日豪サッカー新時代(NAT)第92回「咆哮」

第92回 咆哮
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

野沢拓也(左)と田代有三(右)のホット・ラインがウーロンゴンの地で復活した(筆者撮影)
野沢拓也(左)と田代有三(右)のホット・ラインがウーロンゴンの地で復活した(筆者撮影)

シドニー中心部から、車で南下すること1時間半。風光明媚なNSW州第3の都市ウーロンゴン。この街のクラブ、ウーロンゴン・ウルブズが今、熱い。

3月初旬、FFAとAリーグが正式に「2019/20シーズンからの2クラブ新規参入によるAリーグ拡張」を発表。その瞬間に全豪各地のさまざまなクラブによる誘致活動を通した「2枠」の争奪戦の火蓋が切って落とされた。

その誘致レースの最右翼の1つと目されるのが、地元で「ウルヴズ」と呼ばれ愛されてきたウーロンゴン・ウルヴズだ。ウルヴズには、クラブCEOのクリス・パパコスマスをして「明日、Aリーグに入れと言われればすぐにでも参加できる」と言わしめるように既存のインフラが充実している。

さすがにCEOの豪語は言葉半分で理解するにしても、確かにNSW州のイラワラ地域の雄として、その存在感を発揮してきただけのことはある。すぐ横に太平洋の大海原を抱く全豪でも有数のロケーションを誇るWINスタジアム。地域に根付いたジュニア・育成のシステム、毎回ホーム・ゲームに足を運ぶ熱心なファン・ベース。更なる強みは、シドニーからメルボルンまでの「Aリーグ空白地域」を埋めるにふさわしい地理的要件。経営規模の拡大や更なるスポンサー獲得などの努力課題がないわけではないが、未だに姿形のない他の誘致活動よりは、かなり先んじているのは間違いない。

そして、何よりも、今季のウルヴズを注目の存在たらしめているのが、2人の日本人選手の存在だ。既に本紙にも度々登場しているウルブズの絶対エースFW田代有三(35)に加え、今季は田代の盟友にして、名門鹿島アントラーズが育んだ至宝の1人でもあるMF野沢拓也(36)が加入。3月10日に開幕したばかりの今季のNPLNSW1(NSW州1部)では、2試合を消化して1勝1分とまずまずのスタートを切ったチームで、共に両試合に先発出場。主力としてチームをしっかりと支える。

ウルブズが、最速でのAリーグ切符をつかみ取るのに必要なのは目に見える「結果」。田代には、エースとして勝利に直結するゴールの量産、昨季の10得点以上の結果が期待されるが、中盤に天才MFが控える今季は、より最前線での働きに集中できるので、おのずとゴール数も積み上がってくるはず。2人の日本人の獅子奮迅(ししふんじん)ならぬ狼奮迅の大活躍で狼軍団は何度、勝利の咆哮(ほうこう)を上げられるだろうか。目が離せない。


【うえまつのひとり言】
ようやく、サッカルーズの新体制がスタートした。既に合宿に入ったチームには、Aリーグで活躍する旬の選手が順当に招集された。果たして、欧州での親善試合2連戦(ノルウェー戦24日、コロンビア戦28日、いずれも豪州時間)で、どんな顔ぶれがどんな戦いぶりを見せるのか楽しみだ。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る