日豪サッカー新時代(NAT)第86回「真摯」

日豪サッカー新時代

第86回 真摯
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

来季のプレゼンテーションでもまた破顔一笑の梶山を見られるのだろうか(写真提供:Anna Ishiguro)
来季のプレゼンテーションでもまた破顔一笑の梶山を見られるのだろうか(写真提供:Anna Ishiguro)

9月から10月に掛けては、ローカル・フットボール・シーズンの締めの大事な時期。残る公式戦は、各州のトップ・リーグNPLのレギュラー・シーズンの覇者が集う王者決定戦「NPLファイナルズ・シリーズ」、日本の天皇杯に当たるノック・アウト式のオープン・トーナメント「FFAカップ」だけ。前者は9月30日に全豪王者が決定、後者は現時点で準決勝の対戦が決まりつつある。

先日、華やかに催されたNSW州協会のプレゼンテーション・ナイトで脚光を浴びた日本人選手がいる。NPLNSW(州1部/豪2部相当)の得点王に輝いた梶山知裕(24/サザーランド)だ。リーグ戦10位と低迷するクラブで、梶山は13得点。今季通じてのクラブ総得点数29の45%をたたき出す活躍で、なかなか上位に浮上できないチームの中で1人気を吐いた。その結果に対してクラブは最大限の敬意を表して、梶山を今季のMVPに選出。更にチーム得点王と併せ3冠を手中に収めた。惜しむらくは、得点王の大活躍ながら、リーグのベスト・イレブンから漏れてしまったこと。それでも外目には上々に見える今季も、自身が「うまく行かないことばかりだったが、その都度しっかり歯を食いしばって自分に矢印を向けてやり続けられた」と振り返るように決して楽ではなかった。

チームの成績が上がらない中で確実にチャンスを決め、得点王のタイトルに辿り着いた梶山。鋭い切れ味のドリブルもさることながら、彼が得点王のタイトルを獲得した秘訣は別にある。その答えは、クラブの同僚で“鉄人”と称される村山卓也(30)の梶山評に隠されていた。「サッカーに対する姿勢は尊敬に値する。チームがどんな状況でもその姿勢は不変で、常に最善を尽くす。いつも(彼から)勉強させてもらっている」

村山ほどの選手が「尊敬する」というその真摯な姿勢こそが、得点王という最高の結果を引き寄せたのだ。

2季目となる今季、大きな成果を上げたことで、来季の梶山の動向をうかがう動きはにぎやかなものになる。それでも本人曰く、その去就は「全くの白紙」。彼ほどの選手がこのまま終わってしまうのは、NPLNSW、いや豪州サッカー全体の大きな損失。右サイドを駆け上がり思い切りよくシュートを放つあの雄姿が来季も見られるだろうか。彼のように、共に夢を見たくなる選手はそうはいない。ぜひともまた観たい、その真摯な姿を。


【うえまつの独り言】
NPLファイナルズには、NSW州のAPIAライカートの関谷佑(24)、北部NSW州エッジワースの森保圭悟(24)、QLD州のブリスベン・ストライカーズの大森啓生(27)の日本人3人が出場。FFAカップでも小長谷勇太(24)のブラックタウンCが準々決勝で楠神順平(30)のWSWと相まみえた。

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