日豪サッカー新時代(NAT)第95回「影響力」

第95回 影響力
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

日本の地上波のプライム・タイムでこれだけの露出がされたことの意味は大きい(筆者撮影)
日本の地上波のプライム・タイムでこれだけの露出がされたことの意味は大きい(筆者撮影)

訳あって、オーストラリアの負けられないデンマーク戦(6月22日)を日本からの中継映像で観た。いわゆる試合前の「煽り」番組に旧知のスポーツ・ジャーナリスト仲間が出演するので、試合開始1時間前から日本の民放某局テレビにチャンネルを合わせた。

「デンマーク対オーストラリア」。注目の対戦でもなければ、誰もが知るスター選手がいるわけでもない。それでもスタジオの雛壇には、ラモス瑠偉や川口能活といったレジェンドに加え、すっかり芸能界有数のフットボール通としての地位を確立した感のある小柳ルミ子の姿もあった。そして何よりも、デンマークでの海外ロケも含め、じっくり作り込んでいる内容に見応えがあった。

特に、オーストラリアの部分は、目を皿のようにして見守ったが、本当によくリサーチをして作り込まれたすばらしい出来だった。10分弱の尺に、かつての「キック&ラッシュ」から「ポゼッション」への移行の背景や国内リーグ事情なども織り込まれ、バランス良く構成されていた。

そこで改めて感じたのは、参加国のフットボールに加え、その人びとやカルチャーを知るという意味で「W杯は世界フットボール文化万博」である事実。現地に行ける熱心なサポーターはいろいろな経験を通し国際交流、国際理解を実地で行えるが、テレビ観戦組はそうはいかない。テレビで何を経験できるかが、テレビ観戦組のW杯感というものに大きく影響する。

だからこそ、今回のマイナー・カードでも手を抜かずにきちんとそのカルチャーを伝えようとするその民放局の姿勢には感心させられた。テレビの威力は、活字の世界で生きる筆者など足元にも及ばない。人知れず、「豪州のフットボール文化」を8年も当連載で発信してきたが、テレビの10分はその8年と同等かそれ以上の影響力を持つ。たまたま、この試合を観戦した視聴者が同試合でサッカルーズを応援して、そのまた何割かがオーストラリアのフットボール事情に興味を持ってくれたらありがたいことだ。

試合はというと、実力上位の欧州の強豪相手に怯まずに攻め続けたが勝ち越しゴールは遠く、1-1のドロー決着。それでも、オーストラリアのフットボールの実力を示すには十分な内容だった。

小柳ルミ子は番組中で「同じアジアだし、オーストラリアを応援したい」と言った。「日豪フットボール新時代」が良い方向に進むのを実感した瞬間だった。


【うえまつのひとり言】
日本がW杯の大舞台で番狂わせを演じた。戦前の予想では勝利は厳しいとされていたが、相手が早々で10人になるという得難いアドバンテージがあったものの、苦しみながらも大迫の決勝ヘッドで強豪コロンビアに2-1と競り勝った。大迫も「半端なかった」が守備で奮闘の昌子源もすばらしかった。

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