日豪フットボール新時代(NAT)第105回「一時代」

第105回 一時代
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

アレックス・ブロスケはシドニーFCのキャプテンとして強豪を支え続けた(写真:Nino Lo Giudice)
アレックス・ブロスケはシドニーFCのキャプテンとして強豪を支え続けた(写真:Nino Lo Giudice)

2018/19年のAリーグのレギュラー・シーズンは、パース・グローリーが14季目での悲願の初優勝を果たし、2位シドニーFC、そして3位メルボルン・ビクトリー(以下、メルボルンV)がほぼ順当に5月からのファイナル・シリーズに勝ち進んだ。最終節までもつれ込んだのは、残りのファイナル進出組アデレード、ウェリントン、メルボルン・シティーの3クラブによる4位から6位までの順位確定だけだ。

そんなリーグ戦の黄昏(たそがれ)時に恒例なのが、各クラブのベテラン選手の引退の知らせ。そんな毎年の恒例も、今年は少し普段と様子が違う。というのも、今年は例年になく、代表とAリーグのいずれでも活躍した功労者の引退が相次いでいる。既にAリーグを離れているが、豪州サッカー界の最大のレジェンドのティム・ケーヒルも今年ユニフォームを脱いだ。そこに多くのAリーガーの引退が重なった。

まず、最初に今季限りでの現役引退を表明したのが、メルボルンVのキャプテンのカール・バレリ(34)。自らのルーツでもあるイタリアで長くプレーした後、豪州に戻ってからはメルボルンV一筋でプレーしたいぶし銀。本田圭佑もその人格を認める実力派も、今年はけがに苦しみ、ついに引退を決断した。

続いては、シドニーFCのキャプテンであるアレックス・ブロスケ(35)。2季にわたってJ1清水でもプレーしたので、日本のファンにもなじみが深い。豪州復帰後は、シドニーFCの中心選手として活躍を続け、昨年までの2季連続のシーズン優勝や、17/18シーズンの王座獲得などにも大きく貢献した。第26節の最後のホーム・ゲームでは、サポーターは「クラブ史上最も偉大な選手」と大書したバナーを掲げ、その引退を惜しんだ。

更に、惜しまれながらピッチを去るのが、こちらもキャプテンを長く務めたブリスベン・ロアのマット・マッカイ(36)。その真っすぐな人間性と小さな体で献身的にピッチを駆け回るプレー・スタイルのみならず、今や希少種となった裾をズボンの中に入れるそのユニフォームの着こなしでも知られ、ブリスベンのファンのみならず多くの人びとから愛された。

そんな彼らの引退で、豪州フットボールの“黄金世代”の直接的な薫陶(くんとう)を受けた選手のそのほとんどが現役を去った。3人合わせて代表キャップ132を数える各クラブのレジェンドの引退は、Aリーグの一時代の終わりを感じさせるのである。


【うえまつのひとり言】
J1名古屋の絶対的守護神として大活躍のGKミッチェル・ランゲラク。今回の日本滞在中にインタビューを申し込んだが、直前の試合で負傷退場した関係で、アポイントが実現しなかった。今やJ屈指のGKとも言われる彼とのワン・オン・ワン。ぜひ次回は実現させたいものだ。

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