第32回 NAT 熱意

 

第32回 熱意

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ほぼ書き終えた原稿を推敲していた朝、吉報が飛び込んできた。

その吉報は、待ちに待った小野伸二の残留決定。何か事前情報があったわけでもないのに、聞かれる度に「絶対残留。シドニー・ダービーの前後に発表」なんて、訳知り顔で吹聴してきた。本人に何度か話を聞いている身としては、ワンダラーズでのプレー、ひいてはシドニーでの生活を心底エンジョイしているのが、端からでも強く感じられていたし、クラブにしてみれば、引っ張って、引っ張って、優勝の決まるタイミングでドカーンと打ち上げ、世間の耳目を集めたいという意図があったはずだから。

何はともあれ、まずはひと安心と言うところで、元々の本題に移ろう。


(写真=Richard Luan)

ワンダラーズがホームでウェリントンを2−1で破った3月10日のパラマッタ・スタジアム。いつもと変わらぬ熱いサポーターの応援が木霊するスタジアムの一角に、日本語で書かれた横断幕が掲げられた。人目を惹く横断幕は、燃えるような真紅のバックグラウンドに日本が誇る霊峰富士が描かれ、「しずおかが生んだ日本の至宝 小野伸二」と大書された非常に手の込んだもの。

この横断幕が掲げられるまでのドラマを語るには、残りの字数ではあまりに心許ない。無理やりにまとめるならば「さまざまな人の手を経てスタジアムに掲げられた横断幕には、さまざまな人の熱い思いが込められている」ということ。踊るような達筆は小野個人に非常に縁の深い人物の直筆で、日本の至宝である小野を日本が世界に誇る富士に投影させたデザインも、熱心な小野伸二ファンの方の思いが込められている。

小野伸二を思うファンの温かい気持ちは、確かに海を越えて、パラマッタのスタジアムに届いた。そして、もちろん、小野伸二本人にも。

「とても勇気づけられるし、僕もそういうもの(ファンの思い)を背負って、日本人の素晴らしさ、日本人のすごさを豪州に伝えていきたい」。

小野伸二は、ファンの熱意、そして「日本」を背負って戦っている。さらに、彼はもう1年、その責任を背負うという自らの熱意を契約延長という形にしてみせた。

豪州の「日本代表」小野伸二をこれからも見守りたい。


【うえまつの独り言】
サッカルーズ、大事なオマーン戦の前日会見に顔を出した。ロビーで雑談する選手の姿がちらほら。ひと言ことで言えば緊張感が感じられない、良く言えばリラックスしている印象。妙に饒舌なオジェック監督、最悪の結果が出た時の予防線を張っているように聞こえたのは勘繰りすぎ?
 

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