日豪サッカー新時代(QLD)第98回「真価」

第98回 真価
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

グランド・ファイナル直後の竹本。今後の彼の動向に注目だ(写真提供:Go Zamurai)
グランド・ファイナル直後の竹本。今後の彼の動向に注目だ(写真提供:Go Zamurai)

豪州のフットボール暦では、9月はトランジットの時期に当たる。今季は、本田圭佑やウサイン・ボルトで何かと話題のAリーグの開幕が異例の日程で少し遅いが、通常ならこれからシーズンを迎えるAリーグとシーズンの大団円を迎えるローカル・リーグが最も交差する時期なのだ。

今回は、そんなQLD州のローカル・リーグから州2部に相当するフットボール・クイーンズランド・プレミア・リーグ(FQPL/豪州3部相当)で活躍する1人の日本人を取り上げたい。

ブリスベンの中心地にほど近い古豪イースタン・サバーブス(通称イースト)でシーズンを終えたばかりの竹本佳(23)。今季は、ブリスベン南郊のローガン・ライトニングスでプレーを開始して、シーズン半ばでイーストに移籍した。チーム内の抗いがたい力学の影響で出場機会に恵まれない時期もあったが、2チームにわたって9ゴールを挙げるなど活躍を見せた。特に移籍したイーストでは、クラブのレギュラー・シーズン2位、ファイナル2位という結果に大きく貢献した。

竹本へのインタビューは、レギュラー・シーズンの上位チームが年間王者を決める「グランド・ファイナル(GF)」の直前に行われた。この時点では「シーズンで2戦、実力の差を見せつけられた相手だけど、何とかして勝ちたい」と強い気持ちを竹本は語ってくれていたが、結果的に北の強豪ペニンシュラ・パワーに「2冠」を許して、イーストの「古豪復活」のシーズンは終わった。その奮戦の“対価”として、イーストは、来年度のNPLQLD(州1部/豪州2部相当)への昇格が決まっている。

中学時の全国レベルでの活躍で、福岡から請われて東京の関東第一高校に進学。激戦区で一定の成績を上げてから進学した城西国際大では、予期せぬ挫折も経験した。その煽(あお)りで一度サッカーを止めることすら考えたが、卒業直前に高校の同級生の豪州での活躍を知り刺激を受け、一念発起して来豪を決意した。

それから2年が過ぎ、今季はタイトルまであと一歩というところまで辿り着いた。自ら「アジリティーや俊敏性が売り」と語る伸び盛りのドリブラーの真価は、この先のキャリアでこそ問われる。豪州に残りステージを1つ上げて戦うのか、他のより良いチャンスを求めて新たな挑戦のためにこの国を離れるのか。いずれの道を進むにしても、この2年の「海外経験」は若き侍を更なる進化へと導くに違いない。


【うえまつのひとり言】
ボルト劇場がまだ続く。本田圭佑で関心が集まっている今、ボルトと契約して「何だAリーグって色物かよ……」と思う人がたくさん出れば、目先の広告収入やメディア露出より、長期的にはその痛手の方がよほど大きいはずなのだが。僕が頑迷なのか、世の中がミーハーなのか、それとも、その両方なのだろうか。

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