日豪サッカー新時代(NAT)第98回「瀬戸際」

第98回 瀬戸際
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

渦中のFFA現執行部。スティーブン・ローイ会長(左)、デービッド・ギャロップCEO(右)(筆者撮影)
渦中のFFA現執行部。スティーブン・ローイ会長(左)、デービッド・ギャロップCEO(右)(筆者撮影)

豪州代表「サッカルーズ」が来年のアジア・カップに出られないかもしれない、と聞いて、一体どれだけの人がその意味することを理解できるだろうか。

本田圭佑のメルボルン・ビクトリー加入で、にわかに注目を集めるAリーグだが、実は今、大きな問題の渦中にある。というのも、国際サッカー連盟(FIFA)の下で豪州サッカー界を一元的に統治する豪州サッカー連盟(FFA)と、Aリーグのクラブ・オーナーや、それ以外の有力ローカル・リーグの対立が先鋭化し行きつくところまで行ってしまったのだ。

事の経緯を無理を承知で、かいつまんで書こう。かねてより、豪州サッカーの最上級意思決定機関であるFFA評議会での投票権の割り振りが非民主的で、独立したAリーグ運営の妨げとなっているという意見がAリーグ・クラブのオーナーたちから上がっていた。確かに、各州の協会は1票ずつ投票権があるのに、Aリーグ・クラブは10クラブの代表者に1票しか投票権が与えられていない。クラブ・オーナー側は、FFA内での発言力を向上させてもう少し独立した組織としてのリーグ運営を求めていて、現況はフェアではないという主張。それに対して、頑なにFFAは現状維持を主張してきた。

そのFFAの強硬姿勢が、最終的にFIFAの介入を招いた。FIFAが組織したワーキング・グループ(CRWG)による調査報告は、現状の問題を認識してFFAに是正勧告するレポートを上げた。それにFFAは反発。それらの要望の受け入れを、10月2日に迫っている緊急招集の総会で否決すれば、FIFAはFFAに対して制裁を科すことになる。その最悪のケースが国際大会からの締め出し。下手すれば、来年行われるアジア・カップ2019に豪州が参戦できなくなることもあり得るのだ。

長く、豪州フットボールの中興の祖であるフランク・ローイ前会長一派が権力を握ってきたFFAに、自浄作用は残されていて、新しい風が吹くのだろうか。それとも、現会長のフランクの息子スティーブンは、11月の任期切れで会長を退くことを既に表明しているものの、“ローイ朝”の後継者として、現CEOのデービッド・ギャロップの昇格などの手段で体制維持を目論むのだろうか。

この問題で、組織としての豪州フットボール界は瀬戸際に立たされている。その結果如何(いか)が、この国のフットボールの未来に大きく影響する緊急総会の議論、投票の推移をしっかりと注視したい。


【うえまつのひとり言】
今年のAリーグを予想するのはかなり難しいのが正直なところ。シドニーFCの絶対有利が薄まった中、本田加入など総合的な補強が順調な印象のメルボルンⅤの存在感は相対的に高まり、本田ら新戦力の活躍次第で昨季以上の成績を上げることも可能か。他には、ロアとアデレードも面白そう。

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