日豪フットボール新時代(NAT)第107回「薄氷」

第107回 薄氷
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

今や世界を代表する女子フットボーラーのサム・カーは、人気・実力ともにマチルダスでナンバー・ワン。地元紙の女子W杯特集でも大きく取り上げられた(筆者撮影)
今や世界を代表する女子フットボーラーのサム・カーは、人気・実力ともにマチルダスでナンバー・ワン。地元紙の女子W杯特集でも大きく取り上げられた(筆者撮影)

女子W杯が盛り上がっている。少し遅れて、コパ・アメリカも始まった。やっぱり、大きな大会はウキウキする。日頃見られない国々のフットボールを、まさにショーケース的に見られるからだ。今回のコパには日本とカタールが招待国として出場しているが、次の大会には豪州が招待されるとのニュースが飛び込んできたのもうれしい。

さて、女子W杯である。ちょうど、マチルダス(豪州女子代表)がジャマイカに勝利して、決勝トーナメント進出を決めたのを見届けたところだ。そのマチルダスだが、今大会に臨むに当たって必ずしも万全の態勢だったとは言えない。大会5カ月前にアレン・スタジッチ監督の突然の解任劇がチームを襲った。多くの人びとが首を傾げるFFAの決定は、“濡れ衣”とも言うべき、かなり政治的なものだったとされる。ただ、この件に関しては虚々実々が飛び交うだけに、FFAが先日正式に決めた調査の結果を待ちたい。

ただでさえ、プレッシャーの掛かるそんな状況下で後任としてチームを率いることになったのが、サッカルーズ(豪州代表)のアシスタント・コーチを務めてきたアンテ・ミリチッチ。新体制でW杯に臨んだマチルダスは、大会直前に欧州の強豪オランダに完敗するなど不安が拭えないまま大会に突入。すると、その不安がいきなり現実のものとなった。大会初戦で、格下のイタリアにまさかの敗戦を喫したのだ。

それでも、いきなり後がなくなったグループ最大の難敵ブラジル戦で、マチルダスは底力を見せた。前半で2点を先制される苦しい展開も、前半終了間際に1点を返すと、その勢いで後半13分に同点弾。その8分後には相手オウン・ゴールで逆転に成功。わずか20分で試合をひっくり返す爆発力で勝負を決めた。最終戦は、グループで最も力が劣るジャマイカ。裏のブラジル対イタリア戦の推移も気にしながらの戦いは、世界有数のFWサム・カーの圧巻の4得点でジャマイカを一蹴した。

結果、最終的にイタリア、豪州、ブラジルの3カ国が勝ち点6で並んだが、豪州はブラジルを総得点数でわずかにリードと薄氷を踏んで、イタリアに次ぐ2位通過を決めた。次戦は、グループAを2位で勝ち上がってきたノルウェー。8月号では、尻上がりに調子を上げたマチルダスの快進撃を伝えられるよう願いたい。


【うえまつのひとり言】
6月号でQLD版が休刊し、同タイトルでの連載が1つなくなった。足掛けほぼ9年。全国版とは異なる内容を毎月掲載してきたので、その連載がなくなることは寂しい。これからは地域にこだわらず読者諸兄が望むネタを、月1回厳選してお届けしていきたいと思うので、これからもお付き合いのほどを。

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