日豪サッカー新時代(NAT)第82回「再起」

日豪サッカー新時代

第82回 再起
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ブリスベン・ロア時代のミッチ・ニコルズ。ここから豪州代表にまで駆け上がったのだが……(Photo: BRFC)
ブリスベン・ロア時代のミッチ・ニコルズ。ここから豪州代表にまで駆け上がったのだが……(Photo: BRFC)

Aリーグ終了間もない豪州フットボール界に驚きのニュースが駆け巡った。ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)退団直後の元豪州代表MFミッチ・ニコルズ(28)が、5月13日未明、シドニー郊外のナイト・クラブで薬物所持容疑で現行犯逮捕された。

今季のWSWで攻撃の要を担った彼の急な退団には驚いた。しかし、クラブ側が契約更新しないことは予想の範囲内でもあった。それでもWSWで2季にわたり主力として活躍しサポーターにも愛される存在だったので、急な退団には多くの惜しむ声が上がっていた。

しかし、今回のニュースは寝耳に水。本当に驚いた。聞くところによれば、欧州移籍がまとまりかけていたらしいが、その話もご破算。6月9日に出廷後、刑事罰が下され、FFA(豪州サッカー連盟)からの処分を受ける運び。Aリーグは他のプロ・スポーツに比べて薬物禍が少ないこともあり、どんな処分が下るか予測しにくいが、ある程度の長期出場停止の裁定となるだろう。

若くから才能に恵まれた彼は、アンジ・ポスタコグルー監督に率いられ36戦無敗の大金字塔を打ち立てたブリスベン・ロアの欠かせない主役の1人だった。筆者は、当時から彼を個人的にもよく知っているが、20代初めのその才能に無限の可能性を感じつつも、時折垣間見せる自身のその才能を持て余すかのような“若さ”に一抹の不安を感じていた。一言で言えば、“やんちゃ”だった。

彼のその才能の豊かさは誰もが認めている。クラブの層の厚さに戦力として貢献出来ず不完全燃焼に終わったセレッソ大阪時代を除けば、ロア以降、メルボルン・ビクトリー、パース・グローリー、WSWと移籍先では短期間でチームの中心に収まった。しかし、どこかで“やんちゃ”さが抜け切れずに年を重ねてきたそのキャラクターは、自分のクラブのサポーターには愛されるも、冷静に第三者的に見れば時に眉をひそめられるような行為もあった。古巣のロアのサポーターを挑発的ジェスチャーで煽った事件などはその典型だ。

今回の事件を「若気の至り」で片付ける気は、当人も無いだろう。自らのキャリアを閉ざしかねない結果を招いた今回の軽率な行為をしっかり反省してから、彼には必ず戻ってきてもらいたい。過ちは犯しはしたが、その後の再起への道が閉ざされるようなことがあってはならない。フットボーラーとして、自らの存在意義をピッチ上で証明をしに戻ってきてくれると信じたい。待ってるぞ、ミッチ。


【うえまつの独り言】
6月のサウジアラビア、ブラジル、コンフェデレーションズ杯と転戦するサッカルーズの代表候補30人が発表された。顔ぶれは定まってきたが、それでもポスタコグルー監督の戦力底上げを図る動きはとどまるところを知らない。5月31日に登録23人が決まるのを楽しみに待とう。

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