日豪サッカー新時代(NAT)第94回「風雲急」

第94回 風雲急
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

果たして、最速2019/20シーズンから、この伝統のウルヴズのロゴをAリーグで観られるのか(筆者撮影)
果たして、最速2019/20シーズンから、この伝統のウルヴズのロゴをAリーグで観られるのか(筆者撮影)

いやはや複雑怪奇なり。もはや予想がつかない展開となってきたのが、既に号砲が鳴り響いたAリーグの拡張枠争い。全豪に散らばる候補の中で、筆者の一番の推しはウーロンゴン・ウルブズ。もちろん、田代有三と野沢拓也という元Jリーガー両名がプレーするのが大きな理由だが、それだけではない。ウルブズの歴史、そして地理的条件などの要素を鑑みれば、2枠のうちの1つを取るにふさわしいクラブだと思う。

現実的に見て、2つしかない枠の1つが最も人口の多いシドニー都市圏ないしは、その南のウーロンゴンを中心としたイラワラ地域に与えられるのは理に適っている。ウルブズの当面のライバルは、まだ実態がほとんどないものの中華系巨大資本の財政的支援を受けるシドニー南郊をフランチャイズに擬す「サザン・エクスパンション」。彼らは、イラワラ地域もフランチャイズに含める構想で、ウルブズに攻勢を仕掛けてきた。それに対抗するウルブズは改めて独自の道でのAリーグ入りを宣言。今まさに、不安視される財政面を強くサポートする大口のスポンサー探しに奔走している。

しかし、事態は風雲急を告げる。新たなライバルが、先述の二者択一という状況に風穴を開けた。ペンリスやリバプールなどシドニー南西部をフランチャイズとする「サウス・ウエスト・シドニーFC(SWS)」という誘致運動は、「Aリーグ入り争い」に参戦するや、あっという間にフロント・ランナーに躍り出た。これは最速で2019/20シーズンからの「拡張枠」を狙うのではなく、ここ数年、毎年のようにAリーグ脱退が取り沙汰されるウェリントン・フェニックスを買収しての移転参入を狙う荒業。これまで、幾つかの誘致グループとの交渉が不調に終わったウェリントンだが、報道によればSWSとの交渉は既に大筋で合意とも。果たしてFIAはどう出るか。

もし、これが実現してしまうと、ウルブズにとっては痛い。というのも、参入の大きな売りである地理的優位性を失い、シドニー都市圏と周辺地域に拡張枠が与えられる可能性は相対的に下がるからだ。ダービーという“ドル箱”を三大都市圏で増やしたいFFAは、ブリスベン第2、または、メルボルン第3のクラブを考えるかもしれない。そうさせないためにも、ウルブズの財政面の安定は急務。この記事をお読みの日本企業の方、ウルブズのスポンサーをお考えになってはどうだろうか。決して悪い話ではないはずだ。


【うえまつのひとり言】
オーストラリア代表予備登録メンバーが、参加32カ国の端を切って発表され、更に26人にまで絞られた。4大会連続出場を目指すティム・ケーヒルも選出。イングランドでは、古巣復帰も出番を得られず退団濃厚。キャリアの黄昏時を迎えたレジェンドは、果たして、ロシアで有終の美を飾れるのか。

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