニーFCのいつものスカイ・ブルーとの見慣れた2色の“競演”。そう、ラグビー・リーグのあの「NSW州対QLD州」で盛り上がる“ステート・オブ・オリジン”のそれだ。ロアのマーケティング的な意図で州対決のダービーとして煽られた試合は、その思惑通り、かなり激しく見応えのあるものになった。

この試合を観戦した、日頃Aリーグを観ないという2人の知人から、ポジティブな意見が聞こえてきた。

曰く、「とても面白かった。Aリーグは変わった」「テンポが良くて、見応えがあった。こんな試合が毎回観られるなら毎週チェックしたい」。全豪で彼らのような思いを抱く人々を少しずつ増やしていく――それは、地道な努力であると同時に最も有効なサッカーの勢力拡大の方策となる。当コラムも、そんな努力に微力だが力を貸していきたい。


【うえまつの独り言】
Aリーグのエクスパンションの話題が賑やかだ。2チーム加増は規定コース。後はどこのフランチャイズになるかだが、地域性を取るのか、収益性をひたすら重視するのか。とにかく、かつてのチーム消滅の同じ轍を踏まぬよう、浮かれず地に足の付いた参入希望者にライセンスを与えてほしい。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る