日豪サッカー新時代(NAT)第83回「出世」

日豪サッカー新時代

第83回 出世
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

今や豪州を代表する選手へと出世したアーロン・ムーイ。サッカルーズの中盤の仕切りは、彼の双肩に掛かってくる(筆者撮影)
今や豪州を代表する選手へと出世したアーロン・ムーイ。サッカルーズの中盤の仕切りは、彼の双肩に掛かってくる(筆者撮影)

サッカルーズがアジア王者としてコンフェデレーションズ杯に臨んでいる。ロシアでの強敵相手のW杯プレ大会の進捗、当稿執筆時点では初戦のドイツ戦での善戦が分かっているだけだ。その後、カメルーン、チリと対戦が続くが、サッカルーズがどのような戦いを見せるかは注意深く見守る必要がある。

というのも、8月31日のW杯アジア最終予選の「日豪戦」の重要性が今までに無いレベルに跳ね上がったからだ。日豪両国共に自力通過のためには勝ちたい、いや勝たねばならぬ状況下で戦われる試合が、あの11年前のカイザースラウテルンでの邂逅(かいこう)以来、最もガチンコの日豪戦となるのは間違い無い。

その試合で日本が最も注意すべき存在となるのが、MFアーロン・ムーイ。同大会の直前、今季ローン移籍でプレーして、クラブ初のプレミア・リーグ昇格に大きく貢献したハダーズフィールド・タウンが所属元のマンチェスター・シティーからのムーイの買い取りで合意したとの報道が流れた。これが決まれば、ムーイは名だたる豪州サッカーのレジェンドたちを抜き去り、豪州で最も高価な選手との称号を得る。5年前には出場機会を求めスコットランドの地を去り、母国の新設クラブのウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)に活躍の場を求めたムーイだが、そこからの成功譚(せいこうたん)は一種の“オーストラリアン・ドリーム”とも言える。

心機一転のWSW在籍中、身近に小野伸二という良いお手本に恵まれたムーイは、ここから小野も認めた才能を一気に開花させる。2シーズンをWSWで過ごしてメルボルン・シティーに移籍。そこで、大車輪の活躍を見せて豪州代表でも替えの利かない主力に成長。その才能が十分に欧州でも通用すると判断され、メルボルン・シティーから姉妹クラブのマンチェスター・シティーに移籍して欧州返り咲きを果たす。そこから、プレミアリーグ昇格を狙うハダーズフィールド・タウンにレンタルに出され、クラブをプレミア・リーグ昇格に導くMVP級の活躍を見せた。そんなムーイには、今や豪ドルで1,670万ドル(約13億4,000万円)の値札が付いている。このまま、両クラブ間の契約がうまくまとまれば、来季はハダーズフィールドに完全移籍してチームを更なる高みに導くことになる。

アーロン・ムーイ、WSW時代のあのシャイな青年が今や世界最高峰のリーグで戦う。栄達を重ねた今でも、どこか飄々(ひょうひょう)とした雰囲気を漂わせるムーイが、日本にとって厄介な存在になるとみて間違いは無い。


【うえまつの独り言】
15RD終了時のNPL・NSWで日本人選手の活躍が目立つ。得点10傑には、11得点で1位タイの梶山知裕(サザーランド)、3位久保木優(シドニー・オリンピック)、6位田代有三(ウーロンゴン)の名が。特筆すべきは梶山。10位と低迷のチームの21得点のうち11点をたたき出すプレーに今後も目が離せない。

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