日豪サッカー新時代(NAT)第99回「切望」

第99回 切望
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ボルトに正式オファーと伝える報道が流れるが、条件面でまだ折り合ったわけではないようだ
ボルトに正式オファーと伝える報道が流れるが、条件面でまだ折り合ったわけではないようだ

いよいよ、Aリーグが開幕した。日系メディアが開幕戦で派手にデビューした本田圭佑一色になるの仕方がないこと。そこは、本紙も別稿「本田圭佑ダウン・アンダー戦記」できっちりフォローするので、そちらを読んでもらうとして、ここではもう1つの話題について触れたい。

14年目のシーズンを迎えるAリーグは、「ボルト劇場」の喧騒の陰で実は大きな意味を持つシーズンを迎えている。間もなく、来季から参入予定の新加入2クラブが決まることで、来季は12チームによるリーグ戦となり、しばらく続いた10チームは今年が最後。また、水面下でどんどん話が進んでいるのが、近い将来に導入が見込まれる“チャンピオンシップ”というブランディングで進められる2部リーグ構想。

とまあ、かなりダイナミックな変革の動きが出てきているのは明るい材料なのだが、なかなかこういう内容が周知されていない。それには、Aリーグが一連の「ボルト騒動」で耳目を集めようとのマーケティングに走って、話題先行型になってしまっていることにある。このようなマーケティングを続けると、それこそプロ・フットボール・リーグとしての本質を見誤りかねない。Aリーグ開幕後も実力の足りない選手が、実際にピッチで戦う選手より注目を集めるのはあるべき姿とは到底思えない。

ここまで書いたところで、複数の報道が「既にマリナーズは正式契約オファー済み」と伝え始めた。確かに、先日の急造選抜チームとの練習試合で2得点を決めるなど、状態は上向いている。1点目は、角度のない所から左足を振り抜いての掛け値なしのナイス・ゴールだったが、それ以外のシーンを見てもプロ・レベルに足りないのは明らか。それでも、8,000人近い観衆をほぼ1人の力で集めて、集客力、話題性でのインパクトを見せていた。そんな諸々を総合的に判断した結果が、「ボルト側が望む過剰な額より、20分の1も低い提示での正式契約オファー」だという。

ボルト氏のアスリートとしての偉大な功績には最大限の敬意を払いたい。幼いころからの夢を実らせたいとのピュアな思いも理解できる。しかし、本当にフットボールを愛し、この国のフットボール界を思うならば、自分の今のレベルに合う場所でのプレーを選んで、このオファーを断るべき。それこそ、条件さえこだわらなければ引く手数多だろう。

豪州フットボールのために潔い決断を願いたい。切なる願いだ。


【うえまつのひとり言】
今季のWリーグの開幕直前でうれしいニュースが届いた。なでしこジャパンの世界制覇時の不動のレギュラーFW永里優季が、ブリスベン・ロアに加入。これで、昨季に続いてメルボルンCでプレーする近賀ゆかりと併せて、Wリーグで二輪の凛々しいなでしこがピッチに咲き誇る。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る