日豪サッカー新時代(QLD)第78回「逆輸入」

日豪サッカー新時代

第78回 逆輸入
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

「豪州での経験」を新たな舞台でどう生かせるか。渡邉の挑戦から目が離せない(筆者撮影。写真はNFQヒート在籍時)
「豪州での経験」を新たな舞台でどう生かせるか。渡邉の挑戦から目が離せない(筆者撮影。写真はNFQヒート在籍時)

昨年の年の瀬、日本から1年を締めくくるにふさわしいうれしい知らせが届いた。朗報を届けてくれたのは、当コラムでも既に数回取り上げているDF渡邉志門(前・NFQヒート)。大学サッカーの名門・順天堂大を卒業後、単身武者修行に渡豪してから昨年まで3季に渡って豪州のセミプロ・リーグで戦ってきた彼のことは、既に読者諸兄のよく知るところだろう。昨年末に豪州を離れてから日本で次なる挑戦の舞台を求めトライアル行脚を続けていたが、ついに来季からJ3参戦となるアスルクラロ沼津に入団というビッグ・チャンスを引き寄せてみせたのだ。

この移籍で、久々に豪州から日本への日本人逆輸選手が生まれたことになる。さかのぼれば、かつてJFLからシドニーFCでのプレーを経て、J2岐阜で3季プレーした森安洋文(引退)の例があるが、渡邉には大学卒業後に日本でのプレー経験がない。それゆえに、純粋な「豪州仕込み」の選手の逆輸入という意味では、本邦初となる。念のために付け加えておくが、「逆輸入」の定義は渡豪前に日本でプロ経験のない選手が豪州で経験を積んだ後にJリーガーとして日本に復帰するケースをいう。従って、JリーグからAリーグを経て帰国後Jリーグに返り咲いた小野伸二(WSW→札幌)や田中裕介(WSW→C大阪)などのケースは含まない。

1月12日から新天地となるクラブで本格始動した屈強な体と読みの鋭さで勝負するCBは、自らを「挑戦者」と位置付ける。今年で27歳を迎える自らの置かれた立場も十分に自覚した上で「サッカー選手としては今が1番の売り時。事実上、これが最後のチャンスになるだけに自分でも楽しみな挑戦」と気負いはない。当然ながら、挑戦を前に「日本で学生より上のカテゴリーでのプレー経験が無い僕がどこまで通用するか。挑戦の成果の可否が豪州からの逆輸入選手の評価に直結する。無様なことはできない」と気の緩みは見せない。

はた目には着実に成果を積み上げたように映る豪州挑戦の日々も、あくまでもプロ志望だった本人にしてみれば「ノー・チャンスだった」と自己採点は辛い。それだけに新天地への感謝の念を隠すことはない。「サッカー選手として最後の勝負の場を与えてくれた沼津には感謝しかない。サッカー人生の全てを懸けて臨みたい」と新たな挑戦に懸ける思いを熱くたぎらせている。頑張れ、志門!


【うえまつの独り言】
連載7年目となる年が明けた。このまま推移すれば、今年は4年前よりもガチンコ勝負のシチュエーションで迎える可能性の高い日本での日豪戦を8月31日に控える。引き続き日豪両国のサッカー界の周辺事象というニッチなテーマをしっかり守っていくので、読者諸兄の変わらぬご愛顧のほどを願いたい。

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