第32回 QLD 頂点のその先

日豪サッカー新時代


 

日豪サッカー新時代

 

 

第32回 頂点のその先

 

 

文・植松久隆

 

 2012/13シーズンのAリーグが佳境を迎えている。今季から参入した小野伸二のウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(以下W S W)が、締め切り時点(3月15日現在)で首位に立ち、早ければ次節にも参戦初年度Vの偉業を達成する。


優勝目前でも、気を抜くことなくチームの先頭に立つ小野伸二(筆者撮影)

シーズン当初、熱心なWSWサポーターもクラブのフロントも、はたまた選手個人にしても、“初年度V”というこれほどの成果を予期していただろうか。快進撃の当初はフロックと見られたWSWが、Aリーグではほかのどのチームも成し得ていない破竹の9連勝を達成、誰もが予想し得なかったシーズン優勝に限りなく近づいている—それは紛れもないリアリティーだ。

Aリーグは、シーズン優勝と上位6チームで争うファイナル王者と2つのタイトルを争う。現行の方式では、6位でシーズンを終えたチームでも、ファイナル・シリーズで3連勝すればファイナル王者に輝くチャンスが残る。実際、このような一発勝負の方式を批判する人も多い。しかし、一般的には「ファイナル王者=年間王者」という認識は強く、クラブも、シーズン優勝よりもファイナル制覇に重きを置く傾向が少なからず見られる。

しかし小野は、おそらく誰よりもシーズン優勝に重きを置いているはずだ。それには、当然ながら訳がある。その訳とは、己のサッカー選手としての存在証明の場を得るためにほかならない。昨年、清水エスパルスでまさかの不遇をかこったスーパー・スターが、南半球の新天地で自らの存在価値を存分に発揮できるクラブに出会い、完全復活を果たした。そして、自らをチームの要に据えるクラブをACLという夢舞台に導き、日本に凱旋帰国することで祖国のファンやサッカー関連者に己の価値を改めて知らしめる。

当の小野本人も、シーズン当初は、そこまでリアルに思い描いていなかったであろう劇的なシナリオが今、現実のものになろうとしている。初年度Vに沸きかえる周囲の喧騒をよそに、小野は、Aリーグの頂点のその先、アジアの舞台を静かに見据えているのだ。

WSWの紡ぎ出す物語の第1幕は、ハッピー・エンドで終わった。そして、来季、ACL参戦を含む内容の濃い第2幕が演じられるわけだが、当然ながら、その主役も小野伸二でなければならない。もう1年、主役を張る覚悟が整った時、小野は“頂点のその先”をしっかりと見据えて、確信をもって契約書にサインをするのであろう。

 


 

【うえまつの独り言】

サッカルーズにとっては落とせない大事な試合。W杯最終予選のホームでのオマーン戦が26日に行われる。その大事な試合に臨む24人のサッカルーズが発表されたが、良くも悪くもオジエックらしい人選。まぁ世代交代の針は、少しは動いたことは否定しない。

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