日豪サッカー新時代(QLD)第84回「若武者」

日豪サッカー新時代

第84回 若武者
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

試合後は悔しさを隠せなかった小野だが、写真には笑顔で応えてくれた(筆者撮影)
試合後は悔しさを隠せなかった小野だが、写真には笑顔で応えてくれた(筆者撮影)

日曜の昼下がり、佳境に入ったQLD州1部・NPLQLDのオリンピックFC対FNQヒート戦に足を運んだ。ご近所クラブで、普段は一サポーターとして観戦するのだが、この日は違った。対戦相手に所属する今季のNPL日本人最年少選手がお目当てだ。

その選手とは、DF小野穣暉(おのしげき)(23)。昨季、グランド・ファイナルまで進出した州北部ケアンズの強豪との契約を、ブリスベン在住のエージェント・三上隣一の導きで、大学卒業前に勝ち取った。昨季まで2季プレーしてチームメイトにもファンにも愛された渡邉志門(わたなべしもん)(現・J3沼津)に続く日本人ビザ・プレーヤーとして期待を集める小野は、今季を迎えるに当たって国士舘大学の卒業式よりも、現地やクラブへの順化を優先させた。元々の実力に加え、そのような積極的なアピールも功を奏して、見事に開幕スタメンを勝利で飾ると、ここまで新しい環境でコンスタントな活躍を見せてきた。

この日の試合は、何とかファイナル圏内を確保せんとアウェーでも積極的に攻めるヒートが先制。一旦は追いつかれるも逆転し、前半はヒート優位で試合が推移するも、後半に一転。追いつかれた挙句、試合終了直前に不可解なジャッジでのPK献上。これが決勝点となり貴重な勝ち点を逃してしまった。そんな惜しい敗戦直後だけに「悔しい」を連発した小野。

「結構、簡単に笛を吹かれて、ファールを取られるのは分かっていたけど……」と後悔しきり。チームメイトの反則を自分のことのように反省する様子からは強い向上心が垣間見えた。

小野のプレーを初めて生で見た印象は、球際で勝負するファイター・タイプ。上半身の盛り上がった筋肉、どっしりとした大腿部、臀部の強靭さで当たり負けしない。少々余談めくが、その筋肉質な体格と甘いマスクは、どこかラグビー日本代表の快速ウィング山田章仁を彷彿とさせる。

前述の渡邉とは、同じ日本人DFとして比較されることも多いだろう。しかし、この若武者はそんなプレッシャーも一顧だにしない。ここ豪州での挑戦で、世界には自分が知るものとは違うフットボールが存在することを身をもって知った。その若さがゆえに、この国での経験の全てを糧に成長の歩みを止めない。「リーグ、ファイナル、カップ戦とまだ全てに可能性が残っている。何とか結果を出したい」と語る、その眼光は鋭く光る――必ず、タイトルを取るとの思いを秘めて。


【うえまつの独り言】
QLD州フットボール界の変革が進む。来季からNPLの下部にQPLが出来て、QPLは昇降格のある州2部という扱いになる。ブリスベン・ロアの母体ライオンズFCやブリスベン北郊の雄ペニンシュラ・パワーなど歴史と実力を兼ね備えたチームが参戦する。しかし、課題も山積している。どう推移するか見守りたい。

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