日豪サッカー新時代(NAT)第87回「去就」

日豪サッカー新時代

第87回 去就
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

最近は、1年前のこのような柔和な表情があまり見られなかったポスタコグルー監督(左、筆者撮影)
最近は、1年前のこのような柔和な表情があまり見られなかったポスタコグルー監督(左、筆者撮影)

「豪州代表監督、辞任?」との記事が、世間一般には降って湧いたようなタイミングで飛び出た。正直、筆者はさほど驚かなかった。最近のアンジ・ポスタコグルー監督にはどこか諦観が見え隠れして、高まる周囲からの批判にもかなり神経質になっていた。だから、このニュースには驚きよりもむしろ「おいおい、このタイミングかよ」という思いが先に立った。

アンジ(親しみを込めてこう呼ぶ)の去就に関する報道が、前日の有力紙のウェブ記事に端を発して当地のスポーツ・メディアを席巻したのは10月11日。豪州がシリアとの激戦を制し、北中米カリブ海予選4位とのプレー・オフ進出を決めた翌日だった。W杯常連国アメリカの敗退など波乱が続出した実力拮抗の北中米カリブ海予選で踏みとどまったホンジュラスという難敵との負けられない試合を1カ月後に控え、「さあ次だ」と準備万端調えていかねばというところに今回の騒ぎ。タイミングは理想的とは言い難く、当然、上記のような反応となる。しかも、この報道後に当の本人は否定も肯定もせず、FFAのデビッド・ギャロップCEOからも明確な否定の言はなかった。かくして、「監督退任」は追認され既成事実となった。

とはいえ、選手たちのアンジへの信頼はとても厚い。4年の長期政権を経て、アンジに引き立てられた選手がほとんどで、外野が思う以上にチームの結束は固い。今回の騒動がこのタイミングで出たことで、チームの結束が逆に深まり、「アンジのためにも負けられない」とモチベーションも高まったろう。そのことで、ホーム&アウェーの死闘を勝ち抜くことができるのであれば、雨降って地固まる、悪い話ではない。

なかなか勝ちきれずアジア最終予選B組の自力通過を逃したサッカルーズ。結果的に、アジア、大陸間と2つのプレー・オフを戦うことを余儀なくされた。しかし、豪州のW杯予選でのプレー・オフ経験値は他国の追随を許さない。かつてオセアニア連盟在籍時は、オセアニア予選を勝ち上がってのプレー・オフが豪州のW杯への最終関門として常に立ちはだかっていた。時には泣き、時には笑ったW杯出場を懸けたプレー・オフ。今回もドラマティックなものになるのは必至。負ければ、W杯を逃すだけでなく、名将に別れを告げねばならない。勝てば続投の可能性はゼロではないし、退任するにしても大きな餞(はなむけ)になる。要は、勝つしかないのである。


【うえまつの独り言】
Aリーグが始まった。昨年の覇者シドニーFCが変わらぬ安定感を見せる中、序盤を盛り上げているのはメルボルン・シティー。監督交代と主力選手の入れ替えが功を奏しての開幕3連勝。今年はこの2チームを中心に展開しそうな気配。まさかの3連敗スタートのブリスベンは光明が見えず厳しい。

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